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月夜

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美空編

いつもどおりのにちじょう

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とある魔道士の本によれば、平穏とは消耗を以て代わりに成すらしいが、実際は何も変わりないらしい。
たしかに、元から『平穏』だったのなら、何一つ変わることはないだろうなと思った。
平穏から何かを消耗したとして、全体の一部を切り取ったのみなのだから。
そんなことを思いながら退屈な授業を受ける。
窓側の席の一番後ろ。
普通の人間ならば喜びそうなその席に座りながら、どこか憂鬱な気持ちで授業を受けていた。
何故憂鬱なのか。
それは単純に半年前から窓を眺めると嫌なものを見るからだ。
黒い影のような、モヤのような。
そんな人型の影を見て、焦って窓の下を見れば、何にも落ちていない。
この心霊現象はずっと続いていた。
やっと退屈な授業が終わった。
駆け足で凪先輩の教室へと向かう。
「凪先輩!」
「やっほー美空。迎えに来なくなもいいのに」
「そんなわけにはいきませんよ。僕は凪先輩の彼氏なんですから」
「そうだけど...」
「...凪先輩は嬉しくないですか?なら、迎えに来るのなるべく控えて...」
「嬉しいよ!ただ美空の負担になっていないか心配で...」
「そう言うことですか。そんなことないので安心してください」
そう、俺は凪先輩の彼氏となれた。
長年憧れ続けてきたその立場にやっと立てたのだ。
けれど凪先輩は俺にあまり教室に来て欲しくないようで。
その理由なんてわかっているけれど、あえてわかっていないふりをした。
別に良いじゃないか。
俺が来れば凪先輩は助かるのだから。
けれどきっと俺に助けられるのが嫌なんだろうなと思った。
あいつの時は助けを縋ったのに。
心の中で何かがざわつく。
凪先輩と二人で下校する。
腕を絡ませ合いながら。
何故かこんなに寒い真冬なのに、長袖じゃなく半袖を着ている凪先輩。
どうしてかを聞けば、
「何言ってるの?今夏だよ?美空の格好した方が暑いよ」
なんて笑いながら答えてくれた。
そうですか、なんて返して、そう言うならそうなんだろうななんて思った。
いつも通りの幸せな日々。
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