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14章
アルマ公爵家
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ルシアが静けさの中で考えている頃、アレクシーは相変わらず、姉ルイーズと賑やかなままであった。ルイーズが朗らかな様子は、ルシアを気に入ったために思えたので、思い切って核心へ迫ることにする。
「実は姉上にお願いがあるのですが……」と切り出すと、そのまま公爵家まで連れて行かれた。
「相談事の次は、お願い? 一体何ですの?」
そう訊ねるルイーズの瞳は輝いている。そんなにも、自分からのお願いごとが嬉しいのか? と思った。そうなのだ、単調な毎日に刺激が欲しいルイーズには、アレクシーの願い事は、必ずや刺激を与えてくれると思うのだった。
「実は、ルシアをこちらのアルマ公爵家の養子にしていただけないかと……」
「えっ⁉」
さすがのルイーズも驚きに固まる。思ってもいない申し出だった。
「公爵家の養子って……」
「はい、隠居された先の公爵に、ルシアを養子にしていただければ、ルシアは公爵の弟、姉上にも義弟になります」
「ええ、確かにそうなるわね。でもどうして養子になさりたいの?」
「ルシアを正式に妃にするためです。アルマ公爵家からルシアを、私に、嫁がせていただきたいのです」
「えっ! えっー……」余りの驚きに、ルイーズは叫ぶように発する。それは当然だろうと思いながら、アレクシーは微笑んで姉を見つめる。
しばらくの沈黙の後、ルイーズは漸く気持ちを落ち着かせながら、アレクシーに質した。
「それは、つまりルシア様を王太子妃になさりたいってことね」
「そうです。私はルシアを正式な場に出してやりたいのです。正室腹ではありませんが、国王の子がオメガと言うだけで、あのような奥まった宮で隠れ住むなど哀れでなりません」
「それは確かに私も思うけど……だから、ここにも遊びにいらしていただきたくて招待もしたのだけど……」
「姉上のそのお気持ちは、大変嬉しいのです、しかし、そうした交流も所詮は限定されたもの。もっと公の場に堂々と出してやりたいのです。」
「あなたの気持ちは分かるけど、今までの慣習、しきたりが……」
「私はそれを変えたいのです。ルシアだけでなく、オメガに正しい評価を与えてやりたい、オメガも我々と同じ人間です。」
ルイーズには、弟アレクシーの真摯な思いは伝わってきた。今日一日の高揚とした気分は一気に冷めたが、不快ではなった。元がしっかり物事を考えられる人なのだ。国王の長子、王太子の姉として、ルイーズにはそれなりに発言力があるのは、伊達ではない。だからアレクシーも、ルイーズには頭の上がらないところがあった。
「あなたのその思いはわかったわ、でも簡単にはいかないと思うわよ」
「それは私も分かっています。けれど姉上が賛同し、見方になってくださったら心強いのです」
力になってやりたい気持ちもあった。しかし、これは相当な騒ぎになるのは必定。自分にもそれだけの覚悟がいる。刺激のある出来事の枠をはるかに超えている。乗り掛かるのなら、相当な覚悟がいる。
ルイーズは、無言のまま暫く考えた。深く熟考しているのがアレクシーにも分かるため、アレクシーも静かに待った。姉の結論が、我が意に叶うことを願いながら。
そうして、ようやく一つの結論を得たルイーズは、アレクシーに告げる。その時のルイーズは至極真面目な、固い表情になっていた。
「そうねわかったわ、養子の件を先ずは公爵にお願いします。そこで、もし公爵がだめだと言われたら、申し訳ないけど諦めてちょうだい。そうなると、もう私の力は及ばない。」
ルイーズの夫アルマ公爵は、若いが国王の側近。世知にもたけている。その夫に判断をゆだねようと考えた。どの道、夫が反対したら養子話は進まない。
「義兄上には、私もお願いしましょうか?」
「いいえ、私が一人でお願いします。先ずはその方がいいわ。あなたは連絡を待っていなさい。」
「わかりました。そうですね……それでは姉上よろしくお願いいたします。」
