I-State (侵略国家)

エス

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VS北夕鮮・尖閣諸島編

第50話:深層領域⑤

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――ヨハンの左腰には、龍泉剣。

祖父の形見だ。

 

右手で、柄を握り――鞘から抜く。

真っすぐに伸びた、腕の長さほどの鏡面の様な刀身が、太陽光で輝く。

 

”――同胞たちは、ここへ向かっている。肉体も、魂も”

ヨハンが何を言いたいのか……

隊員たちは、理解している。言葉が無くとも、繋がっている。

 

”――我々は、信念を共にする家族だ”

数秒間、心地よい沈黙が流れる。

敵に包囲されている状況下で、だ。

 

――ヨハンは、真っ直ぐに7名の同胞たちを見据えながら、幼少より幾度も繰り返してきた、大切なあの言葉を発する。

「全ては、総統の為に」

 

――がさがさっ、と茂みの奥から音が聞こえる。

野生動物……?

一斉に、北夕鮮兵8名の視線が集まる……いや、数人は周りへの警戒も続行する。

「ぜえ……ぜえ……」

右脚を引きずりながら……その男は姿を現した。

――ケンジだ。

俯いた顔が、ゆっくりと上がり……ヨハンと視線が交差した。

「あ……」

情けない声を出すケンジに、ヨハンは正対する。

 

ケンジの心境は――

”必ず達成してやる。俺への個別任務を”

――ケンジにマキから託された個別任務。

[一瞬でいいから、敵本隊8名 全員の注意を引いてくれ]

 

恐怖の表情を浮かべながら……短時間でひねり出した複数のアイデアの内、実行可能で、成功率が高そうな作戦を実行――

その完了をもって ”合図” とする。

その詳細は、既に待機している味方たちには――伝わっている。

 

「……そうか、俺も、ここまでかァ……」

恐怖にひきつるケンジの表情は……諦めたような、どこか達観したような表情へと、変わる。

「……まぁ、アンタらも大変だよな。総統が絶対権力者なんだろ?誰も逆らえない」

ヨハンは、ケンジのいる方向へと――龍泉剣を握りながら歩み寄る。

 

――ケンジの心境。

”ヤバい!……いや、俺はたった今 生きる事を諦めた設定だ。違和感を持たれてはならない――絶対に!”

「……もうさァ、アンタらも……いや、情報統制で知らねぇかァ?……日ノ国じゃ、超特大ニュースとして報道されてんぞぉ?

――総統についての世紀の一大事件」

ヨハンが、歩みを止める。

 

”よし!……慎重に言動を選べ。コイツらの意識の深層へ、潜り込め――”

「……それについて証拠を見せてやるから、俺を楽に殺してくれると嬉しいなぁ」

――陽動――?

ヨハンは、不可解だとでも言いたげな……怪訝な表情を浮かべる。

 

ケンジは、気だるそうな表情を浮かべ……ゆっくりと右前腕を肩の高さに上げて、長袖をまくり上げた。

「コレは、技術大国・日ノ国の最新型の手甲でな、ARレンズ接続先の切り替え不要で……相手の視界に情報を映し出せる。動画とかな。

――俺の右前腕の手甲を見れば、アンタらもその動画が視れる」

 

”あと、一歩だ――神経を研ぎ澄ませろ”

ケンジは、仮想キーボードを左手で叩く素振りをする。

「もう、どこの動画サイトでも削除されて視れねーが、We Tubeでオフライン保存しといてよかったぜ。

今、魅せてやるよ。証拠を、動画を。

――1回限りだ」

 

静寂の中、ケンジの張りつめた声が、響いた。

「裸の男同士の、激しい くんずほぐれつ動画。

――総統が、同性愛者である証拠」

 

敵8名全員の視線が――ケンジの右前腕の手甲へと、一斉に集まる。

”合図” だ。

この場に待機している、ケンジ含む5名の国衛隊隊員による、敵本隊8名への急襲開始の ”合図”

 

――その瞬間。

ケンジのいる方向と反対、茂みの奥から――4本の棒手裏剣が、飛び出した。
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