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27 皇太后の生誕宴3
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まるで仙術でも使ったように良く通る少女の声は、肖子偉の体の隅々にまで浸透するようだった。
両腕を広げた凛風から真っ直ぐな眼差しで名を呼ばれた瞬間、恐怖も体裁も一切がどうでも良くなった。
胸にあるのは彼女への純粋な信頼。
一目でも会えた喜び。
彼女が望むなら、もうそれでいいと未来さえ預けた。
ひらりと、押さえのなくなった布が露台下へと舞った。
気付けば、手摺りを乗り越えていた。
「――っ……!」
抱きとめた凛風は大人の男一人の負荷を巧く緩和するため腕と肩の筋肉を連動させ、更には膝と腰も柔らかく使った。金兎雲も心得ているようで、雲の形状を変え背凭れ部分を作って凛風が体勢を崩さないよう助力した。
直後、まるで空にできた大瀑布から落ちてきたかのような多量の水が激しい音を立てて楼閣やその周囲の屋根を打ち、或いは露台から燃える楼閣内に流れ込んでいった。
更には先に火が出た雪露宮内の別の場所へも、その水は意思を持ったように枝分かれし、大量に降り注いだ。
双方で水流は苦もなく炎を嘗め取っていった。
ぎりぎりで主流の直撃は免れたが、凛風と肖子偉の上にもとばっちりのように水が激しく降り注ぎ、二人はあっと言う間に全身濡れ鼠になってしまった。
「ふう……濡れちゃったけど間に合って良かった。ありがとう兎兎」
金兎雲は気にするなとでも言うようにひらりと耳を動かす。
どこかの姫君のように横抱きにされた肖子偉が、恥ずかしそうに俯きながらも申し訳なさそうにした。
「あ、ありがとう雷凛風、それと金兎雲。そなたのその細腕を痛めたりはしていないだろうか……?」
「全然平気です。あなたの方こそお怪我は? 刺客から何もされていませんか?」
その上目遣い可愛いなとか思いつつ顔を覗き込んだ凛風が太い笑みを浮かべれば、それに惹き付けられた肖子偉は、
「そ、そなたらのおかげで大事はない。本当にありがとう」
やっぱり恥じらう乙女かと思うような仕種で柔らかく目を細めた。
所変わって楼閣からやや離れた雪露宮内の庭先では……。
「ダハハハハ! あれを見ろ!」
第一皇子の肖子豪が濡れて顔に張り付いた髪を掻き上げながら、得意げに肩を聳やかした。
不思議な雲の上で濡れそぼった男女が互いに微笑んで見つめ合っている、胸をときめかすラブシーンがそこにはある。
だがしかし、やはりどこまで行ってもあの二人はあの二人だ。
「小風はやっぱ男前だな。マジで子偉が女子に見える。だがああいう子偉も可愛いだろ? 俺の弟は可愛いよな、なあなあ?」
「え、ええそうですね……」
「それに、なあアレ、きっと本人たちは無自覚だよな」
「お、おそらくは……」
皇城内の状況確認のために兵士たちの班分けを済ませ一度は雪露宮から出ていた肖子豪だったが、途中雪露宮の方から煙が上がったのが見え急いで引き返してきたのだ。
自らも兵と共に消火活動に当たっていた彼は、突然の池の怪のせいで配下共々濡れそぼりながらも満足と安堵と、そしてブラコン魂を滲ませていた。
同意を求められた部下は戸惑いも露わに彼と同じ空を見上げている。その場の配下たちの中には人気包子店の人間の凛風の顔を見知っている者もいたが、まさか第二皇子とあのような光景を繰り広げるとは微塵も思っていなかったので完全にポカンとなっていた。
……というか男同士だと思っているので断袖の仲としか見えていなかった。
「と、ところで子豪殿下、今の現象は一体……?」
「ああ、今の水か」
彼は池の中の小さな東屋へと視線を転じた。