公爵の答えが、どうなるのか? 不安はあるが、ここはひとまず姉に全てを託すことにして、公爵家を辞した。
早くも翌日、ルイーズからアレクシーに呼び出しがかかった。即座にアレクシーは、公爵家へ急いだ。
「まあ、早かったわね」と、出迎えたルイーズの顔は明るかった。その表情でアレクシーは、良い知らせではと直感する。
「早速、義兄上にお話いただけたのですか?」
「ええそうよ、結論を申すわね、承諾よ。お義父様にお願いすることは、これからだけど、主人の結論に否をおっしゃることは多分ないと思うわ」
「そうですか! ああーっ良かった! 姉上ありがとうございます!」
「ふふっ、正直言うとね、あまり期待はしてなかったの。だから私も嬉しいわ。良かったわね、アレクシー。」
ルイーズの夫、アルマ公爵は、中々のやり手であった。ルイーズとの結婚も家柄だけのものではなかった。国王の若き側近として、宮廷の社交界にも顔が利き、世知に長けた人、それがアルマ公爵だった。
彼は昨夜、妻ルイーズから話を聞いた時、先ずは面白い話と思った。これは乗るべき話だと思い、妻ルイーズにはすぐに承諾を告げた。余りに簡単に承諾したため、むしろルイーズが驚いたくらいだ。
アルマ公爵は、ルイーズと結婚した時、これで公爵家は当分安泰と思った。王女が降嫁し、王の義理の息子になったのだから当然だ。しかし、それだけでは、次代は心もとない。やはり子供が出来なければ、次の時代に繋げることができない。
アルマ公爵家にとって、夫妻に子供が出来ないことは不安の種になっていた。勿論、ルイーズは未だ若く諦めた訳ではないが、ルシアを養子にして、王太子妃の実家になることは大変な利になると考えた。
王太子アレクシーが、それまでの慣習を破ってまで望むと言うことは、それだけルシアに対する愛が深い事の証左。溺愛される妃の実家の力も強まるのは必定との考えだ。
無論、実際にルシアを養子にして、王太子に嫁がせるまでには様々な困難があるだろう。まずもって国王王妃の反対は、覚悟せねばなるまい。それを乗り越えて実現させれば、それこそアレクシーの、次代の国王の信頼を勝ち得ることが出来る。それが、アルマ公爵の考えだった。
「実は姉上にお願いがあるのですが……」と切り出すと、そのまま公爵家まで連れて行かれた。
「相談事の次は、お願い? 一体何ですの?」
そう訊ねるルイーズの瞳は輝いている。そんなにも、自分からのお願いごとが嬉しいのか? と思った。そうなのだ、単調な毎日に刺激が欲しいルイーズには、アレクシーの願い事は、必ずや刺激を与えてくれると思うのだった。
「実は、ルシアをこちらのアルマ公爵家の養子にしていただけないかと……」
「えっ⁉」
さすがのルイーズも驚きに固まる。思ってもいない申し出だった。
「公爵家の養子って……」
「はい、隠居された先の公爵に、ルシアを養子にしていただければ、ルシアは公爵の弟、姉上にも義弟になります」
「ええ、確かにそうなるわね。でもどうして養子になさりたいの?」
「ルシアを正式に妃にするためです。アルマ公爵家からルシアを、私に、嫁がせていただきたいのです」
「えっ! えっー……」余りの驚きに、ルイーズは叫ぶように発する。それは当然だろうと思いながら、アレクシーは微笑んで姉を見つめる。
しばらくの沈黙の後、ルイーズは漸く気持ちを落ち着かせながら、アレクシーに質した。
「それは、つまりルシア様を王太子妃になさりたいってことね」
「そうです。私はルシアを正式な場に出してやりたいのです。正室腹ではありませんが、国王の子がオメガと言うだけで、あのような奥まった宮で隠れ住むなど哀れでなりません」
「それは確かに私も思うけど……だから、ここにも遊びにいらしていただきたくて招待もしたのだけど……」
「姉上のそのお気持ちは、大変嬉しいのです、しかし、そうした交流も所詮は限定されたもの。もっと公の場に堂々と出してやりたいのです。」
「あなたの気持ちは分かるけど、今までの慣習、しきたりが……」
