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月夜

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凪編

学校

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周りの人間は最初からアテネが存在していたかのように振る舞った。
それに対して僕しかアテネが死んでいた事実を知らないんだなと思った。
ほんの少し優越感が胸を満たした。
ただ、アテネの弟達は覚えていたようで。
二人で手を繋いで登校している最中に偶然居合わせた時に二人とも目を見開いていた。
まるで死人を見たかのような顔をしていた。
アテネはあの後僕の家にそのまま泊まったから二人はアテネが生きている事など知らなかったのだろう。
そう考えると真実を知るのはこの三人だけなんだなと思った。

アテネと僕は同じ学校に通うことになった。
彼の弟は双子でそれぞれ別々の学校に通っている。
同じ学校に通っている方は美空という名前の良い子だ。
音楽が好きで、よく歌を聴かせてくれる。
それがとても上手で、褒めるとありがとうございますと言って笑った。
アテネと同じ教室。
どうしてこんなにスルスルと物事が進むのかは不思議だったが別に良いかと気にしないことにした。
クラスメイトの反応は特に変わらなくて、アテネへの対応も生前と変わっていなかった。
アテネは、僕がクラスに馴染めていない事を心配してくれたけど、それに対して、
「僕はこのクラスにとっては染みみたいなものなんだよね。別にいいんだ。僕もこのクラスが嫌いだから」
「どうしてですか?」
「…何でだろうね。さぁ、そろそろ始まっちゃうから行こっか」
上手く誤魔化せたなら良いなと思った。
本心を言うならば、アテネが死んだ後、皆の態度が見事なまでに変わって。
それ以来上手く人を信じることができずに苦手になって、嫌いになってしまったんだ。
受け入れられなくなってしまったんだ。

あれから学校に行って、帰って二人で遊んで、と言う毎日を繰り返した。
そのうち段々周りの態度に対して苛ついてきた。
アテネが死んだ後から少し経ったら、初めからなかったように忘れたくせに、帰ってきた途端に群がって。
アテネのことをきちんと覚えていたのはこのクラスで僕だけなのに。
なんでそんな馴れ馴れしいの、どうしてそんなに関わろうとするの。
なんて醜い嫉妬心に駆られた。
地理の授業中、教室の窓ガラスから外を見ながらそんなことを考えた。
世界地図を指しながら先生が何かを話している。
それを見て、思った。

アテネと二人で地球の裏側にでも飛んでしまって、そのまま誰もいない場所に行きたいな。

子供の妄想のようなそんなこと。
名も知れぬ無人の駅で二人で夜を明かすのだ。
それがとても魅力的に見えた。
そう思えたから。
早速許可を取ろうかと思った。
もうこの街には戻ってこないだろうから、挨拶もしなくちゃな、なんて思った。

昼休み、僕は屋上でいつも食べる。
アテネが来る前は美空と二人でここで食べていた。
美空と一日の予定を話し合いながら。
アテネが先生から呼ばれて遅れる事を確認してから、美空の所に行った。
美空は僕の姿を見ると嬉しそうに駆け寄ってきた。
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