そこには二つの人影がある。
遠目だが、背格好から彼にはその片方が山憂炎だとわかっていた。
「あれは仙術だな」
「仙術!?」
十中八九仙人たる彼が関わっている。
ただ、山憂炎の胸倉を掴んで食って掛かっているように見えるもう一人の男はここからでは顔までわからないが、来訪者だろうか。
東屋は東屋で何かいざこざが起きているようだが、肖子豪は我関しない事にした。弟に好かれている山憂炎もたまには痛い目を見ればいいと、私情を挟みまくって内心で舌を出した。
「にしてもあんな大技を使っておいて倒れもしないとは恐れ入る。さすがは仙人サマサマ~ってとこだな」
「仙人……という事は、まさか今のは山太師が?」
「それ以外に何がある?」
「……それもそうですね」
この朝廷に山憂炎以外の仙人道士はいないのだ。
部下たちは溜息をつくようにして驚き感心した。
その気持ちはわかる。
だが、同時に苦い物が胸に去来するのは否定しない。
炎は建物の平屋部分の一部と楼閣最上階の一部を燃やしただけで鎮火していた。
それというのも多量に池の水を被ったおかげだ。
仙術とはこうも常識を超えているのだ。
使い方一つで大変な事態を招くのはわかり切っている。
肖子豪は建物から少し離れると、存外真面目な面持ちで今は白煙を上げ屋根の所々に蓮の花をくっ付けた様を眺めた。蓮は最盛期ほどではないがまだちらほらと咲き残っていたものだ。
あたかも初めからそこに咲いていたかのように存在を主張する薄桃色の大輪。
煤けている部分にさえ目を瞑れば、あれはあれで瀟洒な細工物として見做せる上に見栄えがするのだから不思議なものだった。
「よし、こっちは鎮火した。お前らは皇城内の他の出火場所に手分けして行って状況を見て来い。もし火消しの人手が足りないようなら一緒に消火に当たれ」
いつまでもぼーっと突っ立っている暇はないのだ。
肖子豪は急いで指示を出し、了解して足早に散っていく部下たちの背中を少し見送ってから再び池を見やる。
「……まあ、仙術は時として恐ろしいが、使いどころを誤らなければいいだけの話だ」
東屋では本当に何があったのか、山憂炎の胸倉を掴んでいた男が今度は指を突き付けて怒鳴っているように見える。
「……さてと、行くか」
自分には関係ない関係なーいと頭を振ってちょっとした好奇心を追いやる。
ここで人間というか仙人観察をしているわけにもいかないのだ。
何故なら偶然にも肖子豪は水が降る間際、凛風と弟の他に露台にいた人物を目撃していた。
自分の隊の恰好をしていたが、楼閣に上がれとは命じていない。
しかも人為的に何かをしない限りは火の手など上がらないだろう楼閣からも火が出たのだ。
その人物が何らかの事情を知っているのは間違いない。
そしてその不審人物はというと、驚くべき身体能力で露台から逃れ水の直撃は回避していたようだが、露台を支える柱を器用に伝っている途中荒ぶるような水流に呑み込まれ、そのまま水の手に押されるようにして庭先まで流されたようだった。
植え込みに遮られその後の詳細は見えなくなったが、肖子豪は不審人物が流された辺りを真っ直ぐに目指した。
「……まだだ」
こちらでは、凛風が眼下を見下ろし剣呑な声で呟いた。
肖子偉が怪訝に瞬いたが、彼が自分の視線を追う前に凛風は移動した。
水がどこかに片付けたと思った刺客だったが、その褐色の男は案外近い場所で地面に強かに体を打って呻いていた。加えて常識外れの身体能力のおかげかはたまた運が良いのか、辛そうにはしていたが身を起こした。
すぐさま自分たち見つけて睨み上げてくる。
きっとあの男が全ての火元に関わっていると直感した。
(彼のあの目、殺気は全然消えてない。諦めてないってことか。早い所ぐるぐるふん縛ってやらないと。子豪兄さんには悪いけど私がやるわ)
