白い結婚のはずなのに、なぜ私を殺そうとしたのですか? など、恋愛小説短編集

ミィタソ

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望むなら、戦いましょう

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 エルザが遺跡の罠を乗り越えて数日が経った。
 リカルドをはじめとするファイブスターたちは、相変わらず彼女にちょっかいをかける一方で、どこか奇妙な距離感を保っている。

 エルザはそんな日常にうんざりしていたが、同時に自分の心に芽生えた違和感を拭えなかった。
 それは、彼らの言葉や行動が単なる悪意ではなく、別の何かを含んでいるように感じたからだ。

 エルザは一人、朝の静かな中庭で息抜きをしていた。
 平民である自分にはこの学園での居場所がほとんどない。
 だからこそ、早朝の誰もいない空間だけが彼女にとっての安息の場だった。

その時、背後から聞き慣れた声が響く。

「お前はいつも一人だな」

 振り返ると、そこにはアルベルトが立っていた。
 いつもの冷ややかな表情に変わりはないが、その目にはどこか彼女を見透かすような色が宿っている。

「あなたにとやかく言われる筋合いはないわ。何か用?」

 エルザは素っ気なく答えた。

「お前がここにいると、学園が静かでいい。だが、リカルドの挑発に付き合うのはやめておけ。あいつは面白がっているだけだ」

 アルベルトはゆっくりと彼女の隣に腰を下ろす。

「わざわざ忠告してくれるなんて、意外ね。でも、逃げた先に私の居場所はない。学園を卒業して、家族を幸せにするの。それ以外はかんがえられないわ」

 エルザは腕を組んでアルベルトを睨む。

「そうか。だが、お前はこの学園で何も知らない平民だ。巻き込まれるのは時間の問題だろう」

 アルベルトは興味なさそうに視線を空へと移した。
 エルザは彼の冷淡な物言いに苛立ちを覚えたが、同時に彼が何かを隠しているようにも感じた。

「それなら放っておけばいいのに」
「……放っておけないから忠告しているんだ」

 一瞬の静寂。乾いた風が二人の間を通り抜ける。

 一方その頃、リカルドはファイブスターの部屋で一人、楽しそうに何かを企んでいた。
 机の上にはエルザの名前が書かれた小さなメモが置かれている。

「さて、エルザ・バートレイ。次はどんな反応を見せてくれる?」

 リカルドは自分にだけ聞こえる声でつぶやき、薄い笑みを浮かべた。

「君がどれだけ折れないか、もう少し試してみるとしよう」

そこへミレイナが入ってきた。彼女はリカルドの様子を見てため息をつく。

「またあの平民の子に構ってるの? あなた、何が楽しいの?」

「楽しいさ。だって、こんなに真っ直ぐでしぶとい人間、なかなかいないだろう?」

 リカルドは振り返り、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「それがどれだけ無駄なことか、いつ気づくのかしらね」
「それも含めて見てみたいんだよ、ミレイナ。この僕が、いつ彼女に飽きるのか知りたいんだ」

 やれやれと呆れながら、ミレイナはこれいじょう会話するつもりがない様子。
 ようやく何かが固まったらしく、リカルドは専用ラウンジを出ていく。

 午後の休み時間、エルザは再び図書室で本を読んでいた。そこへやってきたのは、やはりリカルドだった。

「また会ったね。こんなところにばかりいると、退屈じゃない?」

 彼は楽しげに彼女の隣の席に座る。

「退屈なのはあなたの方でしょ。それで、今度は何を企んでるの?」

 エルザは本から目を離さずに言った。

「企んでるなんて人聞きが悪いな。ただ、お前にもっとこの学園を楽しんでもらおうと思ってね」

「結構よ。お構いなく」

 リカルドは彼女の無愛想な返事に笑い声を漏らす。

「まあ、そう冷たくするなって。実は面白い話があるんだ。近々学園で競技会が開かれるのは知ってるか?」
「競技会?」
「そう。魔法や剣術の腕前を競うイベントさ。平民のお前でも参加はできる」

 エルザは少し考え込んだ。競技会で勝てば、平民でも名を挙げるチャンスがある。
 しかし、リカルドがわざわざその話を持ちかけてきたのには裏があるはずだ。

「私に何をさせたいの?」
「俺が後ろについてやるよ。ただし、お前が勝てたらの話だけどな。これからの学園生活が楽になる。悪い提案じゃないだろう?」

 リカルドは満面の笑みを浮かべた。

「……なるほど。いいわ、その競技会に参加する!」

 何か裏がありそうなのは置いておくとして、リカルドの提案にはメリットがある。
 エルザは覚悟を決めたように頷いた。

「楽しみにしてるよ、エルザ」

 リカルドはエルザの髪にポンと手のひらを乗せると、嬉しそうに図書室を出ていった。
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