別れのあと先

梅川 ノン

文字の大きさ
11 / 22

しおりを挟む
有希は四年の出来事を淡々と話し終えた。敬吾は胸が塞がれた。まとめて聞けば三十分ほどの話だがその中にどれ程の苦悩と悲しみが詰まっているのか……。
 その全てがあの時美咲との交際を勧めた自分に責任があると思った。愛していた。愛していたからこそ身を引いた。この四年間有希を忘れることはできなかった。忘れようと他の男と付き合ったこともあるが、有希への思いが消えることはなかた。いつもどこかで有希の面影を追っていた。
 有希と別れた喪失感は、敬吾の想像以上のものだった。それでも自分を保ってこられたのは、有希は幸せだと思っていたからだ。それなのに……。
「ごめん有希……俺が……俺のせいでそんな思いを……」
「敬吾さんのせいじゃないよ……僕が男として無能だった……そういうことだよ」
「有希は無能なんかじゃないよ」
「そうだよ、種無し……役立たずだよ」
 離婚の原因を知れば有希がそう考えるのも無理はなかったが、それではネガティブな思考に囚われ有希は救われない。いつまでたっても心の傷は癒えないだろう。
 敬吾は有希を救ってやりたかった。それがあの時とった自分の行為の責任だ。たとえあの時は有希を思っての事だったとしてもその結果有希が傷付いたのは事実だからだ。
 有希の傷を癒してやらなければ、自分も救われない。どうやって救う? 抱いて受け身の喜びを与えてやればいいのではないか?
 有希は男に抱かれることを受け入れるだろうか? 拒むだろうか? 肩を抱き寄せても、手を握っても拒まない、大丈夫じゃないか……。
 抱いてひたすらに快感だけを注ぎ込んでやれば男に抱かれる喜びを感じるかもしれない。そうすれば無精子症なんてどうでもよくなる。男同士の関係に最初から子供はないのだから。
 四年前は抱かないことが、有希のためだと思い必死に己の気持ちをセーブした。しかし今は抱いていいだろう。敬吾は自分で自分の背中を押した。

