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磯城は、葛城を強く抱きしめながら、このまま葛城の体が欲しいと思う。それは葛城とて同じだった。
思いの通じ合った二人が、肌を合わせたいと思うのは当然だ。
しかし、今日の葛城はそのまま攻めてはこない。まだ遠慮のようなものが感じられる。
磯城は、抱きしめた腕を解き葛城を見上げる。その美しい瞳は熱を帯び潤んでいる。幾分背伸びして自分から口付ける。
葛城は、磯城からの口付けに驚いたものの、たまらず自分からも応える。最初は食むように優しく、段々と深く味わう。磯城の口腔は蕩けるように甘い。夢中になって味わい尽くす。
そして磯城の胸に手を忍び込ませる。乳首に触れるとそこは既に尖りを帯びていた。つまんでやると「ああっ」と小さな喘ぎと共に磯城の体が震える。
薄く色づいた尖りを口に含み舌で転がすと、「ああーっ」磯城の喘ぎが大きくなり、体を仰け反らす。葛城は、そのままもう一方の尖りは指で愛撫して、磯城の情欲を刺激する。磯城は、益々身を捩らせ「ああっ……ああーっ」と喘ぎながら、自身のものに手をやろうとする。
葛城は、それを許さず自分が握ると、どくどくと脈打ち、蜜を滲ませている。そのまま扱いて、磯城の官能を追い込む。
磯城はたまらず「ああーっだめ……ああーっ」と悶えながら白濁を放った。あっという間だった。
「ふふっ、沢山出しましたね」そう言って、葛城は、磯城の頭を撫でる。
磯城は、己だけあまりにも早く極めたことが恥ずかしく、顔を上げられない。
「そうやって恥ずかしがるのも可愛い。ほんに戦場のあなたとは、別人のようじゃ。どちらが本当のあなたか……いや、どちらも本当なんだろう」
こうなると主導権は完全に葛城のものになる。最初の遠慮したような気配は一転し、果敢に攻めてくる。磯城への態度も、叔父に対するものから、妃のそれへと変化する。
磯城の背を優しく撫でる葛城の腕は、そのまま磯城の双丘まで下がる。弾力のあるその中心に指を触れると、磯城の体に電流のような痺れが走る。
「ここはよいか?」葛城は、磯城の耳元で囁くように尋ねる。
磯城は顔を隠したまま、僅かに頷く。
葛城は、丁子油を磯城の秘奥に塗り、その指は奥に入っていく。その手順は変わらない。磯城もその手順は、体で覚えていた。
葛城の指は、磯城の感じるツボを刺激しながら一本、二本と増えていく。三本が自在に出入りできるようになる。
「もうよいか? 吾を受け入れてくれるか?」
今日の葛城は、磯城の官能を攻めながらも優しい。言葉で責めることも無い。以前の葛城は、磯城を自分の者にするために抱いた。己の欲望が第一だったといえる。
しかし、今日の葛城は違った。むろん己の欲望もあるが、磯城を感じさせたい。磯城の官能を高めてやりたかった。
葛城のその思いは、磯城にも伝わった。以心伝心だろう。磯城は、以前のただ肉の喜びだけでなく、心からの快楽に酔った。心からの陶酔といえた。
磯城は、葛城の体を欲した。「来て、来てください」素直に強請ることができた。
それは葛城にもわかる。無理に言わせたのではない、磯城の素直な哀願に若い体は昂る。
葛城は、既に昂り、先を濡らす自身の剛直を、磯城の色づき濡れた蕾に侵入させる。磯城の蕾は、待ち望んでいたかのように、葛城の滾った牡を難なく受け入れる。
「ああーっ、いい……ああーっ」
磯城は、感極まったような喘ぎを漏らす。葛城の熱が、そこを伝わって全身に巡る。磯城の情欲も、熱く高まる。
「ああっ。熱い……そなたの中は熱く吾を包み込む。余りに心地よく、天上にいるようじゃ」
美しい顔を色づかせた磯城が、何度も頷く。葛城は、注挿を開始する。はじめはゆっくりと、そして磯城の様子を見ながら徐々に激しく……。
