キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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十五話 城下町での小さな事件

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「おや、魔王様ではありませんか」

 市場を歩いていると、突如として周囲が静まり、恭しくひざまずく商人や住人たちが現れた。
 さすが魔王様。やっぱりめちゃくちゃ偉いんだね。

「顔を上げろ。今日は視察ではない」

 ヴァルゼスが静かに告げると、人々はほっとしたように立ち上がった。

「まさか魔王様が城下町を歩かれるとは……。ところで、そのお連れの方は? わたくしの目には人間のようにしか見えないのですが」

「私は美咲っていいます! 魔王城でお世話になってます!」

 商人たちは不思議そうに私を見た後、どこか納得したようにうなずいた。

「なるほど……」

 え、今の“なるほど”って何!?
 気になったけど、まあいいか!

「ねえ魔王様、あのお店面白そうですよ!」

 私は道の先にある、キラキラと光るアクセサリーを並べた店を指さした。

「アクセサリーか?」

「はい! こういうのって見てるだけでも楽しいんですよ!」

 ヴァルゼスは少しだけ考えた後、好きにしろと言ってついてきてくれた。

* * *

「この髪飾り、可愛いな~」

 私は小さな水晶がついた髪飾りを手に取った。

「それなら、こっちの方が貴様には似合うだろう」

 すると、ヴァルゼスが手に取ったのは、深紅の宝石がついた髪飾り。

「えっ、魔王様が選んでくれたんですか?」

「……気まぐれだ」

「えへへ、じゃあこれにします!」

 店主がニコニコしながら包装してくれる。

「これは魔王様からの贈り物ということで! ありがとうございます。大切にしますね!」

「……なぜそうなる」

 魔王様は頭の後ろをかきながら、私から視線を背けてしまった。
 でも、買ってはくれるみたい。

「せっかく選んでくれたんですから、お揃いで何か買いません?」

「……貴様は、本当に妙なことを言う」

 そう言いながらも、ヴァルゼスは小さな指輪を一つ手に取った。
 私の髪飾りと同じく、深紅の宝石がはめこまれている。
 なんだかんだと言いながらこの指輪を選んじゃう魔王様……やっぱり可愛くない?

「では、これにする」

「おそろいですね!」

「……勘違いするな」

 ヴァルゼスはそう言ったけど、ほんの少しだけ耳が赤くなっていた。
 なんだか、魔王様の新しい一面を見た気がする!

 こうして私たちの城下町デートは、思いがけず特別なものになったのだった。
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