捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ

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 王宮からローグアシュタル公爵家へと戻ると、扉をくぐった瞬間から胸の奥に抑えきれない感情が込み上げてきた。
 しかし、涙を見せるまいと必死に堪え、冷静な態度でお父様――バルムンドの執務室へと向かう。

「入りなさい」

 静かなノックの音とともに扉を開けると、お父様はいつものように山積みの書類を処理していた。
 少し垂れ下がった優しげな青い瞳が左から右へと忙しそうに動いていたが、ついにその目が私へと向く。

「エルザか、ずいぶんと早い帰りではないか。今日はお前の結婚式の日取りを報告するという話だったはずだが。……何かあったのか?」

 私の様子がおかしいことに気付いたのだろう。
 娘の幸せを願う柔らかな顔が変わった。
 別人かと疑うほどに鋭い目つき、眉を寄せたことで深くシワが刻まれていく。
 エルザはしばし言葉を失い、息を整えながら口を開いた。

「お父様……実は、婚約を……マクーン王子から婚約を破棄されました。私がザルカンド王国の王妃となることはないでしょう」

 込み上げてくる悲しみを噛み殺し、溢れそうになる涙を必死に抑え、自分でも驚くほどに震えた声で告げる。
 その言葉が静かに部屋に響いた瞬間、お父様の怒りが爆発し、ガキリと音がするほど歯を食いしばりながら、手に持っていたペンを机に叩きつけた。

「なんだそれは! ザルカンド王国のために尽くしてきた我がローグアシュタル家を馬鹿にしおって! アッシュエル陛下がどうしてもと頼んできた婚約だ。それを勝手に破棄するなど許されん!」
「私もまだ、頭が混乱しています。何も知らされず、突然、皆の前で発表されました。アイリスと……婚約すると」

 その報告に、バルムンドはさらに激高し、拳を固く握りしめて立ち上がった。

「あの王子、ローグアシュタル家の力を……恐ろしさを忘れたのか! 古い仲だからと、陛下の頼みをしぶしぶ了承はしたが……だからエルザを嫁にやるのは反対だったのだ。一方的に破棄するなど、舐め腐りおって」

 私が幼いころから優しく見守ってくれて……愛情を注いでくれたお父様が、私と同じ苦しみを共有していると思うと、悔しさがこみ上げてくる。
 お父様は深い息をつき、ふと私の顔をじっと見つめた。
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