こちらに向かって来ている肖子豪に任せようかと一瞬考えたが、彼はまだ離れた位置にいるので到着までの間に刺客に逃げられては後悔してもし切れない。
「殿下はひとまずここに居て下さい」
凛風は金兎雲を地上に寄せて肖子偉だけを降ろすと、取って返すようにして男の所へと飛んだ。
「あっ雷凛風! 待つのだ! 危険だ!」
意図を察した彼から身を案じる声が掛かったが、振り返らないまま小さく感謝の苦笑を浮かべるに留めた。額に張りつく濡れた前髪を鬱陶しげに指で避けて、適度な高さから地上に飛び降りる。
軽やかに膝を曲げ難なく着地して刺客の面相を拝めば、ちょうど立ち上がった直後だったその顔にはどこか見覚えがあった。
皇城の東門ですれ違った光景が脳裏を過ぎる。
「あなた、ただの荷運び夫じゃなかったんだ」
「あ? 荷運び夫? ……ああ、あんたはそういやこの前会った美少ね……――むむむ胸が!?」
「胸?」
眉をひそめて自分を見下ろせば、全身が濡れて服が肌に張り付いているせいで体の線がハッキリとわかるようになり、女性らしい体付きが露わになっていた。これでは男装も台無しだ。
「あんた、女だったのか……」
黒蛇はどこか呆けたようになってまるで関係ない事を口に上らせた。
「そうだけど、あからさまに何?」
「え、いや、ここは胸押さえて恥じらうとこじゃねえの?」
「何それ。別に胸が透けて見えてるわけでもないのに、どこに恥じらう必要が?」
今日の服は色物で透けるくらい薄くもない。
本気で凛風が訝り眉を寄せると、相手はまじまじとこちらを見つめ「やっぱ何か強えなー」と何やら面白そうにした。
終いには嘆息と共に「ハー、でも女相手かよ」とやりにくそうに顔を歪める。
(何なのこの人。根本的に合わない気がする)
そんな事よりも逃げられないように縛らなければと気を取り直した。
(うーんやっぱり実力行使? 話し合いで大人しく聞き入れるようには見えないしなあ)
「一つ訊くけど、どうして子偉殿下を狙うの?」
「はあ? どうしてだって? あんたはあの殿下の噂を知らねえのか? 色んな大迷惑なことしてんだろーが。一番許せねえのは、この黒蛇様の女を寝取りやがったことだけどな!!」
沸点が低いのか恨みが深いのか、男はいきなり激した。
(黒蛇……? そっか何だ道理で皇城以前にもどこかで見たなーって思ってたのよね。緑の目は確かにあの夜の覆面男のだわ。いくら覆面してたとは言え、雰囲気とかからどうして荷運びの時に気付けなかったんだろ私ったら)
気付いていれば不審を抱き、もしかしたら今日のこの騒動を防げたかもしれないのだ。自らの不覚を悔しく思いつつ、凛風は手を翳し黒蛇の目元だけが見えるように視界を隠した。
「うん、やっぱり間違いなく黒蛇」
「ハハッ何だよそっちも覚えてたのか。まさかこんな場所で会うとはな。縁があるな」
凛風が「ないよ」と嫌そうにすれば黒蛇は愉快そうな声を立てて笑った。
「子偉殿下の話に戻るけど、あれは全部他の人のやった悪事なの。ワケあって自分がやったことにしていただけで。だから殿下はあなたの恋人を横取りなんてしてないよ」
「ハッんな馬鹿な話があるか!」
「ここにある」
「……」
信じていないのか、黒蛇は睨むように綺麗な緑色の目を細めた。
「ねえ、大人しく牢に入れと言ったら入る?」
「御免だぜ。俺はあの殿下が許せねえっつってるだろ」
「だから、彼は何もしてないってば」
「信じられるか! 仮にそうでも悪い奴らを庇ったってことだろ。反吐が出る!」
それは凛風でも弁解できない肖子偉の愚かしい選択だ。
明確な反論は出来ず、握った拳に力が入った。
「雷凛風!」
その時だ。
肖子偉が遠くから駆けてくる。
(子偉皇子!? ああもう何でこっち来るかなあーーーーっ!)