磯城は強く抱きつき、葛城の情熱を受け止める。体は燃えるように熱く、情欲はさらに高まっていく。そしてまさに、情欲の、官能の頂に上ろうとした時、葛城が磯城の中に精を放つ。それを知った磯城は、深い喜びの中、己も官能の頂に上り詰めた。
陶酔の余韻は、磯城を甘く包み込む。放心したような葛城に手をやると、葛城は磯城を抱きしめてくれる。なんと温かく心地よいのか。
思いが通じ合ったうえでの行為が、これほどの幸せを与えるものだと、二人は知る。その多幸感に包まれながら、お互いを抱きしめ合う。
葛城は、暫く陶酔の余韻に浸った後、後始末をしようと起き上がる。磯城は葛城が後始末をする時は、いつも自失して知らなかった。まさかいつもそのような事を葛城が?! それを今日初めて知り狼狽する。
「もっ、申し訳ございません……」
「何を慌てておる。そなたはそのままでよい。吾にまかせよ」
「あっ、あの……いつも東宮様が?」
「勿論じゃ、吾のほかに誰がするというのじゃ」
「申し訳ございません、私は淡水とばっかり思うておりました。東宮様にこのような手間を……」
「そなたのこのような姿、誰にも見せられるわけなかろう、勿論淡水にもじゃ」
そう言いながらも、葛城の手は磯城の体を清め、夜着も着せてくれる。余りにも手際よく、磯城はされるがままだった。磯城にはこういう鷹揚としたところもあり、葛城にはそこも好ましいと思う。というか、葛城には磯城のどんな些細なことでも、好ましく映る。幼い頃から、磯城のどんなところも葛城には魅力だった。だからこそ、一心に思い続けてきた。
始末を終え自分も夜着を来た葛城は、臥所に横たわる磯城を優しく包み込むように抱いた。
「東宮様手ずから申し訳ございません」磯城は、再び詫びる。
「受け入れる身の方が、負担が大きい。だから吾がするのは当然じゃ、そなたは何も気にすることはない」
磯城を抱く葛城の腕は優しい。愛しむように磯城の体を撫でる。
「改めて言うが、ここでは葛城と呼んでほしい、だめか?」
そう言う葛城の眼差し、磯城は昔からこの眼差しに弱い。この目で見られると拒めない。磯城は頷く。
「呼んでみて欲しい、葛城と……」
「……葛城様」
葛城は、磯城を抱きしめ頭を撫でる。これ以上の愛しいものはないとでも言うように、その手は温かく優しい。
「長年の思いが漸く叶った。そなたの体だけではなく、心も欲しいと……そう思い続けてきた」
磯城は、葛城の深い思いを心から嬉しく思い受け止める。磯城の葛城への思いも深い。だからだろう、今日の官能は心からの喜びを伴った。
今までの行為で、確かに快楽は与えられた。体も感じた。しかし心の喜びはなく、終わった後は、ただ蹂躙された虚しさだけが残った。
だが、今日は違った。心からの喜びを感じ、深い陶酔に導かれた。葛城を愛しく思い、愛しい人と共に上り詰めた官能の頂。
「私の心は、葛城様あなたのものです」
互いの思いを確認し合った二人は、東宮のそしてその後見としての仕事に精力的に取り組む。三宮の事件後の情勢を立て直すためにも、解決せねばならない懸案事項は山積みだった。
二人は、意欲的に取り組み、次々と解決していった。これには大王も感心し、半ば呆れつつ言う。
「そなたらの仕事が早い故、余は何もすることがないの」
「父上のお手を煩わせることがなきようにすることが、私の務めですから」
「そなたの東宮としての振る舞い、まこと板についてきたの。頼もしい限りじゃ」
「全ては叔父上のおかげです。叔父上の助言はいつも的を得ていて私を助けて下さるのです」
「八宮はようやってくれておる、余も感心しておる。これからも頼むぞ」
「はっ、ありがたいお言葉感じ入ります。私は補佐をしておるだけで、全ては東宮様のお力でございます。これからも誠心誠意お仕えいたす所存でございます」
