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我が弟よ、兄は元気だ。
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面接でいつも困るのは、
「特技・趣味を教えてください」
という質問だ。俺は、いつも自分のことを地味で冴えない奴だと思っている。
特技なんて人に威張れるようなものは、はっきり答えられないし趣味も人に言えるようなものはない。
校庭から聞こえてくる部活に励む友達を見ては、ため息をつき、音楽室から聞こえてくる練習の音を聞いて肩を落とす。
そんな俺にも、自慢できるものが一つ。俺とひとつ違いの弟である朝陽だ。イケメンで、俺より身長もずっと高くて女の子に優しくて。俺はそんな弟が大好きだった。
一つの質問に答えられない俺でも、勉強だけはなんとか味方してくれたようで、全寮制の進学校に入学した。そのせいで、弟とはほとんど会えず、最近は母さんから様子を聞くくらい。
弟に、「全寮制の学校に行くことにした」と、高校受験の時期に伝えた瞬間、弟の顔から色が消え、それから俺に対してよそよそしくなってしまった。
長期休みに帰省しても、なんだか素っ気なくて、俺はそんな様子の弟を見るのがつらかった。そのために、俺から話しかけるのもやめてしまった。情けない。
だから、高校に上がった一年目は、友達もできたけれど精神的にボロボロで、SNSばかり眺めていた。そんな時、目に入ったツイートが、俺の「面接で言えない趣味」の始まりだった。
大きな鏡を購入したのは、高一の夏。同室者には「ほどほどにしとけよ」と半目で言われた。
ミシンを購入して、化粧品を口コミを見て通販を漁る。二次元のキャラクターの画像とにらめっこしてできるコスプレ衣装と、夜な夜な重ねた化粧の練習。荒れていく肌に、スキンケアも学んだ。そう、俺は勉強はできるんだ。
コスプレは勉強となんら変わらない。反復練習だ。己の苦手を潰していくだけ。
できあがったものは、見事に画面の中のかわいらしい女の子。
俺の理想、「ナツミちゃん」だった。
***
三年にあがったばかりだけれど、周りは大学受験に向けて動き始めている。俺も、その流れに乗ってはいるけれど、コスプレをやめることはできなかった。
イベントがあれば飛びつくし、カメラマンさんと予定があれば喜んで出かけに行った。
それでも、成績が下がらないのだから、己の特技はもう「勉強」でもいいのかもしれない。
しかし、イベントもカメラマンさんとの予定も毎週あるわけではないのだ。そんな日は、俺の思う「かわいい女の子」になって、街へ出る。これは俺のストレス発散方法だ。
昔から、ストレスをどう外へ逃がしていいかわからなかったのだけれど、やっと見つけた発散法を予定が合わないくらいで捨てるわけにはいかない。
いつものように、女モノの服を着て、化粧をし、ウィッグを被った。休日のためいつもより少し遅い起床の同室者には「南月(ナツキ)、今日もかわいいな」と言われたが、そんなの当たり前だろう。
俺の趣味を知っているのは、この同室者と寮監さん。そして、SNSのフォロワーだけだ。
休日の早朝には、寮の廊下に誰もいないので、急いで支度をして街へ出る。
寮監さんが、眠そうにして「いつも早いな」と見送ってくれる。男子寮を出てしまえば、もうこっちのものだ。今日は、地元の図書館にでも行って、洋服を見に行こうか。そうしよう。
毎週毎週、土曜日が待ち遠しい。金曜日に気になっていた映画がテレビでやっていたとしても、録画して寝るのだ。
学校から一歩足を踏み出せば、世界ががらりと変わる。
今日の格好は、黒髪ロングで前髪はシースルーにし、オフショルにミニスカートを履いた。男の中だと身長は低いけど、168cmなんて女の子じゃ高い方だからヒールは履かない。
化粧は、今流行りの韓国風メイクを施した。
俺は今、南月ではなく、「ナツミちゃん」なのだ。自分が自分じゃなくなった瞬間に、俺はやっと胸を張ることができる。