凛風は苛立ち紛れにこめかみを揉みたいのを我慢して、本来の獲物へと黒蛇が動くと同時に自分も動いて進路を妨害した。
「どけよ。俺は関係ねえ奴は極力害したくないんだよ。しかも女なら尚更だ」
「そんなのはそっちの勝手な主義でしょ。きちんと人の話も聞かずに殿下を狙うなら、私はどうあってもあなたを捕まえる」
「いい度胸だが、無謀な真似はやめとけよ」
「その台詞はお返しする」
対峙する少女と異国の青年は互いを睨み合った。
埒が明かないとでも思ったのか、黒蛇がゆらりと動く。
「ハッそうかよ。怪我しても知らねえぜ!」
台詞に間髪入れず彼は地を蹴った。
前動作を見抜いた凛風も同時に動いた。
黒蛇の武器は短刀二本。
二刀流だ。
(あれなら……)
対する凛風は武器を持たずの徒手空拳。
その点に気付いた肖子偉が一層悲鳴染みた声で制止を叫んだが、凛風は止まらなかった。
少女の急激な肉薄に黒蛇は左右の短剣を交互に交差させるような軌道を描く。
これで相手は斬撃を受けないように一旦退くだろう。その隙に第二皇子との距離を詰めてやろうと思っていた。
しかし、しかしだ。
例え黒蛇に見るからに年下の少女を攻撃することへの微かな躊躇いがあったとしても、雷凛風という人物は遥かに上を行っていた。
「なっ……!?」
少女は回避もせず勢いも殺さず突っ込んできたのだ。
体の柔軟性を生かして短刀の刃の間の絶妙な空間を舞うようにして縫った。
黒蛇が短刀を振り抜いたタイミングの見極めと、細い凛風だからできた芸当だ。
長い三つ編みが短刀の切っ先を掠めてしなる。
驚愕する黒蛇が身体能力を活かして次の動きをするより前に、凛風は刃物を振り切りガラ空きになった彼の懐に入り込んでいた。
にこりともせずに顔を突き合わせると、不意打ちにも似た状況に動揺を浮かべた相手の咽元を鷲摑み、前進の勢いと全体重で以って地面に押し倒す。
大きく瞠目する黒蛇の緑の瞳に、感情の見えない凛風の姿が映り込む。
優位を確信しているくせに、彼女のその真剣な眼差しには相手を見下す色も喜悦さえも一切がなかった。
それは自然淘汰の理の如く、ただただ強者が弱者を駆逐する絶対的な仕組みで全てを成しているかのような、感じた事のない不可思議な感覚を黒蛇に与えた。
体力や身体能力とかそういう部分ではない部分で、自分はどうあってもこの相手に敵うわけがないと刻まれた瞬間でもあった。
「がっ……!」
黒蛇の呻きとも悲鳴ともつかない声が上がり、彼は白目を剥いて昏倒する。
一瞬の攻防だった。
両腕を広げた凛風から真っ直ぐな眼差しで名を呼ばれた瞬間、恐怖も体裁も一切がどうでも良くなった。
胸にあるのは彼女への純粋な信頼。
一目でも会えた喜び。
彼女が望むなら、もうそれでいいと未来さえ預けた。
ひらりと、押さえのなくなった布が露台下へと舞った。
気付けば、手摺りを乗り越えていた。
「――っ……!」
抱きとめた凛風は大人の男一人の負荷を巧く緩和するため腕と肩の筋肉を連動させ、更には膝と腰も柔らかく使った。金兎雲も心得ているようで、雲の形状を変え背凭れ部分を作って凛風が体勢を崩さないよう助力した。
直後、まるで空にできた大瀑布から落ちてきたかのような多量の水が激しい音を立てて楼閣やその周囲の屋根を打ち、或いは露台から燃える楼閣内に流れ込んでいった。
更には先に火が出た雪露宮内の別の場所へも、その水は意思を持ったように枝分かれし、大量に降り注いだ。
双方で水流は苦もなく炎を嘗め取っていった。
ぎりぎりで主流の直撃は免れたが、凛風と肖子偉の上にもとばっちりのように水が激しく降り注ぎ、二人はあっと言う間に全身濡れ鼠になってしまった。
「ふう……濡れちゃったけど間に合って良かった。ありがとう兎兎」
金兎雲は気にするなとでも言うようにひらりと耳を動かす。
どこかの姫君のように横抱きにされた肖子偉が、恥ずかしそうに俯きながらも申し訳なさそうにした。
「あ、ありがとう雷凛風、それと金兎雲。そなたのその細腕を痛めたりはしていないだろうか……?」
「全然平気です。あなたの方こそお怪我は? 刺客から何もされていませんか?」
