キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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三話 酒と女と魔王城

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 魔王ヴァルゼスが不敵に笑う。

「……どうした? キャバ嬢というのは、余を納得させられるのであろう?」

 いや、正解を持ってるってわけじゃないんだけど。
 魔王様がどうしたいかを聞き出して、一緒に正解を見つけましょうって意味で言っただけなのに。
 でも、ここで否定したら話が進まなそうだし……。

「……わかりました。魔王様に最高のおもてなしをさせていただきます! では、まずはお酒ですね。ナンバーワンキャバ嬢の美咲が、魔族のナンバーワンであるヴァルゼス様とともに答えを導いてみせましょう! ……お酒、ありますよね?」

 私は気合いを入れて宣言した。
 キャバ嬢として生き抜いてきた私が、この異世界でも通用するのか――試してみるしかない!

「なるほど……人間の世界では、酒を飲みながら話をするのが楽しみ方のひとつ、というわけか」

「はい! お酒があると、お互いリラックスできますし、会話も弾みますから!」

 ヴァルゼスにキャバクラのシステムをざっくり説明すると、意外にも興味を持ってくれたみたいだった。

「では、酒を用意しろ」

 ヴァルゼスが指示を出すと、側近っぽい魔族がすぐに動く。あっという間に丸テーブルと私用のイスまで用意されてしまった。
 階段を上って魔王様の隣に座る。近くで見ると、赤い瞳が妖艶な美しさを放っている。見惚れて言葉を失ってしまいそうな美貌だ。
 そこに、立派な酒瓶とグラスが運ばれてきた。
 悪魔っぽい翼が生えた禍々しいボトルに、よく熟成されたウイスキーのような琥珀色のお酒だ。銀色のドラゴンの爪が台座となったグラスに、なみなみと注がれていく。
 お店なら50万くらい取っちゃいそう。
 ゲストの魅力に圧倒されては、キャバ嬢として二流以下。いい女と飲めて嬉しいでしょう? ……という、内から滲み出る自信を忘れてはいけない。

「おお、さすが魔王様のお城。いいお酒が揃ってますね!」

「ふん、これくらい当然だ。魔王の嗜みだからな。人間の国であれば、この一本で貴族の屋敷が建つ」

 ヴァルゼスは自らグラスを持ち、琥珀色の液体を口に運ぶ。

「……ふむ、悪くない」

 私もすすめられて、ひとくち口をつける。
 うん、ちょっと強めだけど、深みのあるいいお酒だ。

「じゃあ、せっかくなので――乾杯しませんか?」

「乾杯とはなんだ?」

「はい! こうやってグラスを合わせて、一緒に楽しい時間を過ごしましょうって意味を込めるんです!」

 私は軽くグラスを持ち上げ、ヴァルゼスに見せる。

「……面白いな。よし、乾杯とやらをしてみよう」

 カチン、とグラスが触れ合う。

「乾杯!」

「……乾杯」

 ヴァルゼスは慣れない手つきながらも、ちゃんと応じてくれた。
 兵士たちは「魔王様が人間の文化を……!?」とざわついているけど、細かいことは気にしない。

「こうやってお酒を飲みながら話すと、普段言えないことも話せたりするんですよ!」

「ほう……では、貴様は今、何を話したい?」

「えーっと……そうですね……魔王様は、普段どんなことを考えてるんですか?」

 ヴァルゼスは少し考え、ゆっくりと口を開く。

「……世界のこと、民のこと、戦のこと……そして、この世界の行く末について、か」

「……やっぱり、魔王って大変なお仕事なんですね」

「貴様、人ごとのように言うな」

「そりゃあ、人ごとですから!」

 そう言うと、ヴァルゼスは一瞬驚いた顔をして——

「……ふっ」

 魔王様が笑った?
 えっ、今笑ったよね?
 なんか、ちょっと雰囲気が柔らかくなった?

「貴様、面白いな。確かに、お前にとっては人ごとか」

「はい! でも、せっかくここにいるので、魔王様のお悩みを聞くくらいはできますよ!」

「……ふむ」

 ヴァルゼスはまた酒を口に含みながら、私をじっと見つめた。

「ならば、貴様の言う“もてなし”とやら、もう少し見せてもらおうか」

 私の接客は始まったばかり。
 ゲストがお金を使って応援してくれる私の話術をお見せしましょうかね!
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