SNS上の「ナツミちゃん」は大人気だし、こうして現実に現れる「ナツミちゃん」も他人の視線を奪うのだ。
「特技・趣味を教えてください」
という質問だ。俺は、いつも自分のことを地味で冴えない奴だと思っている。
特技なんて人に威張れるようなものは、はっきり答えられないし趣味も人に言えるようなものはない。
校庭から聞こえてくる部活に励む友達を見ては、ため息をつき、音楽室から聞こえてくる練習の音を聞いて肩を落とす。
そんな俺にも、自慢できるものが一つ。俺とひとつ違いの弟である朝陽だ。イケメンで、俺より身長もずっと高くて女の子に優しくて。俺はそんな弟が大好きだった。
一つの質問に答えられない俺でも、勉強だけはなんとか味方してくれたようで、全寮制の進学校に入学した。そのせいで、弟とはほとんど会えず、最近は母さんから様子を聞くくらい。
弟に、「全寮制の学校に行くことにした」と、高校受験の時期に伝えた瞬間、弟の顔から色が消え、それから俺に対してよそよそしくなってしまった。
長期休みに帰省しても、なんだか素っ気なくて、俺はそんな様子の弟を見るのがつらかった。そのために、俺から話しかけるのもやめてしまった。情けない。
だから、高校に上がった一年目は、友達もできたけれど精神的にボロボロで、SNSばかり眺めていた。そんな時、目に入ったツイートが、俺の「面接で言えない趣味」の始まりだった。
大きな鏡を購入したのは、高一の夏。同室者には「ほどほどにしとけよ」と半目で言われた。
ミシンを購入して、化粧品を口コミを見て通販を漁る。二次元のキャラクターの画像とにらめっこしてできるコスプレ衣装と、夜な夜な重ねた化粧の練習。荒れていく肌に、スキンケアも学んだ。そう、俺は勉強はできるんだ。
コスプレは勉強となんら変わらない。反復練習だ。己の苦手を潰していくだけ。
できあがったものは、見事に画面の中のかわいらしい女の子。
俺の理想、「ナツミちゃん」だった。
***
三年にあがったばかりだけれど、周りは大学受験に向けて動き始めている。俺も、その流れに乗ってはいるけれど、コスプレをやめることはできなかった。
イベントがあれば飛びつくし、カメラマンさんと予定があれば喜んで出かけに行った。
それでも、成績が下がらないのだから、己の特技はもう「勉強」でもいいのかもしれない。
しかし、イベントもカメラマンさんとの予定も毎週あるわけではないのだ。そんな日は、俺の思う「かわいい女の子」になって、街へ出る。これは俺のストレス発散方法だ。
昔から、ストレスをどう外へ逃がしていいかわからなかったのだけれど、やっと見つけた発散法を予定が合わないくらいで捨てるわけにはいかない。
いつものように、女モノの服を着て、化粧をし、ウィッグを被った。休日のためいつもより少し遅い起床の同室者には「南月(ナツキ)、今日もかわいいな」と言われたが、そんなの当たり前だろう。
俺の趣味を知っているのは、この同室者と寮監さん。そして、SNSのフォロワーだけだ。
休日の早朝には、寮の廊下に誰もいないので、急いで支度をして街へ出る。
寮監さんが、眠そうにして「いつも早いな」と見送ってくれる。男子寮を出てしまえば、もうこっちのものだ。今日は、地元の図書館にでも行って、洋服を見に行こうか。そうしよう。
毎週毎週、土曜日が待ち遠しい。金曜日に気になっていた映画がテレビでやっていたとしても、録画して寝るのだ。
学校から一歩足を踏み出せば、世界ががらりと変わる。
今日の格好は、黒髪ロングで前髪はシースルーにし、オフショルにミニスカートを履いた。男の中だと身長は低いけど、168cmなんて女の子じゃ高い方だからヒールは履かない。
化粧は、今流行りの韓国風メイクを施した。
俺は今、南月ではなく、「ナツミちゃん」なのだ。自分が自分じゃなくなった瞬間に、俺はやっと胸を張ることができる。
SNS上の「ナツミちゃん」は大人気だし、こうして現実に現れる「ナツミちゃん」も他人の視線を奪うのだ。
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