その上目遣い可愛いなとか思いつつ顔を覗き込んだ凛風が太い笑みを浮かべれば、それに惹き付けられた肖子偉は、
「そ、そなたらのおかげで大事はない。本当にありがとう」
やっぱり恥じらう乙女かと思うような仕種で柔らかく目を細めた。
所変わって楼閣からやや離れた雪露宮内の庭先では……。
「ダハハハハ! あれを見ろ!」
第一皇子の肖子豪が濡れて顔に張り付いた髪を掻き上げながら、得意げに肩を聳やかした。
不思議な雲の上で濡れそぼった男女が互いに微笑んで見つめ合っている、胸をときめかすラブシーンがそこにはある。
だがしかし、やはりどこまで行ってもあの二人はあの二人だ。
「小風はやっぱ男前だな。マジで子偉が女子に見える。だがああいう子偉も可愛いだろ? 俺の弟は可愛いよな、なあなあ?」
「え、ええそうですね……」
「それに、なあアレ、きっと本人たちは無自覚だよな」
「お、おそらくは……」
皇城内の状況確認のために兵士たちの班分けを済ませ一度は雪露宮から出ていた肖子豪だったが、途中雪露宮の方から煙が上がったのが見え急いで引き返してきたのだ。
自らも兵と共に消火活動に当たっていた彼は、突然の池の怪のせいで配下共々濡れそぼりながらも満足と安堵と、そしてブラコン魂を滲ませていた。
同意を求められた部下は戸惑いも露わに彼と同じ空を見上げている。その場の配下たちの中には人気包子店の人間の凛風の顔を見知っている者もいたが、まさか第二皇子とあのような光景を繰り広げるとは微塵も思っていなかったので完全にポカンとなっていた。
……というか男同士だと思っているので断袖の仲としか見えていなかった。
「と、ところで子豪殿下、今の現象は一体……?」
「ああ、今の水か」
彼は池の中の小さな東屋へと視線を転じた。
そこには二つの人影がある。
遠目だが、背格好から彼にはその片方が山憂炎だとわかっていた。
「あれは仙術だな」
「仙術!?」
十中八九仙人たる彼が関わっている。
ただ、山憂炎の胸倉を掴んで食って掛かっているように見えるもう一人の男はここからでは顔までわからないが、来訪者だろうか。
東屋は東屋で何かいざこざが起きているようだが、肖子豪は我関しない事にした。弟に好かれている山憂炎もたまには痛い目を見ればいいと、私情を挟みまくって内心で舌を出した。
「にしてもあんな大技を使っておいて倒れもしないとは恐れ入る。さすがは仙人サマサマ~ってとこだな」
「仙人……という事は、まさか今のは山太師が?」
「それ以外に何がある?」
「……それもそうですね」
この朝廷に山憂炎以外の仙人道士はいないのだ。
部下たちは溜息をつくようにして驚き感心した。
その気持ちはわかる。
だが、同時に苦い物が胸に去来するのは否定しない。
炎は建物の平屋部分の一部と楼閣最上階の一部を燃やしただけで鎮火していた。
それというのも多量に池の水を被ったおかげだ。
仙術とはこうも常識を超えているのだ。
使い方一つで大変な事態を招くのはわかり切っている。
肖子豪は建物から少し離れると、存外真面目な面持ちで今は白煙を上げ屋根の所々に蓮の花をくっ付けた様を眺めた。蓮は最盛期ほどではないがまだちらほらと咲き残っていたものだ。
あたかも初めからそこに咲いていたかのように存在を主張する薄桃色の大輪。
煤けている部分にさえ目を瞑れば、あれはあれで瀟洒な細工物として見做せる上に見栄えがするのだから不思議なものだった。
「よし、こっちは鎮火した。お前らは皇城内の他の出火場所に手分けして行って状況を見て来い。もし火消しの人手が足りないようなら一緒に消火に当たれ」
いつまでもぼーっと突っ立っている暇はないのだ。
肖子豪は急いで指示を出し、了解して足早に散っていく部下たちの背中を少し見送ってから再び池を見やる。
「……まあ、仙術は時として恐ろしいが、使いどころを誤らなければいいだけの話だ」
東屋では本当に何があったのか、山憂炎の胸倉を掴んでいた男が今度は指を突き付けて怒鳴っているように見える。
「……さてと、行くか」
自分には関係ない関係なーいと頭を振ってちょっとした好奇心を追いやる。
ここで人間というか仙人観察をしているわけにもいかないのだ。
