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月夜

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美空編

ハロー現実さよなら妄想世界

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俺の呪いの擬人化。
アテネのように凪先輩に寄り添う訳ではなくて、凪先輩を一方的に自分の物にしようとした存在。
凪先輩の策略で見せかけの心中で仕留めたかと思ったらまだ息があったから、俺の中に取り込んだ。
「もう十分楽しんだじゃん。いい加減凪先輩も疲れたよ」
「お前に言われたくない」
「そんなこと言ったってさ、美空も俺と同じことをしているんだよ」
そう言って、凪先輩に近づいていく。やめろ、離れろなんて思ったって、ミカエルが鼻歌を奏でる所為で動けない。
そっと凪先輩の体を抱きながら、俺に鏡を見せた。
そこに映っていた俺の姿は異形だった。
「金髪の髪はすっかり伸び切って、綺麗な青い瞳は濁りきり、頭には2本の角が生えている。天使なんて称号どこ行ったんだよ。今のままじゃ悪魔じゃないか。その着ているロープも相まってさ」
周りを見れば、腐臭に満ちたただの校庭。
凪先輩の体なんて継ぎはぎだった。
身体中に糸が張り巡らされ、皮膚の色は綺麗だったけどまだ縫合の跡が消えてない所為で痛々しくて。
瞳には一切光なんて灯っていない。
地面の穴には死体が数えきれないほど眠っていた。
腐臭の正体はそれだ。
教室の中だって、赤く染まりきっている。
当たり前だ。
全員俺が殺したんだから。
この手で。
歌で操って、意識を刈り取り、一斉に首を切らせて凪先輩のパーツにした。
どこまでも綺麗なこの人への捧げ物にしたはずなのに。
けれど結局汚したのも、壊したのも全部俺だ。
飛び降りたって思い込みたかった。
そう思った方が楽だった。
けれど、本当は列車で轢き殺された。
自殺した。
俺の所為で。
鏡で夢がどんどん崩れていく。
貴方との美しい思い出のメッキが剥げて、醜い俺の罪が浮き彫りになっていく。
貴方が泣く、笑う、怒る。
本当は虚な瞳を持ったまま、ただ音を出していただけ。
そこに感情なんてない。
あったと思い込んでいただけ。
貴方と歌う、踊る、話す。
本当は一人で歌ったり、踊ったりしていただけ。
その所為で貴方の体は余計の擦り切れた。
もういい加減疲れたよね、俺の我儘に付き合わされて。
ただの悪魔だよ俺は。
ミカエルの言う通り。
凪先輩の気持ちなんて全く考えていなかった。
ただの糞野郎だ。
「もうやるべきことなんて分かってるだろ?」
いつまでも続くこの夢を断ち切って、終わらせなきゃいけない。
けれど、この夢を終わらせたところで、俺はまた現実で苦しまなきゃいけないじゃないか。
「なら、このまま凪先輩を汚すのか?どうせならその手で殺めてしまえよ。現実じゃ絶対出来ないだろそんなこと」
そんなことできない。
けれど、手を伸ばす。
無抵抗な凪先輩はこちらを見る。
視線が絡みあった。
その瞬間、貴方の口が動いた。
「殺してよ、美空」
あぁ、結局助けてくれるんですね。
こんな馬鹿な俺を。
貴方はいつも救ってくれる。
首に手を掛ける。
きっとこの感覚は永遠に忘れられないだろう。
頬に生温い何かが伝う。
どうして泣いているんだろう。
元々俺が悪いのに。
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