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十四話 デート?いいえ、アフターです!
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一夜明けて――
昨晩はやっとお風呂に入れた。
魔王城のお風呂は銭湯みたいに巨大で、内装も黒に金の意匠が施されたお洒落なものだった。
気を遣ってくれたみたいで、私が入る時間だけ立ち入り禁止にしてもらったんだけど……長風呂しすぎて怒られちゃったんだよね。
さて、今日も変わらず執務室に来てお酒を飲みながらおしゃべりしてるんだけど、実はある提案をしようと思っている。
昨日、もっと余を楽しませろなんて言われちゃったからね。
「魔王様、今日はお出かけしましょう! アフターですよアフター!」
「……なぜ出かける? アフター? 貴様の言っていることが分からん」
魔王様は首を傾げながら、不思議そうに赤い視線を向けてくる。
最初は感情が読み取れない怖い目だと思ったけど、少しだけ分かるようになった気がする。
多分だけど、ちょっとワクワクしてるんじゃないかな。
「そうです! せっかく魔王城の外にもいろいろ楽しいことがあるんですから、見に行かないと! 外で遊ぶのだって、女性を口説くのには必要なんですからね? それに、私がこの城に来たとき、この世界のことを教えてくれるって言いましたよね? もしかして……嘘だったんですか?」
「嘘ではない。聞かれたことに答えてやっただろう。魔王である余が無意味に外をうろつく必要などあるのか? 遊ぶのと口説くのとなんの関係がある? 外に出たいだけなら護衛をつけてやる。勝手に行って土産話でも持ってくればいいだろう」
「もう、頑固ですね! 無意味じゃないですよ! 私、美味しいものがあるって教えましたよね? 私が初めて教えたんですよ? 魔王様も喜んでいたはずです。じゃあ、外にも何かあるって思いません?」
「……」
ヴァルゼスはしばらく考え込んだ。
腕を組みながら、フリーズ中のパソコンみたいにずっと。
「魔王様と一緒じゃないと、私が楽しくないんです! ほら、行きますよ! はやくはやく!」
そう言うと、ヴァルゼスは少し驚いたように私を見た。
「本気で言っているのか?」
「もちろんです!」
「はぁ……」
ヴァルゼスは静かにため息をつく。
目を通していた書類を机の端にまとめ始めた。
「……貴様の強引さには呆れるな」
「じゃあ、行ってくれますか?」
これは私の勝ちね。
魔王様の瞳が興味で満ちてるもん。
「楽しませろと言ったのは余の方だからな。仕方あるまい」
「やったー!」
こうして、私はついに魔王様を連れ出すことに成功したのだった!
* * *
「わぁ~、すごい! 魔王城の城下町って、意外とにぎやかなんですね!」
城下町に足を踏み入れると、活気あふれる市場や屋台、魔界ならではの不思議なお店が立ち並んでいた。
「当然だ。魔王城がある限り、この地は安定している」
「そっか~。でも、こんなにたくさんのお店があるなら、美味しいものもいっぱいありそう!」
私はさっそく、屋台の串焼きを指さす。
やれやれと手を振りながら、魔王様が二本も買ってくれた。
……二本?
もしかして、自分も食べたかったんじゃない?
「ささ、魔王様。食べてみてください!」
「余は別に……」
「はい、あーん! ほら、口を開けないと入りませんよ? あーん!」
自分も口を開きながら、魔王様の顔の前で串焼きをふらふらと動かす。
グルドさんの料理みたいに、これも不味い可能性があるからね。
反応を見て、最悪の場合は二本とも突っ込んでしまおう。
「……貴様、余は魔王だぞ? こんな場所で女に食べさせてもらうなど、余に恥をかかせる気か?」
「いいじゃないですか! せっかくのデートなんですから!」
「デート? さっきはアフターだのと言っていなかったか? ……まあいい。どうせ折れんのだろう」
そう言いながらも、ヴァルゼスは渋々串焼きを受け取り、一口かじった。
もぐもぐと咀嚼している魔王様の反応をうかがう。
「……悪くない」
「でしょ~!」
そうだろうと言いながらも、確信なんて全くなかったけどね。
……あれ?
私も一口食べてみたら、なんの味もしなかった。
やっぱり魔王様の味覚って、人間と違うのかな?
