どうしようもない僕は報われない恋をする

四章 雪闇ブラッド

パーティーの真意

雪はまるで独り言をつぶやくように言う。
その癖僕の本心を見透かすような瞳でこちらを見てくるから。
どうすれば良いのかわからなくて。
その視線から逃れたいだとか、そう言う事が頭に浮かんだり。
でも、逃げちゃいけない気がして。
僕の心を締め付ける。
「みんな俺を通して。理想の血影雪ってやつを見ているんだ。大事なのは俺じゃない。完璧で優しくて頭の良くて、頼りになって、強くて、カッコよくて最強で。みんなの愛情や尊敬を独占するに値する人物。まるで歴史の教科書に出てきそうな程完璧なヒーロー」
両親も周囲も雪の事をそう思っている。
「そんな人間実在するわけねぇじゃん？俺ってまだまだ子供なんだぜ？ちょっと大人びて見えるかもしれないけどまだまだ子供なんだよ。普通、子供ってもっと楽しく生きるはずなのにさ」
両親は雪を溺愛する一方、教育も厳しかった。
僕に対しては存在しないものとしている為、基本放置だったが。
雪に関しては分単位で予定を埋められて。
魔王の元に勤める前の生活なんて目も当てられないものだったのではないか。
僕はその頃、自分の事に忙しくて雪を見る余裕なんてなかったけれど。
「血影家の主人はこうならなきゃいけない？ゆきくんはもっとこういう人間でしょ？雪君らしくない？…、なぁ、俺らしいってなに？ちょっと勉強放棄してみたり。ちょっと外出て花を育ててみたり。そう言うことするだけでもダメなの？たまには俺だって遊びたい。好きなものを食べたい。好きなことを思いっきりしたい。たくさんだらけてみたい」
そう雪は言う。
その瞳には恨みがこもっていて。
どこまでも吸い込まれてしまいそうな闇があった。
「お前らはさぁ。俺を通して理想を見てるだけなんだよ。良いよな、楽で。俺の気持ちを考えてみろよ。俺、私の考えた最高のヒーローに当てはめられて、それと同じスペック要求される俺の気持ちをさ」
人格も、全部否定されて。
相手の望む自分で常にあり続けなければいけない。
それって一体どんな気持ちなんだろう。
どれだけ苦しいことなのだろう。
「現にお前もさ、何時も俺の事羨ましいって思ってただろ？両親に愛されてこんなパーティー開いてもらったり、周囲の評価高くて良いなとか。でも現実は俺自身じゃなくて、俺自体に期待された役割を命削って必死に演じて手に入れたものだぜ？笑えるよな」
その通りだよ、雪。
僕はずっと羨ましいって思っていた。
お前のことを。
でも、そんな状況に置かれているなんてちっとも考えなかった。
そうだよな。
僕にすらあんな事をいう両親だ。
雪を血影家に相応しい人間にする為ならどんなことも厭わないだろう。
「俺だってさ、知り合いだけのパーティーが良かった。こんな知らない人達に祝われるよりも、知ってる人達だけの内輪パーティーが良かった。だってこのパーティー俺のお見合いも兼ねてるんだぜ？気持ち悪りぃ」