キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

文字の大きさ
19 / 48

十八話 魔王様が甘い!?

しおりを挟む
「なんか今日の魔王様、ちょっと優しくないですか?」

 城へ戻る道すがら、私はヴァルゼスの横顔をチラチラと盗み見ていた。

「……何を言っている?」

「いや、だって  さっきもそうでしたし、なんかこう……前より柔らかくなったっていうか!」

 ヴァルゼスは軽くため息をつき、静かに私を見下ろした。

「貴様が勝手にそう感じているだけだろう」

「うーん、でも、確かに魔王様って最初より怖くなくなった気がします!」

「貴様……余を何だと思っている?」

「えっと……強くてカリスマがあって、でも意外と面倒見がよくて……?」

「余計なことを言うな」

 ヴァルゼスは顔を背ける。

 ……ん?
 もしかしてちょっと照れてる!?

「じゃあ、さっきの髪飾りを選んでくれたのも、優しさの表れですか?」

「……気まぐれだと言ったはずだ」

「でも魔王様、そういう“気まぐれ”って今までしたことないですよね? 告白されても断ったって言ってたし、自分から口説いたこともないって聞きましたよ私!」

 私はふふんと下から魔王様の顔を覗き込む。

「……」

 ヴァルゼスは何も言わずに歩き続ける。
 でもその沈黙が、なんだか答えみたいに感じた。
 もしかして、私のことをちょっと特別に思ってくれてるのかな?

 そんな淡い期待が、胸の奥でじんわりと広がっていく。

* * *

 城へ戻ると、執事のダリオが静かに近づいてきた。
 筋骨隆々で長い白髪のおじいちゃん。額に立派な角が生えて、下あごから牙が突き出している。この人も鬼なのかな。

「魔王様、お帰りなさいませ」

「……何かあったか?」

「いいえ、何もありませんとも。ただ、魔王様が城下へ行かれるとは思っておりませんでしたので、少し驚きました」

ダリオの視線が、ちらりと私へ向けられる。

「それも、人間のおなごとご一緒とは……」

 ……あれ?
 今なんか、意味深な間がなかった!?

「ダリオ、何か言いたいことがあるなら言え」

「いえ、まさか魔王様が誰かとお出かけされる日が来るとは……。それもおなごですぞ? この老いぼれ、枯れた涙が沸き上がってきそうな気持です」

 ダリオは感慨深げに微笑む。

「……そんなに珍しいことなんですか?」

「ええ、今まで魔王様が誰かと共に行動されることなど、ほぼございませんでしたから」

「ふ、ふーん……?」

「おそらく、これは“変化”なのでしょう」

 ダリオは魔王様と長い付き合いなのだろう。昔を懐かしむように教えてくれた。
 ……変化か。
 それはヴァルゼスだけじゃなく、私自身にも起きている気がした。

「……くだらん」

 ヴァルゼスは私を一瞥し、そっぽを向く。
 でも、その耳の先がほんのり赤くなっているのを、私は見逃さなかった。
 ……え?
 これ、やっぱり甘くなってません!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。 そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。 毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。 もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。 気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。 果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは? 意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。 とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。 小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!

●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!? 「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」 長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。 前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。 奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。 そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。 この出会いがメイジーの運命を大きく変える!? 言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。 ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。 ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。 これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

処理中です...