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第二章 孤立の城
第十一集 避實而撃虚
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雲ひとつない晴天に朝日が煌めく。
渭水中流域、隴山に連なる山々に囲まれた渓流は、穏やかな風に吹かれて静かに波打つ。そこに浮かぶ楼船と、それを取り囲む小舟。
小舟には刀剣を携えた荒くれ者たちが立ち、楼船の甲板に視線を送っていた。
さてその甲板では大柄な水賊の頭目と、小柄な趙英が睨みあい、互いに構えを取る。
周囲の船にいる賊たち、楼船の奥で見守る緑風子に呼狐澹、潘船頭と数人の船員。全員が押し黙って動向を伺っていた。
甲板で相対した二人は、そのまま微動だにせずにいたかと思えば、次の瞬間には甲板中央で打ち合っていた。
片方が仕掛け他方が受けたはずであるが、余りに速すぎて周囲の者の眼にはどちらが先に仕掛けたのか判別できなかった。
考えている間にも一手二手三手……。
互いに仕掛けているが、双方とも相手の攻撃を的確に防御し、瞬く間に十手余りを交わすと、ともに再び間合いを取った。
その場にいる全員が息を飲む。
だが何よりも困惑していたのは戦っている当人同士であった。
頭目はその風貌通り、かなりの外功修練を積んでいるが、実は相当な内功の使い手であり趙英とほぼ互角。ゆえに体格差がそのまま趙英の不利となっていた。外功一辺倒の相手と踏んでいた趙英の大きな誤算である。
一方の頭目も、趙英が予想以上の内功の使い手であると分かり、迂闊な動きはできないと思い至る。一瞬の隙でも見せれば強烈な一撃を叩き込まれて致命傷を受けかねない。
最初の攻防でお互いに油断できぬ相手と知り、間合いを取りながらの膠着状態となった。
趙英の背後から見守っている緑風子は特に応援に力が入る。何しろ趙英が負ければ彼一人だけ大損である。何としても勝ってもらわねばならない。
一方で呼狐澹はというと、期せずして使い手同士の戦いを目の前で見る事ができたのである。横で騒ぐ緑風子の事など耳目に触れもしなかった。
先に動いたのは頭目の方であった。大きく踏み込んでの掌底による下からの突き上げである。水に落ちた方が負けという条件ゆえ、重量の軽い趙英を大きく浮き上がらせて船の外まで飛ばしてしまおうという意図が素人目にも見える。
趙英は冷静に両腕に内力を込めて防御の体勢を取り、的確に頭目の掌底を受け止めた。そこで趙英は違和感に気づく。相手の掌底がやたらと軽い。内力がまるで籠っていなかった。と言うより、趙英の両腕に掌で触れたというのが正しい。
頭目はその瞬間にニヤリと笑みを零し、同時に趙英も読み違えたと気づく。
次の瞬間、空気の弾けるような音を響かせて趙英の体が後ろへ吹き飛んだ。発勁(相手に触れた拳や掌から、予備動作無しで衝撃を伝える内功の極意。達人であれば鎧の上から相手の内臓を粉砕するほどの威力がある)である。
趙英が内力を込めて防御する事を見越し、初めの打撃を囮にして、趙英の内力が緩む隙を狙ったのである。
一方で趙英は空中ではなく真後ろに吹き飛び、船の舷側に叩きつけられた。頭目の意図に気づいた瞬間、仰け反るように体の重心を落として打点を下げ、空中に飛ばされる事を回避したのである。
この一瞬の攻防に、周囲から騒めきが起こった。
正確に打ち上げる軌道で打ち込んだ発勁に対し、打点を下げられた事に気づいた頭目は舌打ちをした。このような騙し技は二度は通じない。
趙英はすぐさま立ち上がる。打点をずらしたとはいえ、相手の発勁を無防備な両腕で受けてしまった。何とか何事も無かったように構えを取るが、両腕がしびれて力が入らない。
互いに攻め手を欠き、両者は再び睨みあったまま動かなくなった。
趙英はふと、先ほどまで見ていた母・王異との夢を思い出した。そんな場合ではないと振り払おうと思ったが、その会話内容が気にかかり、防御の構えを解かずに記憶を探る。夢の中の母からは『孫子兵法』の解説を受けていた。
