キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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七話 美咲の接客術

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「人間の世界にはコンビニってお店があって、食べ物とかいろんなものが売ってるんですけど、すっごくミスばかりする店員さんがいたんですよ。でも、全然謝らなくて。変な人だなと思って名札を見たら、その人……スマンて名前だったんですよ! ……って、あれ? 面白くなかったですか?」

 とっておきのエピソードトークを披露したのだが、魔王様の反応はイマイチだ。
 笑ってくれると思ったんだけどな。

「……クッ、ふむ。なるほど、続けろ」

 ……と思いきや、魔王様ったら笑いをこらえてたみたい。少し興味を持ったように赤い瞳を細めている。
 ふふっ、可愛いところがあるじゃない。
 よし、第一関門突破。あとは、いかに魔王様を楽しませるかが勝負!

「あとは……そうですね、魔王様って“口説かれた”ことってあります?」

「……なに?」

「いや、ほら、魔王様ってお強いしカリスマもあるし、女性からアプローチされたりしません?」

 ヴァルゼスはフッと鼻で笑う。

「貴様、人間の女はそんなことを話題にするのか?」

「もちろん! 恋バナっていうのは、お酒や食事と同じくらい大切な“楽しみ”ですから!」

 私はにっこり微笑んでみせた。
 ヴァルゼスはしばらく黙って私を見つめた後、低い声で呟く。

「……口説かれたことがないわけではない」

「おお! それで、それで? どう対応したんですか?」

「断った」

「……あ、そっけない」

「私に近づく者は皆、恐れを抱いていた。真に心を開いていた者など、一人もいない」

 ……なるほど。確かに、魔王様を好きになる女性がいても、怖くて本音を言えなかったのかも。
 私もこの世界にきたばかりだけど、魔王様が魅力的ってことは分かる。
 表裏のない誠実さとか、初々しい態度とか。そもそもびっくりするくらいのイケメンだしね。

「じゃあ、魔王様。逆に聞きますけど、誰かを本気で好きになったことは?」

「……」

 ヴァルゼスは一瞬黙り込む。
 もしかして、触れてはいけないところに触れてしまったかも。
 謝ろうと口を開きかけたところで、魔王様の唇がゆっくりと動く。

「……ないn」

「ええー!?」

「何を驚いている」

「だって、こんなにイケメンなのに! 絶対モテるのに! こんなに可愛いのに!」

「……ほう? 余に向かって可愛いとは聞き捨てならんな」

 ヴァルゼスが面白そうに私を見てくる。

「では、美咲。貴様は私を口説くというのか?」

 えっ、いやいやいや。
 私、魔王様を口説くなんてそんなつもりじゃ……って、あれ?
 でも、私の目的って……。
 もしかして、魔王を口説き落として生き残ることなんじゃ?
 うん、間違ってないかもしれない。

「……まあ、いずれは?」

 そう言った瞬間、ヴァルゼスの目がキラリと光った。

「面白い。余の心を動かす話術とやら、期待させてもらおうか」

 ……これ、なんか思ったよりも大変なことになりそうだ。
 でも、やるしかない!

「ですが魔王様、女性を口説いたことがないというのは、魔族の王としてどうかと。それだけ溢れる魅力を持っているのですから、人生……いや、魔生で最初に口説く女性を私にするというのはどうでしょう?」

 私は笑顔でそう言い、魔王様の魅力を存分に語る“口説き講座”を始めることにしたのだった。
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