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3部
5話 交差する思惑
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両親である国王王妃は、セティの充実した日々に安堵していた。
これで、星の国のことは忘れてくれるだろうとの思いと、セティの高まる評判に満足の思いだった。
セティの高まる評判。そして、王太子ウシルスに同行するセティは、まるで王太子の妃であるようだとの声も聞こえてくる。
両親にとっては、二人は仲の良い兄弟そのものであるが、太子と妃のようにも見えるのだろうか……。その評判に対しては若干の戸惑いもある。
セティはともかく、ウシルスはその声を知っているのだろうか? そもそもウシルスは自分の妃をどう考えているのか? いい加減王太子が独り身でいるのは良くない。
そろそろ何らかのかたちで、本人に質さないといけない――そんな思いでいた。
そしてアブジェ公である。
ウシルスの思いを察して、ウシルスのために動こうとした時、ハーデスからの招待でセティが星の国へと行った。そこで中断していたことを再開させていた。
最近のセティの各地での評判、そして、王宮で並び立つウシルスとセティの姿に、自分が察したことの正しさを確信していた。
ウシルスの思いの障壁は、セティが同母の弟、これに尽きる。
それを取り除くのは、大神妻の意向。大神妻さえ、認めれば全ては収まる。それが、このケトメ王国。
セティがオメガであるのに、王子としての今の立場があるのも、生まれてすぐの大神妻の言葉が大きく影響している。あの時、大神妻の言葉が無かったら、セティの立場はどうなっていたか分からない。
それだけ、このケトメ王国では大神妻の立場は大きい。国王と言えど、その言葉、お告げは重く受け止めるのだ。ある意味、権威としては、王以上のものがある。それがラアの大神殿に仕える神官たちを束ねる大神妻だ。
大神妻は、代々ネケン公家の未婚の姫がなるのである。生まれた時点で決まり、直ぐに神殿に引き取られ、世間とは隔世して育ち、生涯を神殿で過ごす。正に神の妻である。
今の大神妻の弟は、現ネケン公家の当主。そして、現ネケン公の妃はアブジェ公妃の姉だった。ネケン公とアブジェ公は相婿の関係になる。
つまり、アブジェ公は自分の妃を通じて、大神妻の生家ネケン公家とは親戚関係なのだ。その、関係を活かすことにする。
先ずは、妻を通じてネケン公家へと働きかける。そして、母を通じて王妃に働きかける。
母と妻の血脈を存分に活用する。全ては、このアブジェ公家のために。
アブジェ公は、ネケン公に相談があると持ち掛ける。相婿どうしの二人。常から関係は良好で、会う約束は妻を通じなくても簡単なこと。
アブジェ公がネケン公家へ出向くことになる。
「義兄上、今日は時間をとっていただきありがとうございます」
「改まって何事かあったのかね?」
「はい、王太子殿下の件で」
「王太子殿下?」
「はい、お妃の件です」
それは日頃ネケン公も気にかけていた。そろそろ本腰を入れて決めなければと……。
「ほーっ、お妃の……何か具体的な話があるのかな」
「実は……」
そこで、アブジェ公は一呼吸入れる。もったいぶるわけではないが、口にするのは緊張を伴う。
「セティ殿下でございます」
「セティ殿下……」
ネケン公には、王太子の妃問題にセティが結びつかない。それを察して、アブジェ公はずばりと切り込んだ。
「王太子妃にセティ殿下をと」
「セティ殿下を王太子妃!」
ネケン公は驚きの余り、目を見開き、そして瞬きしながらアブジェ公を見つめる。
見つめられたアブジェ公は、まあ驚くだろうなと思いながら、微笑みながら頷く。
「しっ、しかしそのような前例はないだろう」
「はい、だがオメガが王子として認められたのはセティ殿下が初めてです。正嫡の王子がオメガとして生まれたのも初めてではありますが」
「それは確かにそうだが……で、王太子殿下自身がそう考えておられるのか?」