「夫れ兵の形は水に象る。水の形、高きを避けて下きに趨き、兵の形、実を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。慧玉、意味は分かりますか?」
「はい、水に決まった形が無いように、兵の布陣や戦い方にも決まった形はなく、水が地形に合わせて流れるように、兵もまた敵に合わせて自在に戦い方を変える事こそ肝要であるという事です」
敵に合わせて形を自在に変える。これは軍による戦い方だけでなく、個の戦いでも同様だ。自在に変える。水のように。実を避け、虚を撃つ……。
趙英はおもむろに両腕を下ろして構えを解くと、すぐ背後にある船の舷側に飛び乗った。頭目はもとより周囲の賊たちも、緑風子や呼狐澹も何事かと目を見張る。
比較的船体の大きな楼船とはいえ、舷側板の厚みは二寸(約五センチ)程度しかない。そこに両足のつま先だけで立つ趙英。もしも体勢を崩して背後に倒れれば、そのまま水没して負けが決まる。
しかし趙英は、波に揺られている船の舷側に、まるで杭で打ち付けたように危なげなく直立していた。そしてその無防備な状態のまま不敵に微笑んだ。
これを挑発と受け取った頭目は、一気に踏み込んでいく。今度は初撃から内力を込めた全力の一撃だ。その拳が近づくも趙英は一向に防御をする様子が無い。
緑風子は当然ながら、呼狐澹も思わず声を上げた。
頭目の拳は正確に趙英の胴体に入った。だがここで頭目はハッとした。拳は相手の体を押し出しているが、まるで手応えがない。空中の羽毛を殴ったが如くである。
勢いのままに頭目自身も舷側の外へ体勢を崩しかける。このままでは自分も水中に没する。何とか体勢を立て直そうと腕を引こうとした時、目の前で趙英が腕を掴み、そこを支点に飛び上がるのが見えた。
しまったと思った時にはもう遅かった。趙英は頭目の腕の上で逆立ちでもするかのように身を翻し、頭目の後頭部に強烈な膝蹴りを喰らわせる。
趙英は攻撃の反動を利用して船上に戻ると軽やかな動きで甲板に着地し、一方の頭目はそのまま前方に倒れて大きな水飛沫を上げて水面に没した。
敵の動きに逆らわず、その勢いを利用して誘い込む。敵の力の方向が切り替わった瞬間に反撃に転ずる。孫子兵法の「実を避けて虚を撃つ」に着想を得て、思い付きで試した賭けである。
趙英自身も知らぬ事だが、これは千年の後世、武当山の道士・張三豊が体系化した太極拳。その原型であった。
決着が付き、しばしの沈黙があったが、どうしていいか分からず困惑した水賊たちが襲い掛かろうとする素振りを見せると、川から顔を上げた頭目が叫ぶ。
「やめとけ! 賭けは賭けだ! それにお前らじゃ勝てねぇよ!」
それを聞いた趙英は口元を緩ませて川面の頭目に向かって手を差し伸べると、頭目はどこか恥ずかし気にその手を取る。直後、趙英は全身に内力を込めると、片手だけで倍以上の体躯がある頭目を船上まで引き上げてしまった。その様子を見ただけでも、水賊たちは頭目の言ったお前らじゃ勝てないという言葉を実感した。
「約束は約束だ。行きな」
趙英が包拳して深々と礼をすると、見計らったように後ろから緑風子が嬉しそうに手を叩いて出てくる。
「いやぁ、無事に決着が付いたようで何よりだぁ!」
その言い草に立腹した頭目が怒鳴り声を上げる。
「お前との決着は付いてねぇよ!! 今日の所は嬢ちゃんの顔を立てて見逃すが、次に会ったら膾にして食ってやるからな!!」
わざとらしく慌てて船内に隠れる緑風子を尻目に、趙英は頭目の言葉に目を見開く。
「……気づいてたのか?」
「そりゃ、あんだけやりあえばな」
その事に気づいていながら何も言わずに対等の勝負をしてくれた頭目に、趙英は好感を持った。
「それじゃな、気を付けていけよ」
頭目はそういうと自分の船に戻っていった。その背中に趙英は声をかける。
「あんた、名前は?」
「莫浪風だ。お前さんは?」
「趙慧玉」
「何があってそんなカッコしてるかは知らんが、似合ってるぜ」
「あんたは、賊なんて似合ってないぜ」
