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一話 キャバ嬢、異世界へ
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「……えっと、ここどこ? ていうか、何これ?」
石造りの壁沿いには、ハロウィンの渋谷に溢れかえるクオリティの高いコスプレ集団みたいな人たち。
簡単に言えば化け物だ。
鎧を着た鬼みたいな男、二足歩行の豚みたいな人、全身をローブに包んだフワフワと宙に浮いた不思議な何か。
……これって、まさか?
アニメや漫画でよくある異世界ってやつじゃない?
私のお父さんがハマってて、一緒に見たことがある。
「貴様、何者だ?」
低く響く声。ゾワッとするほどの迫力。魔王と仮定したイケメンに話しかけられた。
やばい、なんだか機嫌悪そう。
え、てか私、さっきまでお店にいたよね?
常連さんがシャンパン入れてくれて、結構いい感じで飲んでたはず……。
「おい、答えろ」
「あ、はい! えっと……美咲……です」
反射的に名乗ったけど、これ正解だったのかな?
ていうか、状況が飲み込めない。
壁には重厚な燭台、黒と赤を基調にしたゴシックな装飾。ここ、絶対に魔王の城だよね……?
「……美咲? 聞いたことのない名だな。貴様、どこから現れた?」
おそらく魔王であろう人物が、私をじっと見つめる。
鋭い目つきにドキッとする。
めちゃくちゃ怖いけど……なんだろう、顔はすごく整ってるな。
こういう人、ホストクラブとかにいたら絶対ナンバーワンになれるタイプ。
「えっと……私もよくわからないんですけど……気がついたらここにいて……」
そう言いながら自分の体を確認する。
持ち込めたのは肩から下げた化粧品入りのポーチだけか。
お気に入りの店でお願いしたお菓子いっぱいのネイルはそのまま。
紫のドレスはキラキラとクリスタルが輝いて、白のヒールは右足だけ脱げかけている。
……って、そんなこと気にしてる場合か!
「貴様、人間か?」
「え? はい、まあ……そうです」
「……ほう」
多分魔王っぽい人は、顎に手を当て、少し考え込むような仕草を見せる。
その瞬間、近くにいた化け物の一人が叫ぶ。カエルみたいなおじいちゃん。
「魔王様! そやつ、人間ならば処刑すべきゲロ!」
ゲコゲコと喉を鳴らしながら、ずいぶんと物騒なことを言う奴だ。
やっぱり、あのミステリアスなイケメンは魔王だったみたい。
……ん? 処刑?
私、処刑されるの?
ちょ、待って待って待って!
なんでそんな話になってるの!?
「ちょ、ちょっと! 私、何も悪いことしてないですよ!? ていうか、なんでいきなり処刑になるんですか!?」
「ここは魔族の領地ゲコ。人間が迷い込むことなどありえんゲロ。つまり、お前は間者か、それとも何らかの目的を持ってここに来たということゲコ!」
このカエルが何を言ってるのか理解できない。こんな動きにくい格好の私がスパイなわけないじゃない。
どう見たってキャバ嬢でしょ。
「えぇ……いや、違いますって! ただのキャバ嬢です!」
「……む? キャバ嬢とはなんだ?」
魔王様が少しだけ眉をひそめる。化け物たちは「キャバ嬢……? なんだそれは?」とザワザワし始めた。
しまった、つい職業をそのまま言っちゃった。
でも、キャバ嬢が異世界に来るなんて、そりゃ向こうもピンとこないよね。
「えっと……その、夜のお仕事というか……お酒を出したり、お客様とお話ししたり、楽しい時間を提供するお仕事です!」
「……ふむ。人をもてなす職業か」
魔王様はじっと私を見つめる。
そして、不意に微笑んだ。
「面白い。余は魔王――ヴァルゼス・ガヌンドラウス。貴様、余を楽しませてみせよ!」
「……はい?」
いやいや、どういう流れ!?
今、処刑されるかどうかって話してたよね!?
それがなんで楽しませろに!?
でも、ここで変に逆らったらマジで命が危ない気がする……。
キャバ嬢として、接客スキルで切り抜けるしかない!
