IF

美空編

貴方への想いの証は

磯の香りが鼻につく。
カンカンと列車の来ることを知らせる音がどこか遠くで鳴り響いている。
凪先輩の目はどこまでも虚だ。
やがて列車がやって来て先輩を轢き殺す。
バラバラになった体。
引き千切れていくお揃いのついとなった腕。
奇跡的に綺麗なまま残った先輩の頭をそっと胸の前で抱きしめた。
「俺から離れようとするからこうなるんですよ、凪先輩。大丈夫。貴方がいくら迷っても、いくら離れようとしたって、何回だって俺が繋いであげますから。貴方の居場所は俺の隣なんですよ。それ以外どこにも存在しないから。バラバラになった体も綺麗に繋いであげます」
きっとこれは恋なんてやつじゃない。
そんなものよりもはるかに歪んでいて、汚れているものだって知っている癖に。
俺はそれを手放せない。
だって、だって。
凪先輩が傍にいるだけで、存在してくれるだけで俺は救われるの。
満たされるの。
他の何も俺を満たしてはくれないのに。
いつまで続くのかわからない。
夢だっていつかは終わる。
けれど、けれど。
俺の我儘だってわかっているけれど、それでも。
いつまでも続いて欲しいなんて思うのは間違っているのだろうか。
きっと誰も知ることのない甘い感覚と凪先輩に俺はずっと救われている。