「はい、側近のメニ候と接触しましたが、間違いありません。彼も事態の打開を探っている……そう感じました。簡単に進む話ではないのは確かですから。最近頓に王太子殿下がセティ殿下を同行させるのもその一環としてでしょう」
「なるほど……最近はどこへ行かれるのもご一緒だとは思っていたが……そういうことか」
ネケン公はしばらく沈黙する。余りに意外な話だったので、頭の中を整理したいのだ。黙しながらも、頭の中は目まぐるしく動き回る。
「で、そなたこの話を先ずわたしにしたということは、大神妻のお告げをいただきたいと、そういうことか?」
「その通りです! 大神妻が認める言葉を告げて下されば、それで決まりです。セティ殿下のお生まれになった時も、大神妻の一言が大きかったです。あれで殿下は王子として認められた。このお妃の件もそうなりましょう」
そう、だからネケン公へ話しにきたのだ。事態を打開するにはそれしかない。ゆえにメニ候に接触した時も、彼は喜んだ。そして、頭を下げ協力を求めたのだ。
義弟が必死に言い募るのを、ネケン公は冷静に聞けるようになってきた。頭の中がまとまってきたのだ。
意外な話だが、悪くない。
オメガであることは、セティに限れば問題ない。それは、セティ生誕直後に解決したと言えるだろう。
残るは同母。何故異母は良くて、同母はいけないのか――説明できる者はいないだろう。つまり明確な理由はないはずだ。ならば、大神妻さえ良しとすればよい。
現大神妻である姉に話を通してみようか……ただ、姉といえども一緒に育ったわけではない。神聖な神殿で隔離して生きておられる方。世間一般の兄弟関係とは違うものがある。
「分かった。一度大神妻にお会いしてみよう。そして、この件申し上げて、先ずは大神妻がどう思われるかだが……。少し時間は掛かると思っておいてくれ」
「勿論でございます。義兄上にご尽力いただければ心強い」
アブジェ公とて、ネケン公が弟だからと気楽に大神妻と会えるわけではないと理解している。ただ、他人の自分たちよりははるかに障壁なく会えるのは身内ゆえ。それに期待するのだ。
ネケン公家が王家に次ぐ力を持つのはそれゆえなのだ。神殿の大神妻とのつながりは大きい。
ネケン公への働きかけが半ば上手くいき、安堵したアブジェ公は、次への布石を考える。
これで、星の国のことは忘れてくれるだろうとの思いと、セティの高まる評判に満足の思いだった。
セティの高まる評判。そして、王太子ウシルスに同行するセティは、まるで王太子の妃であるようだとの声も聞こえてくる。
両親にとっては、二人は仲の良い兄弟そのものであるが、太子と妃のようにも見えるのだろうか……。その評判に対しては若干の戸惑いもある。
セティはともかく、ウシルスはその声を知っているのだろうか? そもそもウシルスは自分の妃をどう考えているのか? いい加減王太子が独り身でいるのは良くない。
そろそろ何らかのかたちで、本人に質さないといけない――そんな思いでいた。
そしてアブジェ公である。
ウシルスの思いを察して、ウシルスのために動こうとした時、ハーデスからの招待でセティが星の国へと行った。そこで中断していたことを再開させていた。
最近のセティの各地での評判、そして、王宮で並び立つウシルスとセティの姿に、自分が察したことの正しさを確信していた。
ウシルスの思いの障壁は、セティが同母の弟、これに尽きる。
それを取り除くのは、大神妻の意向。大神妻さえ、認めれば全ては収まる。それが、このケトメ王国。
セティがオメガであるのに、王子としての今の立場があるのも、生まれてすぐの大神妻の言葉が大きく影響している。あの時、大神妻の言葉が無かったら、セティの立場はどうなっていたか分からない。
それだけ、このケトメ王国では大神妻の立場は大きい。国王と言えど、その言葉、お告げは重く受け止めるのだ。ある意味、権威としては、王以上のものがある。それがラアの大神殿に仕える神官たちを束ねる大神妻だ。
大神妻は、代々ネケン公家の未婚の姫がなるのである。生まれた時点で決まり、直ぐに神殿に引き取られ、世間とは隔世して育ち、生涯を神殿で過ごす。正に神の妻である。