磯城の心からの返答に、大王そして葛城も満足気に頷く。
感心したのは大王だけではなかった。二人への称賛の声は日ごとに高まる。
気概溢れる若き東宮。そしてその側には常に後見として磯城の姿があった。穏やかではあるが、毅然とした磯城の姿は、葛城の若さへの不安を和らげた。
葛城の若さを問題視する声は、日ごと弱まっていった。むしろ若い東宮への期待は高まっていた。
磯城にも、それらの世評は伝わっていた。心から嬉しいと思った。東宮としての葛城を支えている実感を持てたことは、さらなる自信につながった。
「淡水、叔父上をどこかで見かけなんだか? 姿が見当たらぬのじゃ」
「八宮様でしたら、先程お庭におられるのをお見掛けしましたが」
「庭に? 庭で何をされておった?」
「特に何かされているようではありませんでした。花を見ておられるようでしたが」
花を? 葛城に不安が生じる。以前花を見て泣いていた磯城の姿を思い出す。また、昔を思い出して……募る不安に足早に庭へ行くと、確かに花を見ているような磯城がそこにいた。
「磯城、何をしているのだ?」
焦り気味に声かけると、微笑みを浮かべて磯城が振り返る。磯城の微笑みに幾分安堵するものの、不安は消えない。
「花を眺めていました。きれいに咲いているなと」
「また、昔を思い出していたのか?」
「昔? そいえばよく葛城様には花をいただきましたね。小さい手で摘んだ花を……ふふっ可愛かった」
「戻りたいと、あの頃に帰りたいと思うのか?」
「それはありません。今十分すぎるくらい幸せですから、あれは良き思い出です」
良かった、磯城は今が幸せだと言ってくれた。葛城は、漸く心から安堵できた。
葛城は、今を盛りに咲き誇る花の中でも、特別にきれいで磯城に似合いそうな花を数本摘むと磯城に差し出す。
「きれいな花をあなたに、でも花よりも磯城あなたの方がきれいですよ」
【完】
思いの通じ合った二人が、肌を合わせたいと思うのは当然だ。
しかし、今日の葛城はそのまま攻めてはこない。まだ遠慮のようなものが感じられる。
磯城は、抱きしめた腕を解き葛城を見上げる。その美しい瞳は熱を帯び潤んでいる。幾分背伸びして自分から口付ける。
葛城は、磯城からの口付けに驚いたものの、たまらず自分からも応える。最初は食むように優しく、段々と深く味わう。磯城の口腔は蕩けるように甘い。夢中になって味わい尽くす。
そして磯城の胸に手を忍び込ませる。乳首に触れるとそこは既に尖りを帯びていた。つまんでやると「ああっ」と小さな喘ぎと共に磯城の体が震える。
薄く色づいた尖りを口に含み舌で転がすと、「ああーっ」磯城の喘ぎが大きくなり、体を仰け反らす。葛城は、そのままもう一方の尖りは指で愛撫して、磯城の情欲を刺激する。磯城は、益々身を捩らせ「ああっ……ああーっ」と喘ぎながら、自身のものに手をやろうとする。
葛城は、それを許さず自分が握ると、どくどくと脈打ち、蜜を滲ませている。そのまま扱いて、磯城の官能を追い込む。
磯城はたまらず「ああーっだめ……ああーっ」と悶えながら白濁を放った。あっという間だった。
「ふふっ、沢山出しましたね」そう言って、葛城は、磯城の頭を撫でる。
磯城は、己だけあまりにも早く極めたことが恥ずかしく、顔を上げられない。
「そうやって恥ずかしがるのも可愛い。ほんに戦場のあなたとは、別人のようじゃ。どちらが本当のあなたか……いや、どちらも本当なんだろう」
こうなると主導権は完全に葛城のものになる。最初の遠慮したような気配は一転し、果敢に攻めてくる。磯城への態度も、叔父に対するものから、妃のそれへと変化する。
磯城の背を優しく撫でる葛城の腕は、そのまま磯城の双丘まで下がる。弾力のあるその中心に指を触れると、磯城の体に電流のような痺れが走る。