そうして趙英と莫浪風が互いに笑い合っている間に、水賊たちの船は楼船から離れていった。
長安まではまだ長い。潘船頭と船員たちはすぐに楼船を出発させ、渭水の川下りを続けるのだった。
渭水中流域、隴山に連なる山々に囲まれた渓流は、穏やかな風に吹かれて静かに波打つ。そこに浮かぶ楼船と、それを取り囲む小舟。
小舟には刀剣を携えた荒くれ者たちが立ち、楼船の甲板に視線を送っていた。
さてその甲板では大柄な水賊の頭目と、小柄な趙英が睨みあい、互いに構えを取る。
周囲の船にいる賊たち、楼船の奥で見守る緑風子に呼狐澹、潘船頭と数人の船員。全員が押し黙って動向を伺っていた。
甲板で相対した二人は、そのまま微動だにせずにいたかと思えば、次の瞬間には甲板中央で打ち合っていた。
片方が仕掛け他方が受けたはずであるが、余りに速すぎて周囲の者の眼にはどちらが先に仕掛けたのか判別できなかった。
考えている間にも一手二手三手……。
互いに仕掛けているが、双方とも相手の攻撃を的確に防御し、瞬く間に十手余りを交わすと、ともに再び間合いを取った。
その場にいる全員が息を飲む。
だが何よりも困惑していたのは戦っている当人同士であった。
頭目はその風貌通り、かなりの外功修練を積んでいるが、実は相当な内功の使い手であり趙英とほぼ互角。ゆえに体格差がそのまま趙英の不利となっていた。外功一辺倒の相手と踏んでいた趙英の大きな誤算である。
一方の頭目も、趙英が予想以上の内功の使い手であると分かり、迂闊な動きはできないと思い至る。一瞬の隙でも見せれば強烈な一撃を叩き込まれて致命傷を受けかねない。
最初の攻防でお互いに油断できぬ相手と知り、間合いを取りながらの膠着状態となった。
趙英の背後から見守っている緑風子は特に応援に力が入る。何しろ趙英が負ければ彼一人だけ大損である。何としても勝ってもらわねばならない。
一方で呼狐澹はというと、期せずして使い手同士の戦いを目の前で見る事ができたのである。横で騒ぐ緑風子の事など耳目に触れもしなかった。
先に動いたのは頭目の方であった。大きく踏み込んでの掌底による下からの突き上げである。水に落ちた方が負けという条件ゆえ、重量の軽い趙英を大きく浮き上がらせて船の外まで飛ばしてしまおうという意図が素人目にも見える。
趙英は冷静に両腕に内力を込めて防御の体勢を取り、的確に頭目の掌底を受け止めた。そこで趙英は違和感に気づく。相手の掌底がやたらと軽い。内力がまるで籠っていなかった。と言うより、趙英の両腕に掌で触れたというのが正しい。
頭目はその瞬間にニヤリと笑みを零し、同時に趙英も読み違えたと気づく。
次の瞬間、空気の弾けるような音を響かせて趙英の体が後ろへ吹き飛んだ。発勁(相手に触れた拳や掌から、予備動作無しで衝撃を伝える内功の極意。達人であれば鎧の上から相手の内臓を粉砕するほどの威力がある)である。
趙英が内力を込めて防御する事を見越し、初めの打撃を囮にして、趙英の内力が緩む隙を狙ったのである。
一方で趙英は空中ではなく真後ろに吹き飛び、船の舷側に叩きつけられた。頭目の意図に気づいた瞬間、仰け反るように体の重心を落として打点を下げ、空中に飛ばされる事を回避したのである。
この一瞬の攻防に、周囲から騒めきが起こった。
正確に打ち上げる軌道で打ち込んだ発勁に対し、打点を下げられた事に気づいた頭目は舌打ちをした。このような騙し技は二度は通じない。
趙英はすぐさま立ち上がる。打点をずらしたとはいえ、相手の発勁を無防備な両腕で受けてしまった。何とか何事も無かったように構えを取るが、両腕がしびれて力が入らない。
互いに攻め手を欠き、両者は再び睨みあったまま動かなくなった。
趙英はふと、先ほどまで見ていた母・王異との夢を思い出した。そんな場合ではないと振り払おうと思ったが、その会話内容が気にかかり、防御の構えを解かずに記憶を探る。夢の中の母からは『孫子兵法』の解説を受けていた。
