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TSレベル【1】
25.三者三様
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25.三者三様
「とりあえず、あんたを女の子に変えてしまったこと最初に謝っておく。ゴメン。すまん。悪かった。ソーリー。ごめんなさい。これでいいかしら?」
「全然誠意がこもってねえよ!」
「うっさいわね! だったら、あんたはあたしが隕石の在り処を真っ正面から尋ねたとして、どっかに失くしたって正直に答えてくれたかしら?」
「うっ……」
それは……おそらく、知らないと適当に誤魔化していたはずだ。
「ほーらみなさい。結局、あたしたちはいずれぶつかる運命になっていたのよ。早いか遅いかの違いだったわ」
こ、この女……いつか倍返しにしちゃる!
あの後、俺が男という軸を失いつつあったところを伊織に助け(?)出されてからも、俺たちは屋上に留まって、三人で弁当広げてのランチタイムの真っ最中だった。
それというのも、本来の目的である伊織から今後について話を聞くためだったわけだが、紅葉が『食事しながらでいいじゃん』と提案したためこうなった。
春の陽気と呼ぶにはまだまだヒエヒエな屋外で食事をとること数分。最初に口を開いた伊織が発したのは、そんな謝罪とは程遠いあたし様発言であった。
「だいたい、あんたこそあのザマはなによ! 『女の身体になっても中身は男を徹してみせる(キリッ)』とか大見得切ったくせに、元男の反転者なんかに好き勝手弄ばれたあげく、トロ顔晒していたあんたなんかにとやかく言われたくないわよ。このHENTAI!」
「――うぐぅ!」
俺のなけなしな男としての自尊心に痛恨の一撃が抉り込む。
た、確かに、さっきはとんだ醜態を晒してしまった。……正直、俺自身がびっくりしている。まさか、女になった身体をアレコレされたくらいであんなになるなんて思いもしなかった。
「そういうのも含めてウイルスの影響なんだと思うよ、荒野」
俺の疑問に答えてくれたのは、伊織からクリティカルな回転蹴りを食らったというのに、今ではケロリとしている紅葉だった。
「大転変でボクたちの性別は変わってしまったわけだけど、人格や性格にこれといった変化はなかったんだ。でもね、時間が経つごとに各々の性別に関わる事柄については、影響を与えやすくなっているみたいなんだよ。価値観とか好みとかが、突然変わってしまったり、気が付くと女の子みたいな行動をしていた自分にびっくりすることもあったんだよ」
「紅葉も、そういうことあったのか?」
「うん。……あ、誤解しないでね。ボクは今でも荒野の知っている男友達の〝つもり〟だから。なんだったら直接さっきボクが荒野にしたみたいなこと試してくれてもいいんだよ?」
女の子座りした体勢から、スカートを摘まんでヒラヒラさせながらバッチコイ期待している幼馴染から目を逸らし、まさかと伊織に視線を向ける。
「……事実よ。確かに反転者の人格や性格はそのままなのに、価値観や好みが変化したというデータは数多く存在するわ。でも、それはウイルスの影響ではあるけど、新しい性別に対する適応現象にも近いのよ。身体のが先に変化して、頭が後から追いかけてきているだけ。この二つは無意識に惹かれ合うのが当然だから、ある程度は抵抗して遅らせることは出来ても、根本的な部分を解決させなきゃ、反転者はいずれ新しい性別に塗りつぶされるわ」
最後の方で、伊織は心底うんざりとした顔になっていた。
それにしても、そんなに危険極まりないウイルスだったのか?
