異世界で稼ごうとして失敗したので「異世界で稼ぐ方法」を教える情報商材を売って稼ごうと思う

エス

文字の大きさ
2 / 8

第2話:しょーもない立志編②

しおりを挟む

――現世・日本には、10を超える財閥が存在する。

それらは、(お互いがバッティングしない様に)産業革命が起こっていない異世界の1つに行って、産業・インフラを創ろうとしている真っ最中だ。

――現世・アメリカには、5を超えるビッグテックが存在する。

それらは、(お互いがバッティングしようがお構いなしに)インターネット黎明期の異世界に片っ端から参入している。

各異世界での検証データが、相互に活用されるのだろう。

 

それに伴い、財閥・ビッグテックは、現世・異世界で多くの求人を出している。

しかし、何のスキルも無い人間は、そのおこぼれにあずかる事すらできない。

(いや、そもそも財閥やビッグテックは、自分が販売している異世界転移アイテムが最高の性能との理由で、その使用者を優先的に採用している。売り上げを伸ばすために、必要以上に求人を出している?)

また、複数の専門家がチームを組んで異世界に行くパターンも多い……らしい。

確かに、金属加工職人・設計士・組立技能士・プログラマ・etc.などがチームを作れば、異世界でもイチからパソコンを作れる。インターネットという革命が起こった時に、工場を建てて大量生産することも可能だ。

 

――2人は、流れでなんとなく情報交換をしていた。

……というより、ビッグテックや財閥が異世界でうんぬんという話は、金髪ツインテールギャルであるルキさんが教えてくれた情報だ。

そして俺は、自分の失敗の経緯を話した。

「――で、ライチも私と同じく、いろんな異世界に行っては失敗、または先客がいて撤退したわけだ」

……”ライチ” ?それ、俺の事を指してんの?

”たいら たいち” と名乗る時に噛んでしまったので、聞き間違えたのだろうか?

それとも、正確に聞き取った上で、ニックネームをつけてくれたのだろうか?

……悪い気はしない。

女の子が、俺をニックネームで呼んでくれているのだとしたら。

それは、22年間の俺の人生の中で、極めて稀有な出来事なのだ。

 

――俺は、北海道に生まれ、男子校を卒業後に 近所の牧場で働いていた。

朝5時出勤で4時間労働、昼に食事と仮眠を挟み、午後3時に再び出勤して4時間労働。

無心で牛の乳を搾る毎日。

凍てつくような寒い風が吹き抜ける牛舎の中で、牛たちの香ばしいウ●コを掃除する毎日。

(最初に比べて、おっぱいの扱いが かなり上手くなった。ちなみに、生涯で一度も……人間の女性のおっぱいは触ったことはない。あ、いや、乳児期に母親の……)

従業員の人数が少ないので、休憩時間も狭い部屋でソファに座り向かい合い、強制フリートークの義務が発生。

(推しVTuberのショート動画を見たいのだが)

そこまで頑張っても、手取りは16万円ほど。

 

絶望して退職、実家を離れて単身 本土にやってきた。

愛知県で、大手自動車メーカーの期間従業員として働くことになった。

一週間ごとに日勤と夜勤が入れ替わる、狂気のシフト。

人間の身体の限界に挑戦するかのように高速で流れる、無慈悲の生産ライン。

俺は、ただひたすらに部品を組みつけていく。

自律神経ブレイカーな労働環境により、どんどん身体は重く感じられるようになっていく。

だが、きついが給料は良い。

また、人間関係も希薄で、休憩時間は無言でスマホを眺める期間従業員が大半。フリートークの義務もない。

牧場よりはかなりマシな労働環境だ。

結果、1年間勤めた。貯金は それなりに貯まった。

 

だが!心身を犠牲にしていつまでも働けない!

だから、自分自身の心身を、時間を、人生を企業に捧げるのではなく、自分の為に使う。

つまり、自分の手で――異世界で稼ぐ!

そう誓って大手自動車工場を退職、もう1カ月が経つ。

そして、異世界で稼ごうとしても、失敗を重ね続け――今、俺はここで 偶然出会った金髪ツインテールギャルと情報交換をしているのだ。

 

「あの……ルキさん、詳しいですね。ビッグテックや財閥の動向とか」

「異世界で稼ぐための情報収集してれば、自ずと目に入ってくる……あ!悪い、電話!」

ルキは、ペンダント型の異世界転移アイテムを手に取り、電話を始める。

異世界を横断しての電話を可能とする技術も、ビッグテックが開発したのだろうか。

「なーにー、あんまー。緊急じゃねーばー、電話やあらんでLIMEかメールにしみそーれーって言うてぃるさー」

ギャルは、呪文詠唱を始めた。

「体調やなんくるねーん。なーふぁーに比べてぃ、ちょっち寒さるけど。まったく、安心、しぃーしぃー、すなーよ。また、うちに帰いるよー。くぅとぅし、家族みんなーで温泉いちゅんか?

またやーたい」

ギャルは、呪文詠唱を終えた様だ。

 

「あー、ごめん。地元にいるオカンからの電話。私、沖縄出身」

ライチは、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべている。

「えーと、地元にいる家族とは、そこの方言で話すということですね?」

「つーか、本土に来てから気を許した友達とかでも、伝わる範囲でウチナーグチ混ざる」

家族、友人……。俺には、なじみが薄い言葉だ。

 

……………………。

いやいやいや!こんなこと考えてる場合じゃない!

俺は、異世界で稼がないといけない!!

どうすればいいんだ!!

「……話、逸れたね。異世界で稼ぐのは難しい」

感情が顔に出やすいライチの表情を見て、ルキは話を本題に戻す。

「どこもライバルだらけですね。異世界で稼ぎたい人はとてつもなく多い……」

 

その瞬間、ライチの脳内の神経細胞が激しく火花を散らした。

「……ライバルを客にすればいいんだっ。『異世界で稼ぐ方法』を、お金出しても知りたい人も膨大な数いるはずだ!」

ルキは、きょとんとした顔をしながら口を開く。

「いや、異世界で稼ぐ方法を教えるって言っても……そもそもライチ、異世界で稼げてないじゃん」

「俺自身が稼いでる……とは、言わなければいい。名監督が必ずしも名プレイヤーである必要はない。」

 

ライチは、猛烈な勢いで仮想キーボードを叩く。

「ルキさん、これ見て!……あ、同期して。同期パスワードは ”taichi” で」

ARレンズを通したルキの視界に、仮想ディスプレイが浮かび上がる。

そこにズラッと表示されているのは
「投資で稼げます!」
「ブログで稼げます!」
「We Tubeで稼げます!」
…という魅力的な言葉を並べる、インフルエンサー達のメディア。

俺も、この人達と同じように「異世界で稼げます!」と発信すればいい!

以前、興味を持って少し情報収集したものの「うわあ……胡散臭ぇ……」という印象が強く、それ以上は深入りしなかった。

故に、お金を払うこともなかった。

 

しかし!

”お金を払わせる側になる” という考えが欠けていた。

しかし、今この瞬間……俺はその考えに到達した。

 

……俺は、悪名高き業界に身を投じる。

もう、ヤケクソだ。

PDFを売ってやる!動画を売ってやる!

――情報商材を売ってやる!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...