「ここはよいか?」葛城は、磯城の耳元で囁くように尋ねる。
磯城は顔を隠したまま、僅かに頷く。
葛城は、丁子油を磯城の秘奥に塗り、その指は奥に入っていく。その手順は変わらない。磯城もその手順は、体で覚えていた。
葛城の指は、磯城の感じるツボを刺激しながら一本、二本と増えていく。三本が自在に出入りできるようになる。
「もうよいか? 吾を受け入れてくれるか?」
今日の葛城は、磯城の官能を攻めながらも優しい。言葉で責めることも無い。以前の葛城は、磯城を自分の者にするために抱いた。己の欲望が第一だったといえる。
しかし、今日の葛城は違った。むろん己の欲望もあるが、磯城を感じさせたい。磯城の官能を高めてやりたかった。
葛城のその思いは、磯城にも伝わった。以心伝心だろう。磯城は、以前のただ肉の喜びだけでなく、心からの快楽に酔った。心からの陶酔といえた。
磯城は、葛城の体を欲した。「来て、来てください」素直に強請ることができた。
それは葛城にもわかる。無理に言わせたのではない、磯城の素直な哀願に若い体は昂る。
葛城は、既に昂り、先を濡らす自身の剛直を、磯城の色づき濡れた蕾に侵入させる。磯城の蕾は、待ち望んでいたかのように、葛城の滾った牡を難なく受け入れる。
「ああーっ、いい……ああーっ」
磯城は、感極まったような喘ぎを漏らす。葛城の熱が、そこを伝わって全身に巡る。磯城の情欲も、熱く高まる。
「ああっ。熱い……そなたの中は熱く吾を包み込む。余りに心地よく、天上にいるようじゃ」
美しい顔を色づかせた磯城が、何度も頷く。葛城は、注挿を開始する。はじめはゆっくりと、そして磯城の様子を見ながら徐々に激しく……。
磯城は強く抱きつき、葛城の情熱を受け止める。体は燃えるように熱く、情欲はさらに高まっていく。そしてまさに、情欲の、官能の頂に上ろうとした時、葛城が磯城の中に精を放つ。それを知った磯城は、深い喜びの中、己も官能の頂に上り詰めた。
陶酔の余韻は、磯城を甘く包み込む。放心したような葛城に手をやると、葛城は磯城を抱きしめてくれる。なんと温かく心地よいのか。
思いが通じ合ったうえでの行為が、これほどの幸せを与えるものだと、二人は知る。その多幸感に包まれながら、お互いを抱きしめ合う。
葛城は、暫く陶酔の余韻に浸った後、後始末をしようと起き上がる。磯城は葛城が後始末をする時は、いつも自失して知らなかった。まさかいつもそのような事を葛城が?! それを今日初めて知り狼狽する。
「もっ、申し訳ございません……」
「何を慌てておる。そなたはそのままでよい。吾にまかせよ」
「あっ、あの……いつも東宮様が?」
「勿論じゃ、吾のほかに誰がするというのじゃ」
「申し訳ございません、私は淡水とばっかり思うておりました。東宮様にこのような手間を……」
「そなたのこのような姿、誰にも見せられるわけなかろう、勿論淡水にもじゃ」
そう言いながらも、葛城の手は磯城の体を清め、夜着も着せてくれる。余りにも手際よく、磯城はされるがままだった。磯城にはこういう鷹揚としたところもあり、葛城にはそこも好ましいと思う。というか、葛城には磯城のどんな些細なことでも、好ましく映る。幼い頃から、磯城のどんなところも葛城には魅力だった。だからこそ、一心に思い続けてきた。
始末を終え自分も夜着を来た葛城は、臥所に横たわる磯城を優しく包み込むように抱いた。
「東宮様手ずから申し訳ございません」磯城は、再び詫びる。
「受け入れる身の方が、負担が大きい。だから吾がするのは当然じゃ、そなたは何も気にすることはない」
磯城を抱く葛城の腕は優しい。愛しむように磯城の体を撫でる。
「改めて言うが、ここでは葛城と呼んでほしい、だめか?」