「……わかりました。では、魔王様に楽しんでいただけるよう、精一杯がんばります!」
こうして、私は異世界で――しかも魔王城で、前代未聞の接客をすることになったのだった。
石造りの壁沿いには、ハロウィンの渋谷に溢れかえるクオリティの高いコスプレ集団みたいな人たち。
簡単に言えば化け物だ。
鎧を着た鬼みたいな男、二足歩行の豚みたいな人、全身をローブに包んだフワフワと宙に浮いた不思議な何か。
……これって、まさか?
アニメや漫画でよくある異世界ってやつじゃない?
私のお父さんがハマってて、一緒に見たことがある。
「貴様、何者だ?」
低く響く声。ゾワッとするほどの迫力。魔王と仮定したイケメンに話しかけられた。
やばい、なんだか機嫌悪そう。
え、てか私、さっきまでお店にいたよね?
常連さんがシャンパン入れてくれて、結構いい感じで飲んでたはず……。
「おい、答えろ」
「あ、はい! えっと……美咲……です」
反射的に名乗ったけど、これ正解だったのかな?
ていうか、状況が飲み込めない。
壁には重厚な燭台、黒と赤を基調にしたゴシックな装飾。ここ、絶対に魔王の城だよね……?
「……美咲? 聞いたことのない名だな。貴様、どこから現れた?」
おそらく魔王であろう人物が、私をじっと見つめる。
鋭い目つきにドキッとする。
めちゃくちゃ怖いけど……なんだろう、顔はすごく整ってるな。
こういう人、ホストクラブとかにいたら絶対ナンバーワンになれるタイプ。
「えっと……私もよくわからないんですけど……気がついたらここにいて……」
そう言いながら自分の体を確認する。
持ち込めたのは肩から下げた化粧品入りのポーチだけか。
お気に入りの店でお願いしたお菓子いっぱいのネイルはそのまま。
紫のドレスはキラキラとクリスタルが輝いて、白のヒールは右足だけ脱げかけている。
……って、そんなこと気にしてる場合か!
「貴様、人間か?」
「え? はい、まあ……そうです」
「……ほう」
多分魔王っぽい人は、顎に手を当て、少し考え込むような仕草を見せる。
その瞬間、近くにいた化け物の一人が叫ぶ。カエルみたいなおじいちゃん。
「魔王様! そやつ、人間ならば処刑すべきゲロ!」
ゲコゲコと喉を鳴らしながら、ずいぶんと物騒なことを言う奴だ。
やっぱり、あのミステリアスなイケメンは魔王だったみたい。
……ん? 処刑?
私、処刑されるの?
ちょ、待って待って待って!
なんでそんな話になってるの!?
「ちょ、ちょっと! 私、何も悪いことしてないですよ!? ていうか、なんでいきなり処刑になるんですか!?」
「ここは魔族の領地ゲコ。人間が迷い込むことなどありえんゲロ。つまり、お前は間者か、それとも何らかの目的を持ってここに来たということゲコ!」
このカエルが何を言ってるのか理解できない。こんな動きにくい格好の私がスパイなわけないじゃない。
どう見たってキャバ嬢でしょ。
「えぇ……いや、違いますって! ただのキャバ嬢です!」
「……む? キャバ嬢とはなんだ?」
魔王様が少しだけ眉をひそめる。化け物たちは「キャバ嬢……? なんだそれは?」とザワザワし始めた。
しまった、つい職業をそのまま言っちゃった。
でも、キャバ嬢が異世界に来るなんて、そりゃ向こうもピンとこないよね。
「えっと……その、夜のお仕事というか……お酒を出したり、お客様とお話ししたり、楽しい時間を提供するお仕事です!」
「……ふむ。人をもてなす職業か」
魔王様はじっと私を見つめる。
そして、不意に微笑んだ。
「面白い。余は魔王――ヴァルゼス・ガヌンドラウス。貴様、余を楽しませてみせよ!」
「……はい?」
いやいや、どういう流れ!?
今、処刑されるかどうかって話してたよね!?
それがなんで楽しませろに!?
でも、ここで変に逆らったらマジで命が危ない気がする……。
キャバ嬢として、接客スキルで切り抜けるしかない!
「……わかりました。では、魔王様に楽しんでいただけるよう、精一杯がんばります!」
こうして、私は異世界で――しかも魔王城で、前代未聞の接客をすることになったのだった。
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