昨晩はやっとお風呂に入れた。
魔王城のお風呂は銭湯みたいに巨大で、内装も黒に金の意匠が施されたお洒落なものだった。
気を遣ってくれたみたいで、私が入る時間だけ立ち入り禁止にしてもらったんだけど……長風呂しすぎて怒られちゃったんだよね。
さて、今日も変わらず執務室に来てお酒を飲みながらおしゃべりしてるんだけど、実はある提案をしようと思っている。
昨日、もっと余を楽しませろなんて言われちゃったからね。
「魔王様、今日はお出かけしましょう! アフターですよアフター!」
「……なぜ出かける? アフター? 貴様の言っていることが分からん」
魔王様は首を傾げながら、不思議そうに赤い視線を向けてくる。
最初は感情が読み取れない怖い目だと思ったけど、少しだけ分かるようになった気がする。
多分だけど、ちょっとワクワクしてるんじゃないかな。
「そうです! せっかく魔王城の外にもいろいろ楽しいことがあるんですから、見に行かないと! 外で遊ぶのだって、女性を口説くのには必要なんですからね? それに、私がこの城に来たとき、この世界のことを教えてくれるって言いましたよね? もしかして……嘘だったんですか?」
「嘘ではない。聞かれたことに答えてやっただろう。魔王である余が無意味に外をうろつく必要などあるのか? 遊ぶのと口説くのとなんの関係がある? 外に出たいだけなら護衛をつけてやる。勝手に行って土産話でも持ってくればいいだろう」
「もう、頑固ですね! 無意味じゃないですよ! 私、美味しいものがあるって教えましたよね? 私が初めて教えたんですよ? 魔王様も喜んでいたはずです。じゃあ、外にも何かあるって思いません?」
「……」
ヴァルゼスはしばらく考え込んだ。
腕を組みながら、フリーズ中のパソコンみたいにずっと。
「魔王様と一緒じゃないと、私が楽しくないんです! ほら、行きますよ! はやくはやく!」
そう言うと、ヴァルゼスは少し驚いたように私を見た。
「本気で言っているのか?」
「もちろんです!」
「はぁ……」
ヴァルゼスは静かにため息をつく。
目を通していた書類を机の端にまとめ始めた。
「……貴様の強引さには呆れるな」
「じゃあ、行ってくれますか?」
これは私の勝ちね。
魔王様の瞳が興味で満ちてるもん。
「楽しませろと言ったのは余の方だからな。仕方あるまい」
「やったー!」
こうして、私はついに魔王様を連れ出すことに成功したのだった!
* * *
「わぁ~、すごい! 魔王城の城下町って、意外とにぎやかなんですね!」
城下町に足を踏み入れると、活気あふれる市場や屋台、魔界ならではの不思議なお店が立ち並んでいた。
「当然だ。魔王城がある限り、この地は安定している」
「そっか~。でも、こんなにたくさんのお店があるなら、美味しいものもいっぱいありそう!」
私はさっそく、屋台の串焼きを指さす。
やれやれと手を振りながら、魔王様が二本も買ってくれた。
……二本?
もしかして、自分も食べたかったんじゃない?
「ささ、魔王様。食べてみてください!」
「余は別に……」
「はい、あーん! ほら、口を開けないと入りませんよ? あーん!」
自分も口を開きながら、魔王様の顔の前で串焼きをふらふらと動かす。
グルドさんの料理みたいに、これも不味い可能性があるからね。
反応を見て、最悪の場合は二本とも突っ込んでしまおう。
「……貴様、余は魔王だぞ? こんな場所で女に食べさせてもらうなど、余に恥をかかせる気か?」
「いいじゃないですか! せっかくのデートなんですから!」
「デート? さっきはアフターだのと言っていなかったか? ……まあいい。どうせ折れんのだろう」
そう言いながらも、ヴァルゼスは渋々串焼きを受け取り、一口かじった。
もぐもぐと咀嚼している魔王様の反応をうかがう。
「……悪くない」
「でしょ~!」
そうだろうと言いながらも、確信なんて全くなかったけどね。
……あれ?
私も一口食べてみたら、なんの味もしなかった。
やっぱり魔王様の味覚って、人間と違うのかな?
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