そう言う葛城の眼差し、磯城は昔からこの眼差しに弱い。この目で見られると拒めない。磯城は頷く。
「呼んでみて欲しい、葛城と……」
「……葛城様」
葛城は、磯城を抱きしめ頭を撫でる。これ以上の愛しいものはないとでも言うように、その手は温かく優しい。
「長年の思いが漸く叶った。そなたの体だけではなく、心も欲しいと……そう思い続けてきた」
磯城は、葛城の深い思いを心から嬉しく思い受け止める。磯城の葛城への思いも深い。だからだろう、今日の官能は心からの喜びを伴った。
今までの行為で、確かに快楽は与えられた。体も感じた。しかし心の喜びはなく、終わった後は、ただ蹂躙された虚しさだけが残った。
だが、今日は違った。心からの喜びを感じ、深い陶酔に導かれた。葛城を愛しく思い、愛しい人と共に上り詰めた官能の頂。
「私の心は、葛城様あなたのものです」
互いの思いを確認し合った二人は、東宮のそしてその後見としての仕事に精力的に取り組む。三宮の事件後の情勢を立て直すためにも、解決せねばならない懸案事項は山積みだった。
二人は、意欲的に取り組み、次々と解決していった。これには大王も感心し、半ば呆れつつ言う。
「そなたらの仕事が早い故、余は何もすることがないの」
「父上のお手を煩わせることがなきようにすることが、私の務めですから」
「そなたの東宮としての振る舞い、まこと板についてきたの。頼もしい限りじゃ」
「全ては叔父上のおかげです。叔父上の助言はいつも的を得ていて私を助けて下さるのです」
「八宮はようやってくれておる、余も感心しておる。これからも頼むぞ」
「はっ、ありがたいお言葉感じ入ります。私は補佐をしておるだけで、全ては東宮様のお力でございます。これからも誠心誠意お仕えいたす所存でございます」
磯城の心からの返答に、大王そして葛城も満足気に頷く。
感心したのは大王だけではなかった。二人への称賛の声は日ごとに高まる。
気概溢れる若き東宮。そしてその側には常に後見として磯城の姿があった。穏やかではあるが、毅然とした磯城の姿は、葛城の若さへの不安を和らげた。
葛城の若さを問題視する声は、日ごと弱まっていった。むしろ若い東宮への期待は高まっていた。
磯城にも、それらの世評は伝わっていた。心から嬉しいと思った。東宮としての葛城を支えている実感を持てたことは、さらなる自信につながった。
「淡水、叔父上をどこかで見かけなんだか? 姿が見当たらぬのじゃ」
「八宮様でしたら、先程お庭におられるのをお見掛けしましたが」
「庭に? 庭で何をされておった?」
「特に何かされているようではありませんでした。花を見ておられるようでしたが」
花を? 葛城に不安が生じる。以前花を見て泣いていた磯城の姿を思い出す。また、昔を思い出して……募る不安に足早に庭へ行くと、確かに花を見ているような磯城がそこにいた。
「磯城、何をしているのだ?」
焦り気味に声かけると、微笑みを浮かべて磯城が振り返る。磯城の微笑みに幾分安堵するものの、不安は消えない。
「花を眺めていました。きれいに咲いているなと」
「また、昔を思い出していたのか?」
「昔? そいえばよく葛城様には花をいただきましたね。小さい手で摘んだ花を……ふふっ可愛かった」
「戻りたいと、あの頃に帰りたいと思うのか?」
「それはありません。今十分すぎるくらい幸せですから、あれは良き思い出です」
良かった、磯城は今が幸せだと言ってくれた。葛城は、漸く心から安堵できた。
葛城は、今を盛りに咲き誇る花の中でも、特別にきれいで磯城に似合いそうな花を数本摘むと磯城に差し出す。
「きれいな花をあなたに、でも花よりも磯城あなたの方がきれいですよ」
【完】
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