何故なら偶然にも肖子豪は水が降る間際、凛風と弟の他に露台にいた人物を目撃していた。
自分の隊の恰好をしていたが、楼閣に上がれとは命じていない。
しかも人為的に何かをしない限りは火の手など上がらないだろう楼閣からも火が出たのだ。
その人物が何らかの事情を知っているのは間違いない。
そしてその不審人物はというと、驚くべき身体能力で露台から逃れ水の直撃は回避していたようだが、露台を支える柱を器用に伝っている途中荒ぶるような水流に呑み込まれ、そのまま水の手に押されるようにして庭先まで流されたようだった。
植え込みに遮られその後の詳細は見えなくなったが、肖子豪は不審人物が流された辺りを真っ直ぐに目指した。
「……まだだ」
こちらでは、凛風が眼下を見下ろし剣呑な声で呟いた。
肖子偉が怪訝に瞬いたが、彼が自分の視線を追う前に凛風は移動した。
水がどこかに片付けたと思った刺客だったが、その褐色の男は案外近い場所で地面に強かに体を打って呻いていた。加えて常識外れの身体能力のおかげかはたまた運が良いのか、辛そうにはしていたが身を起こした。
すぐさま自分たち見つけて睨み上げてくる。
きっとあの男が全ての火元に関わっていると直感した。
(彼のあの目、殺気は全然消えてない。諦めてないってことか。早い所ぐるぐるふん縛ってやらないと。子豪兄さんには悪いけど私がやるわ)
こちらに向かって来ている肖子豪に任せようかと一瞬考えたが、彼はまだ離れた位置にいるので到着までの間に刺客に逃げられては後悔してもし切れない。
「殿下はひとまずここに居て下さい」
凛風は金兎雲を地上に寄せて肖子偉だけを降ろすと、取って返すようにして男の所へと飛んだ。
「あっ雷凛風! 待つのだ! 危険だ!」
意図を察した彼から身を案じる声が掛かったが、振り返らないまま小さく感謝の苦笑を浮かべるに留めた。額に張りつく濡れた前髪を鬱陶しげに指で避けて、適度な高さから地上に飛び降りる。
軽やかに膝を曲げ難なく着地して刺客の面相を拝めば、ちょうど立ち上がった直後だったその顔にはどこか見覚えがあった。
皇城の東門ですれ違った光景が脳裏を過ぎる。
「あなた、ただの荷運び夫じゃなかったんだ」
「あ? 荷運び夫? ……ああ、あんたはそういやこの前会った美少ね……――むむむ胸が!?」
「胸?」
眉をひそめて自分を見下ろせば、全身が濡れて服が肌に張り付いているせいで体の線がハッキリとわかるようになり、女性らしい体付きが露わになっていた。これでは男装も台無しだ。
「あんた、女だったのか……」
黒蛇はどこか呆けたようになってまるで関係ない事を口に上らせた。
「そうだけど、あからさまに何?」
「え、いや、ここは胸押さえて恥じらうとこじゃねえの?」
「何それ。別に胸が透けて見えてるわけでもないのに、どこに恥じらう必要が?」
今日の服は色物で透けるくらい薄くもない。
本気で凛風が訝り眉を寄せると、相手はまじまじとこちらを見つめ「やっぱ何か強えなー」と何やら面白そうにした。
終いには嘆息と共に「ハー、でも女相手かよ」とやりにくそうに顔を歪める。
(何なのこの人。根本的に合わない気がする)
そんな事よりも逃げられないように縛らなければと気を取り直した。
(うーんやっぱり実力行使? 話し合いで大人しく聞き入れるようには見えないしなあ)
「一つ訊くけど、どうして子偉殿下を狙うの?」
「はあ? どうしてだって? あんたはあの殿下の噂を知らねえのか? 色んな大迷惑なことしてんだろーが。一番許せねえのは、この黒蛇様の女を寝取りやがったことだけどな!!」
沸点が低いのか恨みが深いのか、男はいきなり激した。
(黒蛇……? そっか何だ道理で皇城以前にもどこかで見たなーって思ってたのよね。緑の目は確かにあの夜の覆面男のだわ。いくら覆面してたとは言え、雰囲気とかからどうして荷運びの時に気付けなかったんだろ私ったら)
気付いていれば不審を抱き、もしかしたら今日のこの騒動を防げたかもしれないのだ。自らの不覚を悔しく思いつつ、凛風は手を翳し黒蛇の目元だけが見えるように視界を隠した。
「うん、やっぱり間違いなく黒蛇」
