I-State (侵略国家)

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国衛隊 入隊編

第20話:最終目的⑨

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――国衛隊の増援および警察が到着。

蕎麦屋の店主は、手錠を外される。

エレナは店主を案じる。

「ありがとうございます!大丈夫でしたか?」

店主は、優しくほほ笑む。

「大丈夫よ」

 

――蕎麦屋からこの場所までは、数百メートル離れている。

途中の道は、とうぜん一本道ではない

見えないし、騒ぎが聞こえる距離でもない。

なのに、蕎麦屋を空けてまで、騒ぎが起こった数分後に この場所に来た。

……つまり、シーナ国のスパイが通行人……野次馬の中にも少なくとも一人はいた。

――私は、常に監視されている――?

 

エレナと店主は、会話を続ける。

「お醤油が切れて、買い出しで偶然通りかかったら こんな状況だもの。驚いたわ」

嘘だ。

野次馬の中のスパイから、緊急連絡があったから ここに来たんだ。

 

「でも、エレナちゃん、凄いわ。

あんな遠くから、石を投げて男のナイフを持った手の甲を骨折させるんだもの」

嘘だ。

あの大きさの石・あの速度の投擲では、骨折させる事・ナイフを宙に舞わせる事は……難しい。

石が当たる刹那、貴方があの男に悟られずに瞬間的に前進して、石と 手の甲の衝突速度――つまり衝撃力を飛躍的に高めた結果に過ぎない。

 

「私も本当に怖かったけど、二人を守りたいから勇気を出したのよ」

──嘘だ!

両手を拘束されたエレナを人質に取られて動揺した私が、実力を出したら一気に警戒される。

それを防いだだけだ。

あなたがその気になれば、あの男の体は一瞬で宙を舞って頭から地面に叩きつけられ、絶命していた。

 

――あなたは、シーナ国軍で5本の指に入る女兵士・メイフェイ。

私と同じスパイである……と同時に、私の監視役でもあるだろう。

私が私情に流されて、重大なヘマを踏むようなことがあれば、その時は──。

 

店主は、オウカに視線を合わせる。

「――気を付けてね」

瞬間、深海の暗闇に引きずり込まれたような圧力を感じた。

警告だ。

”絶対に、実力・素性がバレないように気を付けてね”

――という、警告。

 

 

――後日、オウカの元にメールが送られてきた。

[平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます――]

差出人は、蕎麦屋の店主だ。

クーポン券が添付されている。

――暗号文。

 

オウカは、ARレンズが常時接続しているWi-Fiマイコンである、国衛隊支給のベルトへのアクセスを切断。

シーナ国軍から支給された壁掛け時計型のWi-Fiマイコンに、アクセスし直す。

──暗号文が解読される。

 

[あなたの父親の動向について――

アメルカ国軍、もしくはルーシャ国軍にいる可能性が高い]

暗号文の内容を確認した オウカの呼吸音が、徐々に荒くなっていく――

 

──もう一文、添えられている

[あなたの正義は、シーナ国の大義の範疇でのみ 許される]

 

──私にとって

シーナ国の大義、日ノ国侵略は――手段に過ぎない。

目的は、正義は――父親への復讐だ。

 

黒い夜を、黄金の月光が照らしていた。

 
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