 敬吾は両の手で有希の頬を包み込むようにして額にキスした。そして鼻先から頬に唇の端にも。
 有希に嫌がる素振りはない。そのまま唇を食むようにすると有希が喘ぐように唇を開けた。
 敬吾はたまらず有希の唇をふさぎ舌で歯列をまさぐり裏側や上顎、頬の内側を味わいそのまま深く口腔を犯した。
 重なり合う熱い舌。感じやすい口の中を執拗に愛撫された有希の息も上がり始めている。
「男とは初めてだよな?」
 長いキスの後囁くように言った。
 男とのキスは、以前敬吾と経験している。初めて? それから先のこと……勿論初めてだ。頬を上気させた有希は小さく頷いた。そして恥ずかしさから敬吾の胸に顔を埋めた。
 有希のあまりにも可愛い反応に敬吾の気持ちは高まった。戸惑いながらも任せてくれるだろうと敬吾は感じ取った。
 それにしても三十過ぎて結婚経験もあるこの男の初心さは何なんだ。敬吾は喜びで叫びたい思いだった。
 快感をじっくりと教えてやりたい、と同時に大切に優しく抱いてやらなければとまるで処女を相手にする思いだった。
 いや有希の場合童貞じゃないけど、処女だよなと敬吾は己に突っ込んだ。
「このまま有希が欲しい……ベッドに行っていいか?」
 有希は答えの代わりに敬吾の首に両腕を巻きつけてきた。そして喘ぐように言った。
「いいけど……」
 さっきのキスで足の力が抜けたんだろうと察した敬吾はひょいと有希を抱き上げベッドルームまで運んだ。
 看護師として患者を抱え慣れている敬吾にとって細身の有希を抱き上げることは造作もなかった。身長差も十㎝以上はある。
 ベッドに優しくおろすと有希のシャツとズボンを脱がし下着だけにした。有希は恥ずかし気に横を向いている。そんなところも堪らなく可愛いと思う。
 自分も下着姿になりベッドへ上がり有希を見下ろし微笑みと共におでこに口づけた。敬吾の唇はそのまま有希の頬を愛撫していき有希の唇へ……。
 熱い舌で唇を舐めると有希がびっくとし唇を開けた。そのすきに中へ侵入し深く執拗に犯した。
 有希は唇を吸われ、舌を絡め取られ、吐息さえ奪われる激しいキスに息も絶え絶えだった。溢れる唾液を敬吾がじゅるっと啜りあげた敬吾の手が有希の下着の中に入ってきた。
 敬吾の指は既に立ち上がっていた胸の尖りを愛撫した。有希は思わず出そうになった声を手の甲で抑えた。
「声、我慢しなくていい。角部屋だから心配いらない。聞いているのは俺だけだから聞かせて」
「あっ……んっあっああ……」安心したのか有希がすすり泣くような声を出した。
 その声にさらに激しく欲情した敬吾は、舌で有希の首筋から鎖骨そして胸の尖りを愛撫していく。
 そして下着を通しても兆していることがわかる有希の昂ぶりに下着越し口づけた。
「あっ……あだめ……」
「大丈夫だ。俺にまかせて」
 そう言って敬吾は下着から昂ぶりを出して口に収めた。
 有希の昂ぶりは熱い粘膜に包まれ敬吾の柔らかな舌でねっとりと絡みつかれた。有希は経験したことのない快感に襲われる。
「あっ……ああけ……敬……吾……さん」
 敬吾の舌戯に瞬く間高められた有希は甘い声で訴える。
「んっあっだめ……もう出るから離して……」
 敬吾はそのまま舌で有希を追い詰めた。
「ああーああっでっ出る……」
 有希は敬吾の頭を弄りながら敬吾の口の中で果てた。
 放心状態の有希はぼんやりとして快感の余韻に浸っているようにも見えた。
 敬吾はそんな有希に優しく微笑みおでこへキスした。
「大丈夫か?……気持ち良かった?」
 有希は頷きつつ縋りつくように敬吾の胸に顔を埋めた。余りの快感に恥ずかしくてとても敬吾の顔を見られなかった。
 そんな有希に益々愛しさが募った敬吾は、有希の尻を撫でた。
「ここはどうかな? ……今日は終わりににするか?」
 初めての有希に無理はさせたくない。あくまでも有希の快感を優先したい。
「大丈夫最後までして……ちゃんと最後まで抱いて欲しい」
「そうかじゃあ試してみよう。無理はさせたくないから辛かったら言って」
 そう言いながらベッドサイドの引き出しからローションを出して手に取ると、再び有希に身体を重ねた。
 濡れた指先で有希の蕾に触れるとキュッと口を閉ざした。
「大丈夫だリラックスして痛くないから……」
 そう言いながら耳や首元にキスしながら有希の蕾に指を入れる。1本、2本と……。
 敬吾は時間をかけて解していく。最初は堅かったそこが段々と柔らかくなっていく。
「あっ……んっあーっも……ああーっ」
 有希の甘い声が高まっていく。指も3本に増えていた。そろそろ頃合いか?
「有希ここに俺の入れて大丈夫か?」
 有希は敬吾にしがみつきながら頷いた。敬吾は安心させるように有希の背を撫でてから身体を離した。そして素早くコンドームを装着してから有希を俯せにした。
「この体勢の方が楽だから。なるべく優しくするけど辛かったら言うんだぞ」
 敬吾は有希の後ろからゆっくりと自身を埋め込んでいく。ローションのぬめりはあるものの圧迫感はかなりのものだ。
「有希リラックスしろ。ゆっくり息を吐いて力を抜くんだ……そういいよ……上手だ」
 敬吾のものは有希の中に深く入った。二人はお互いに一体したことを感じた。
「馴染むまでこのまま……有希愛しているよ」
 敬吾は有希の項に口づけながら囁いた。
「ぼ僕も……愛している……大丈夫だから動いて。ちゃんと敬吾さんも気持ち良くなって」
「気持ちいいよ。こんなに気持ちいいのは初めてだ……最高だよ」
 敬吾はゆっくりと抽挿を開始した。興奮が増すごとに次第に早く……。
 敬吾の興奮と共に有希の快感も増してきた。反応して昂った有希のものを敬吾が腰の動きに合わせて扱いていく。
「あっ……あーだめっ……いくから」
「あーいっていいぞ。一緒にいくぞ」
 二人は同時に果てた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の目があなたを遠ざけてしまった

紫野楓
BL
 受験に失敗して「一番バカの一高校」に入学した佐藤二葉。  人と目が合わせられず、元来病弱で体調は気持ちに振り回されがち。自分に後ろめたさを感じていて、人付き合いを避けるために前髪で目を覆って過ごしていた。医者になるのが夢で、熱心に勉強しているせいで周囲から「ガリ勉メデューサ」とからかわれ、いじめられている。  しかし、別クラスの同級生の北見耀士に「勉強を教えてほしい」と懇願される。彼は高校球児で、期末考査の成績次第で部活動停止になるという。  二葉は耀士の甲子園に行きたいという熱い夢を知って……? ______ BOOTHにて同人誌を頒布しています。(下記) https://shinokaede.booth.pm/items/7444815 その後の短編を収録しています。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

処理中です...