今の大神妻の弟は、現ネケン公家の当主。そして、現ネケン公の妃はアブジェ公妃の姉だった。ネケン公とアブジェ公は相婿の関係になる。
つまり、アブジェ公は自分の妃を通じて、大神妻の生家ネケン公家とは親戚関係なのだ。その、関係を活かすことにする。
先ずは、妻を通じてネケン公家へと働きかける。そして、母を通じて王妃に働きかける。
母と妻の血脈を存分に活用する。全ては、このアブジェ公家のために。
アブジェ公は、ネケン公に相談があると持ち掛ける。相婿どうしの二人。常から関係は良好で、会う約束は妻を通じなくても簡単なこと。
アブジェ公がネケン公家へ出向くことになる。
「義兄上、今日は時間をとっていただきありがとうございます」
「改まって何事かあったのかね?」
「はい、王太子殿下の件で」
「王太子殿下?」
「はい、お妃の件です」
それは日頃ネケン公も気にかけていた。そろそろ本腰を入れて決めなければと……。
「ほーっ、お妃の……何か具体的な話があるのかな」
「実は……」
そこで、アブジェ公は一呼吸入れる。もったいぶるわけではないが、口にするのは緊張を伴う。
「セティ殿下でございます」
「セティ殿下……」
ネケン公には、王太子の妃問題にセティが結びつかない。それを察して、アブジェ公はずばりと切り込んだ。
「王太子妃にセティ殿下をと」
「セティ殿下を王太子妃!」
ネケン公は驚きの余り、目を見開き、そして瞬きしながらアブジェ公を見つめる。
見つめられたアブジェ公は、まあ驚くだろうなと思いながら、微笑みながら頷く。
「しっ、しかしそのような前例はないだろう」
「はい、だがオメガが王子として認められたのはセティ殿下が初めてです。正嫡の王子がオメガとして生まれたのも初めてではありますが」
「それは確かにそうだが……で、王太子殿下自身がそう考えておられるのか?」
「はい、側近のメニ候と接触しましたが、間違いありません。彼も事態の打開を探っている……そう感じました。簡単に進む話ではないのは確かですから。最近頓に王太子殿下がセティ殿下を同行させるのもその一環としてでしょう」
「なるほど……最近はどこへ行かれるのもご一緒だとは思っていたが……そういうことか」
ネケン公はしばらく沈黙する。余りに意外な話だったので、頭の中を整理したいのだ。黙しながらも、頭の中は目まぐるしく動き回る。
「で、そなたこの話を先ずわたしにしたということは、大神妻のお告げをいただきたいと、そういうことか?」
「その通りです! 大神妻が認める言葉を告げて下されば、それで決まりです。セティ殿下のお生まれになった時も、大神妻の一言が大きかったです。あれで殿下は王子として認められた。このお妃の件もそうなりましょう」
そう、だからネケン公へ話しにきたのだ。事態を打開するにはそれしかない。ゆえにメニ候に接触した時も、彼は喜んだ。そして、頭を下げ協力を求めたのだ。
義弟が必死に言い募るのを、ネケン公は冷静に聞けるようになってきた。頭の中がまとまってきたのだ。
意外な話だが、悪くない。
オメガであることは、セティに限れば問題ない。それは、セティ生誕直後に解決したと言えるだろう。
残るは同母。何故異母は良くて、同母はいけないのか――説明できる者はいないだろう。つまり明確な理由はないはずだ。ならば、大神妻さえ良しとすればよい。
現大神妻である姉に話を通してみようか……ただ、姉といえども一緒に育ったわけではない。神聖な神殿で隔離して生きておられる方。世間一般の兄弟関係とは違うものがある。
「分かった。一度大神妻にお会いしてみよう。そして、この件申し上げて、先ずは大神妻がどう思われるかだが……。少し時間は掛かると思っておいてくれ」
「勿論でございます。義兄上にご尽力いただければ心強い」
アブジェ公とて、ネケン公が弟だからと気楽に大神妻と会えるわけではないと理解している。ただ、他人の自分たちよりははるかに障壁なく会えるのは身内ゆえ。それに期待するのだ。
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