とある転生令嬢の憂鬱

すずまる

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∽Ⅰ∽

変わる環境

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 お茶会当日――――。

 王室から馬車が寄越されそれに乗ってアリアナは登城する。馬車の中には無表情な女性がひとり。
 馬車に乗り込んだときに自己紹介はしたもののそれでよかったのか不安にはなっていた。すると女性は軽くアリアナを一瞥した後「コレット・ミンティアでございます。本日よりアリアナ様の王太子妃教育で主に王室内と諸外国のマナーについての教師を務めさせて頂きます。また普段はアリアナ様の専属侍女としてお仕えさせて頂きます」と返してきた。

「ょ、よろしくお願いします、ミンティア先生」
「わたくしのことは『コレット』と呼び捨てて頂いて結構。アリアナ様はこの先、王太子妃、王妃となるお方。自分があらゆる人を従える立場になるため、自分より目上の者に対してもへりくだってはいけません。なのでわたくしはアリアナ様の『先生』ではありますがわたくしに遜る必要はございません」
「わかりました」
「敬語もいけません」

 理解したことを口にしようとして『わかりました』では敬語になるのか?とか『わかった』では子供ぽすぎる?とか考えて、結果頷くだけにした。
 しばらくアリアナは何か話しかけるべきなのか、それとも黙って窓の外でも見るべきか悩んでいた。…と、徐にコレットが口を開く。

「アリアナ様。本日のお茶会は王妃様主催となってはおりますがアリアナ様は王太子の婚約者として王妃様と共にホスト側について頂くことになるかと思われます。今までお茶会など主催された事はございますか?」

 そう改めて聞かれると、主催になったことはないと思い至る。

「いえ、母や姉の補佐をさせて頂いたことはありますが、私自身ではありません」

 そう答えると女性はチラッとアリアナを見る。そうだ、敬語はだめだった。そう気が付きもう一度言い直すべきか考えているとコレットが小さく息を吐き話を続けた。

「まぁいきなり目上の者に対して敬語をなくすなど淑女として教育された者なら無理だと理解しておりますし、今はまだ王太子妃候補というお立場。これからの妃教育の中で少しずつ直すので無理をする必要はありません。それに本日招かれている方達の中には気難しい方もいらっしゃるのでアリアナ様の丁寧な話し方は好感を持ってもらえるでしょう。今日は先程も申し上げましたがホスト側として王妃様の補佐をすると考えて頂ければ結構です。アリアナ様を知る辛辣な方々からまでもとても良い評判を聞いておりますからわたくしは心配はしておりません。いつも通りにして頂ければ宜しいかと…」

 若干不穏な単語も聞こえた気がするが、王太子妃教育を担当するほどの女性からの『可』の判定を貰ったことでアリアナは少し肩の力が抜けた気がした。

*-=-*-=-*-=-*-=-*

 王城に着き、馬車の扉が開くと王太子クリストファーがエスコートをするべく手を差し伸べる。アリアナは一瞬戸惑いを見せたものの大人しくその手を取った。
 手が触れた瞬間、クリストファーの頬に赤みが差し、コレットを始め、その場に控えていた使用人や騎士達がそれを見て満足そうに頷いたのだがアリアナは『生まれて初めて家族以外の男性の手を取っている』ということにただただ照れていて、またもや周りの状況を認識できていなかった。いつもの『残念発動』である。

「よく似合ってる」

 聞き慣れない男性の声を耳にしたことでアリアナの意識が自分の中に帰ってきた。そしてその言葉は隣にいる王太子殿下クリストファーから発せられた事に気付き、不覚にも頬を赤らめてしまった。

「ぁ、ありがとうございます」

 アリアナは、思いの外この人クリストファーに嫌われてはいないようだと思い、ほんの少し気持ちが軽くなった気がした。顔合わせの時は、お茶会とは言え初めてのホスト役にクリストファーも緊張していたのだろうと結論付け、自分もカッとなって失礼を働いたと反省もしたのだからと気持ちをリセットして今日、この時から改めて良い関係を築けるようにしていこうと思っていた。

 そんなことを考えていると茶会が催される庭園へと着いた。
 そこに居たのは王妃様とそのご生家のご婦人方、王弟のジェラルドと第二王子のミシェル。後は侯爵家以上の婦人方だった。
 アリアナも緊張したが、添えられた手が自分以上に緊張している事を感じ取った。思わず腕をぎゅっと掴んだのはアリアナ自身の緊張のせいもあったがクリストファーに安心して欲しいと思う気持ちも少なからずあったからだった。
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