「夫れ兵の形は水に象る。水の形、高きを避けて下きに趨き、兵の形、実を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。慧玉、意味は分かりますか?」
「はい、水に決まった形が無いように、兵の布陣や戦い方にも決まった形はなく、水が地形に合わせて流れるように、兵もまた敵に合わせて自在に戦い方を変える事こそ肝要であるという事です」
敵に合わせて形を自在に変える。これは軍による戦い方だけでなく、個の戦いでも同様だ。自在に変える。水のように。実を避け、虚を撃つ……。
趙英はおもむろに両腕を下ろして構えを解くと、すぐ背後にある船の舷側に飛び乗った。頭目はもとより周囲の賊たちも、緑風子や呼狐澹も何事かと目を見張る。
比較的船体の大きな楼船とはいえ、舷側板の厚みは二寸(約五センチ)程度しかない。そこに両足のつま先だけで立つ趙英。もしも体勢を崩して背後に倒れれば、そのまま水没して負けが決まる。
しかし趙英は、波に揺られている船の舷側に、まるで杭で打ち付けたように危なげなく直立していた。そしてその無防備な状態のまま不敵に微笑んだ。
これを挑発と受け取った頭目は、一気に踏み込んでいく。今度は初撃から内力を込めた全力の一撃だ。その拳が近づくも趙英は一向に防御をする様子が無い。
緑風子は当然ながら、呼狐澹も思わず声を上げた。
頭目の拳は正確に趙英の胴体に入った。だがここで頭目はハッとした。拳は相手の体を押し出しているが、まるで手応えがない。空中の羽毛を殴ったが如くである。
勢いのままに頭目自身も舷側の外へ体勢を崩しかける。このままでは自分も水中に没する。何とか体勢を立て直そうと腕を引こうとした時、目の前で趙英が腕を掴み、そこを支点に飛び上がるのが見えた。
しまったと思った時にはもう遅かった。趙英は頭目の腕の上で逆立ちでもするかのように身を翻し、頭目の後頭部に強烈な膝蹴りを喰らわせる。
趙英は攻撃の反動を利用して船上に戻ると軽やかな動きで甲板に着地し、一方の頭目はそのまま前方に倒れて大きな水飛沫を上げて水面に没した。
敵の動きに逆らわず、その勢いを利用して誘い込む。敵の力の方向が切り替わった瞬間に反撃に転ずる。孫子兵法の「実を避けて虚を撃つ」に着想を得て、思い付きで試した賭けである。
趙英自身も知らぬ事だが、これは千年の後世、武当山の道士・張三豊が体系化した太極拳。その原型であった。
決着が付き、しばしの沈黙があったが、どうしていいか分からず困惑した水賊たちが襲い掛かろうとする素振りを見せると、川から顔を上げた頭目が叫ぶ。
「やめとけ! 賭けは賭けだ! それにお前らじゃ勝てねぇよ!」
それを聞いた趙英は口元を緩ませて川面の頭目に向かって手を差し伸べると、頭目はどこか恥ずかし気にその手を取る。直後、趙英は全身に内力を込めると、片手だけで倍以上の体躯がある頭目を船上まで引き上げてしまった。その様子を見ただけでも、水賊たちは頭目の言ったお前らじゃ勝てないという言葉を実感した。
「約束は約束だ。行きな」
趙英が包拳して深々と礼をすると、見計らったように後ろから緑風子が嬉しそうに手を叩いて出てくる。
「いやぁ、無事に決着が付いたようで何よりだぁ!」
その言い草に立腹した頭目が怒鳴り声を上げる。
「お前との決着は付いてねぇよ!! 今日の所は嬢ちゃんの顔を立てて見逃すが、次に会ったら膾にして食ってやるからな!!」
わざとらしく慌てて船内に隠れる緑風子を尻目に、趙英は頭目の言葉に目を見開く。
「……気づいてたのか?」
「そりゃ、あんだけやりあえばな」
その事に気づいていながら何も言わずに対等の勝負をしてくれた頭目に、趙英は好感を持った。
「それじゃな、気を付けていけよ」
頭目はそういうと自分の船に戻っていった。その背中に趙英は声をかける。
「あんた、名前は?」
「莫浪風だ。お前さんは?」
「趙慧玉」
「何があってそんなカッコしてるかは知らんが、似合ってるぜ」
「あんたは、賊なんて似合ってないぜ」
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