「私はそれを変えたいのです。ルシアだけでなく、オメガに正しい評価を与えてやりたい、オメガも我々と同じ人間です。」
ルイーズには、弟アレクシーの真摯な思いは伝わってきた。今日一日の高揚とした気分は一気に冷めたが、不快ではなった。元がしっかり物事を考えられる人なのだ。国王の長子、王太子の姉として、ルイーズにはそれなりに発言力があるのは、伊達ではない。だからアレクシーも、ルイーズには頭の上がらないところがあった。
「あなたのその思いはわかったわ、でも簡単にはいかないと思うわよ」
「それは私も分かっています。けれど姉上が賛同し、見方になってくださったら心強いのです」
力になってやりたい気持ちもあった。しかし、これは相当な騒ぎになるのは必定。自分にもそれだけの覚悟がいる。刺激のある出来事の枠をはるかに超えている。乗り掛かるのなら、相当な覚悟がいる。
ルイーズは、無言のまま暫く考えた。深く熟考しているのがアレクシーにも分かるため、アレクシーも静かに待った。姉の結論が、我が意に叶うことを願いながら。
そうして、ようやく一つの結論を得たルイーズは、アレクシーに告げる。その時のルイーズは至極真面目な、固い表情になっていた。
「そうねわかったわ、養子の件を先ずは公爵にお願いします。そこで、もし公爵がだめだと言われたら、申し訳ないけど諦めてちょうだい。そうなると、もう私の力は及ばない。」
ルイーズの夫アルマ公爵は、若いが国王の側近。世知にもたけている。その夫に判断をゆだねようと考えた。どの道、夫が反対したら養子話は進まない。
「義兄上には、私もお願いしましょうか?」
「いいえ、私が一人でお願いします。先ずはその方がいいわ。あなたは連絡を待っていなさい。」
「わかりました。そうですね……それでは姉上よろしくお願いいたします。」
公爵の答えが、どうなるのか? 不安はあるが、ここはひとまず姉に全てを託すことにして、公爵家を辞した。
早くも翌日、ルイーズからアレクシーに呼び出しがかかった。即座にアレクシーは、公爵家へ急いだ。
「まあ、早かったわね」と、出迎えたルイーズの顔は明るかった。その表情でアレクシーは、良い知らせではと直感する。
「早速、義兄上にお話いただけたのですか?」
「ええそうよ、結論を申すわね、承諾よ。お義父様にお願いすることは、これからだけど、主人の結論に否をおっしゃることは多分ないと思うわ」
「そうですか! ああーっ良かった! 姉上ありがとうございます!」
「ふふっ、正直言うとね、あまり期待はしてなかったの。だから私も嬉しいわ。良かったわね、アレクシー。」
ルイーズの夫、アルマ公爵は、中々のやり手であった。ルイーズとの結婚も家柄だけのものではなかった。国王の若き側近として、宮廷の社交界にも顔が利き、世知に長けた人、それがアルマ公爵だった。
彼は昨夜、妻ルイーズから話を聞いた時、先ずは面白い話と思った。これは乗るべき話だと思い、妻ルイーズにはすぐに承諾を告げた。余りに簡単に承諾したため、むしろルイーズが驚いたくらいだ。
アルマ公爵は、ルイーズと結婚した時、これで公爵家は当分安泰と思った。王女が降嫁し、王の義理の息子になったのだから当然だ。しかし、それだけでは、次代は心もとない。やはり子供が出来なければ、次の時代に繋げることができない。
アルマ公爵家にとって、夫妻に子供が出来ないことは不安の種になっていた。勿論、ルイーズは未だ若く諦めた訳ではないが、ルシアを養子にして、王太子妃の実家になることは大変な利になると考えた。
王太子アレクシーが、それまでの慣習を破ってまで望むと言うことは、それだけルシアに対する愛が深い事の証左。溺愛される妃の実家の力も強まるのは必定との考えだ。
無論、実際にルシアを養子にして、王太子に嫁がせるまでには様々な困難があるだろう。まずもって国王王妃の反対は、覚悟せねばなるまい。それを乗り越えて実現させれば、それこそアレクシーの、次代の国王の信頼を勝ち得ることが出来る。それが、アルマ公爵の考えだった。
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