どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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二章 美空ミカエル

奏多の呪い

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人を殺してしまったら最後、完全に俺は悪に染まってしまいそうで。
「おい、颯太!!正気に戻れ!!」
呼びかけたところで返事は無い。
それどころか鎖を造り始める。
手を上に上げて、徐々に鎖を形成する。
「邪魔ですよ。奏多。早く退いてください。あぁ、縛られるのがお望みですか?それなら縛ってあげますよ?」
誰がそんな事を望むか。
それにしてもすごい威力だ。
少し振るっただけで壁が崩れる。
あぁ、あの剣と本気で戦いたい。
この体を壊す程に。
互いの命を殺し合いたい。
思考がどんどん塗り潰されていく。
だめだだめだ。
俺だけはまともでいなくちゃ。
呪いになんて取り込まれちゃだめだ。
それでも、頭の中の俺に似た声は話続ける。
あぁ、なんて楽しそうなんだろう!
全力で殺し合ったらきっとすごく楽しい。
俺の存在意義を証明できる。
理久よりも凄いってみんな認めてくれる。
無くしたはずの劣等感すら、俺のことを巻き込んできて。
もう、良いや。
今は従ってしまおう。
そう思ってインフェルノを振りかざす。
「颯太!殺し合おうじゃないか!」
ブワァ、と炎が舞う。
呪い。
理久の持つ呪いは相手の時を奪うもの。
魔王の持つ呪いは相手から奪うものが基本である。
俺の呪いは狂戦士状態となり、相手の力を一時的に超し、全知全能と成る力。
そして、殺した相手の力を完全に奪うことができる。
まさに陵辱するための力。
相手の全てを奪い取る忌むべき力。
俺は昔からこの力が嫌いだった。
大嫌いだった。
何度も消えて欲しいと思った。
それに、俺の意思は無くなるから、何が起こっているのかわからない。
どんなに悍ましく、ひどい行為をしているのかわからない。
わからないからこそ怖い。
相手を傷つけたくないのに。
全てを奪いたくないのに。
条件は戦う事。
戦いを楽しむ事。
人間であれば、楽しまないように出来るかもしれないが、俺は魔族だ。
本能で楽しむものと埋め込まれているんだよ。
だから戦って仕舞えば楽しむことになる。
だから俺の相手は常に悪人だと決まっている。
善人から奪いたくないから。
剣を振る。
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