「ハハッ何だよそっちも覚えてたのか。まさかこんな場所で会うとはな。縁があるな」
凛風が「ないよ」と嫌そうにすれば黒蛇は愉快そうな声を立てて笑った。
「子偉殿下の話に戻るけど、あれは全部他の人のやった悪事なの。ワケあって自分がやったことにしていただけで。だから殿下はあなたの恋人を横取りなんてしてないよ」
「ハッんな馬鹿な話があるか!」
「ここにある」
「……」
信じていないのか、黒蛇は睨むように綺麗な緑色の目を細めた。
「ねえ、大人しく牢に入れと言ったら入る?」
「御免だぜ。俺はあの殿下が許せねえっつってるだろ」
「だから、彼は何もしてないってば」
「信じられるか! 仮にそうでも悪い奴らを庇ったってことだろ。反吐が出る!」
それは凛風でも弁解できない肖子偉の愚かしい選択だ。
明確な反論は出来ず、握った拳に力が入った。
「雷凛風!」
その時だ。
肖子偉が遠くから駆けてくる。
(子偉皇子!? ああもう何でこっち来るかなあーーーーっ!)
凛風は苛立ち紛れにこめかみを揉みたいのを我慢して、本来の獲物へと黒蛇が動くと同時に自分も動いて進路を妨害した。
「どけよ。俺は関係ねえ奴は極力害したくないんだよ。しかも女なら尚更だ」
「そんなのはそっちの勝手な主義でしょ。きちんと人の話も聞かずに殿下を狙うなら、私はどうあってもあなたを捕まえる」
「いい度胸だが、無謀な真似はやめとけよ」
「その台詞はお返しする」
対峙する少女と異国の青年は互いを睨み合った。
埒が明かないとでも思ったのか、黒蛇がゆらりと動く。
「ハッそうかよ。怪我しても知らねえぜ!」
台詞に間髪入れず彼は地を蹴った。
前動作を見抜いた凛風も同時に動いた。
黒蛇の武器は短刀二本。
二刀流だ。
(あれなら……)
対する凛風は武器を持たずの徒手空拳。
その点に気付いた肖子偉が一層悲鳴染みた声で制止を叫んだが、凛風は止まらなかった。
少女の急激な肉薄に黒蛇は左右の短剣を交互に交差させるような軌道を描く。
これで相手は斬撃を受けないように一旦退くだろう。その隙に第二皇子との距離を詰めてやろうと思っていた。
しかし、しかしだ。
例え黒蛇に見るからに年下の少女を攻撃することへの微かな躊躇いがあったとしても、雷凛風という人物は遥かに上を行っていた。
「なっ……!?」
少女は回避もせず勢いも殺さず突っ込んできたのだ。
体の柔軟性を生かして短刀の刃の間の絶妙な空間を舞うようにして縫った。
黒蛇が短刀を振り抜いたタイミングの見極めと、細い凛風だからできた芸当だ。
長い三つ編みが短刀の切っ先を掠めてしなる。
驚愕する黒蛇が身体能力を活かして次の動きをするより前に、凛風は刃物を振り切りガラ空きになった彼の懐に入り込んでいた。
にこりともせずに顔を突き合わせると、不意打ちにも似た状況に動揺を浮かべた相手の咽元を鷲摑み、前進の勢いと全体重で以って地面に押し倒す。
大きく瞠目する黒蛇の緑の瞳に、感情の見えない凛風の姿が映り込む。
優位を確信しているくせに、彼女のその真剣な眼差しには相手を見下す色も喜悦さえも一切がなかった。
それは自然淘汰の理の如く、ただただ強者が弱者を駆逐する絶対的な仕組みで全てを成しているかのような、感じた事のない不可思議な感覚を黒蛇に与えた。
体力や身体能力とかそういう部分ではない部分で、自分はどうあってもこの相手に敵うわけがないと刻まれた瞬間でもあった。
「がっ……!」
黒蛇の呻きとも悲鳴ともつかない声が上がり、彼は白目を剥いて昏倒する。
一瞬の攻防だった。
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夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。
第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。
最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……
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