酔いどれ兎は寂しさを認めない

greed green

文字の大きさ
1 / 1

酔いどれ兎は寂しさを認めない

しおりを挟む
「うぃー今日もにんじん酒が身に染みるぜー」

「トビ、いつもながら言っても無駄だとは思いますが、飲み過ぎは体に毒ですよ」

「うるせいやい、ラビ一日の終わりの酒は毎日風呂で体を清めるのと同じようなもんだよ」

「ならば体の中もちゃんと清めてくださいたださでさえ不摂生なんですから」

「ったくああいえばこういうやつだぜしかし、あれだなおめぇ知ってるか?」

「何ですトビ?」

「俺達兎ってのは、どうも寂しがりらしいんだ」

「ほうそれは一体どこの情報です?」

「決まってるだろう人間だわさいつものことだ」


「とかく人間というのは種族の性格をひとまとめにしたがる節があります」

「そうだ犬は従順猫はわがまま兎は寂しがりじゃあお前ら人間はって話だよ俺らだって個体ごとに性格なんて異なるっつうのに」

「まぁ勝手に種族の長って思ってますからね我々含め人間以外の動物を下に見ている所はありますよね」

「気分の悪い話だぜ俺はちっとも寂しがりなんかじゃねえってんだ」

「おや、そうなのですか?」

「おい、その反応はどういう事だ」

「種族単位での話は賛成ですが、トビに関してはあてはまってると思っていたのですがね」

「なっ!?なんだとてめぇ!俺様のどこが寂しがりってんだ!?」

「どこがって言われると全体的なんですけど」

「てめぇ俺をあまり怒らせない方がいいぜ具体的にどこがか言ってみろってんだ!」

「じゃあ言いますけれど、食事の時私が先に一頭でにんじんを食べてるとそれを見てあなたは、”なんで俺に声掛けずに先に食べてるんだ!”ってよく怒鳴りますよね?」

「それと寂しがりがどう関係あるんだ?」

「何故先に一頭で食事をとってはいけないんですか?腹の減るタイミングなんて違うじゃないですか私と一緒に食事が出来なかった一頭ぼっちにさせられたつまり一頭寂しく食事をするのが嫌なのでは、と私ずっと思っていたのですが」

「はははは、なんだそういう事かよお前の推論は大外れだいやある意味正解か」

「あららそうなのですかじゃあ何故一緒に食事をとりたがるのですか?」

「お前の言った事をそっくりそのまま返品させて頂きやすってとこだ」

「ん?というと?」

「だから、寂しがっているのは俺じゃなくて、お前だって事だよ」

「私が?」

「そうだよ俺はお前が一頭で食事するのが本当は寂しさを我慢してるからだと思って、わざわざ気を遣ってやってんだよお前は口下手で本心を言わない所があるからなぁ」

「私そんな事思った事ないですよ」

「いやいや、気にするな分かってる、俺はよーく分かってるよなんせお前とは長い付き合いだからな言葉にしなく
たって感じ取れるもんがあるんだよ」

「長年いる中でとんでもない勘違いが育まれてきた事を今初めて知りましたよ」

「まぁそういうこったよ」

「なるほどじゃああれはトビの気遣いだったって事なのですね」

「その通り」

「分かりましたでは他の例を挙げさせてもらいます」

「なんだい他にもあるってのかい」

「ええもちろんここの小屋は私とトビ以外いませんよね」

「何を今更な事を」

「そして、我々二頭が寝るには十分すぎるくらい広いスペースがありますよね」

「なかなかな豪邸に住まわせてもらってるよな」

「どうして眠る時にぴったりと私にくっついてくるのですか?」

「なっ!?いや、お前・・はっ、馬鹿が!何を言い出すかと思えば!」

「こうも動揺が上手な兎もいませんね」

「うるせぇ!待て待て、お前たったそれだけの事実で俺が寂しがりだとでも?」

「何か理由が?」

「ったりめえよ!お前は何も知らないんだな・・いや知らない事がいい事だって世の中多いがな」

「どういう事です?」

「俺はお前を守ってやってるんだよ」

「守る?何かが私を狙っているのですか?」

「いや・・これはずっと秘密にしておきたかったんだがな・・」

「いいです気にしないので教えてください」

「聞いて驚くなよ?」

「はいどうぞ」

「にんじんのバケモノがお前を連れ去ろうとしてるのを見ちまったんだよ」


「はい?」

「いや俺だって最初はびびったよ得体の知れねぇオレンジの巨体がおめぇの横に立って見下ろしてんだからな」

「それで?」

「そのバケモンがこう言うわけよ”友を待たずに先ににんじんを食う不届き者めが許すまじ”ってな」

「その件についてはにんじん側も不満に感じてたんですね初めて知りました」

「でだこれはやばいなとそして必ずやつはお前が寝静まってから現れるんだそして恨めしそうにお前を見つめるだ
から俺がお前の後ろに張り付いて実は毎夜睨みをきかしてやってんだよ」

「毎夜そんな争いが起きてるとは」

「大変なんだぜ、これでも睨んですぐ消える時もありゃ、一時間たっても消えねぇ時もあるそれでも俺はお前を見捨てねぇ大事な友だからな」

「こんな壮大な物語になるとは思ってませんでしたが、ありがとうございます」

「分かったろ俺は寂しがりなんかじゃなく、善意で行動してるだけなんだよ」

「これは失礼しました」

「わかりゃいい」

「はいところでトビ、私来週は旅行で小屋を3日程開けるので、小屋の留守番頼みますね」

「え?」

「いやー、私が勝手にトビを寂しがりだって思い込んでたので遠慮してたんですが、今決心しましたよこれで心お
きなく旅行にいけそうです」

「え、いや・・」

「大丈夫ですよね、トビは寂しがりなんかじゃないんですから」

「俺が悪かった行かないでくれ」

「酔いがさめたようですね」

「ああ、一気に」

「飲み過ぎはいけませんよ」


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

処理中です...