性別を変える以外に何の害も無いもんだとばかり思っていたけど、無転換者として外から眺めるだけでは分からない問題を含んでいただなんて……。
あのまま、伊織が屋上に来るのが遅れていたらどうなっていたことか……(ブルブル)。
「……言っておくけど木枯くん。今の木枯くんは状況的にとても危うい状態なんだと思うわ」
「俺が?」
「ええ。反転者になったばかりの木枯くんは、大転変の時にみんなでよーいドンといったスタートじゃない。〝周回遅れ〟の木枯くんは他の反転者と比べて経験値に圧倒的な差がある。言うなれば脱皮直後の蟹みたいなものよ。それまでどれだけ強固な守りだったとしても、剥けてしまえば脆いだけ。だからこの反転者にとって理想的な形になりつつある環境に流されやすくなっているでしょうし、〝悪意〟ある反転者の手に掛かれば、さっきみたいに女の子の部分を強引に刺激されただけであっさり堕ちそうになるくらい、今の木枯くんは無防備になっているのよ」
「悪意とか人聞き悪いなー。だいたい、先に荒野の女の子に手を付けたのは、ボクじゃなく伊織ちゃんじゃないの?」
「――――なッ!? あ、あれは暴れる木枯くんを大人しくさせるために仕方なくしたのよ!」
当事者から言わせてもらえば、暴れた覚えないし、ゲームオーバーになりかけていたと思います。
「ようするに、今の女の子になってしまった荒野は、反転者としてはレベル1の初心者さんだってことだってことだよね。それも、廃人ばかりなMMORPGに放り込まれてログアウトできなくなっちゃったような状態でのスタートだよ。あ、それもPvP(対戦機能)有りのね」
「ぜ、絶望しかねえじゃねえか……」
「そうだよ。そういうわけだから、荒野はこれから反転者としてのレベルを上げるためにも、今現在の自分という女の子について勉強する必要がありそうだよね。大丈夫だよ、反転者として先輩であるボクが、手取り足取り、荒野の内側に生まれたばかりな女の子がどんなものか引き出してあげるからね」
「――ヒエッ!?」
紅葉の瞳が『キュピーン☆』と怪しく光る。
その瞬間、一連の行為を身体は覚えているのか、俺の全身は縫いつけられたみたいに自由が利かなくなった。
「待ちなさい! 木枯くんはあたしが男に戻すって宣言したの聞いていなかったの?」
「い、伊織……」
「いいこと木枯くん。分かっていると思うけど、木枯くんが元の男に戻りたいと本気で思っているんなら、そいつの言っていた反転者としてのレベルなんて上げてはいけないからね。それは無転換者のままでありたいなら〝必要ない〟ことなんだから」
俺と紅葉の間に割って入る伊織。その小さな背中がとても頼もしいものに感じられた。
「もう、伊織ちゃんのケチ-。ほんのちょっとした悪戯というか、スキンシップというか、単なる〝通過儀礼〟だよこんなの。それとも伊織ちゃんは荒野にレベル1の低レベル縛りプレイでも強いるつもりなのかな?」
「……そんなのいらないから。木枯くんが無転換者のままでいたいというんなら、あなたたち反転者と同じ土俵に立つ必要も無いわ。それに、どうせあたしが【無転還機】で世界を元に戻したら、そんなのみんなまとめて〝無〟になるだけなんだから。それに――」
伊織はチラリと俺の……主に胸部へ視線を向けて、
「こんな人よりデカイだけの胸揉まれただけで、やらしい顔を晒してしまうムッツリスケベをこれ以上刺激させたらアッサリ堕ちてしまいかねないわ!」
……どうやら、俺の男としての信用は、伊織の中ではすでに大暴落しているらしかった。
「とりあえず、あんたを女の子に変えてしまったこと最初に謝っておく。ゴメン。すまん。悪かった。ソーリー。ごめんなさい。これでいいかしら?」
「全然誠意がこもってねえよ!」
「うっさいわね! だったら、あんたはあたしが隕石の在り処を真っ正面から尋ねたとして、どっかに失くしたって正直に答えてくれたかしら?」
「うっ……」
それは……おそらく、知らないと適当に誤魔化していたはずだ。
「ほーらみなさい。結局、あたしたちはいずれぶつかる運命になっていたのよ。早いか遅いかの違いだったわ」
こ、この女……いつか倍返しにしちゃる!
あの後、俺が男という軸を失いつつあったところを伊織に助け(?)出されてからも、俺たちは屋上に留まって、三人で弁当広げてのランチタイムの真っ最中だった。
それというのも、本来の目的である伊織から今後について話を聞くためだったわけだが、紅葉が『食事しながらでいいじゃん』と提案したためこうなった。
春の陽気と呼ぶにはまだまだヒエヒエな屋外で食事をとること数分。最初に口を開いた伊織が発したのは、そんな謝罪とは程遠いあたし様発言であった。
「だいたい、あんたこそあのザマはなによ! 『女の身体になっても中身は男を徹してみせる(キリッ)』とか大見得切ったくせに、元男の反転者なんかに好き勝手弄ばれたあげく、トロ顔晒していたあんたなんかにとやかく言われたくないわよ。このHENTAI!」
「――うぐぅ!」
俺のなけなしな男としての自尊心に痛恨の一撃が抉り込む。
た、確かに、さっきはとんだ醜態を晒してしまった。……正直、俺自身がびっくりしている。まさか、女になった身体をアレコレされたくらいであんなになるなんて思いもしなかった。
「そういうのも含めてウイルスの影響なんだと思うよ、荒野」
俺の疑問に答えてくれたのは、伊織からクリティカルな回転蹴りを食らったというのに、今ではケロリとしている紅葉だった。
「大転変でボクたちの性別は変わってしまったわけだけど、人格や性格にこれといった変化はなかったんだ。でもね、時間が経つごとに各々の性別に関わる事柄については、影響を与えやすくなっているみたいなんだよ。価値観とか好みとかが、突然変わってしまったり、気が付くと女の子みたいな行動をしていた自分にびっくりすることもあったんだよ」
「紅葉も、そういうことあったのか?」
「うん。……あ、誤解しないでね。ボクは今でも荒野の知っている男友達の〝つもり〟だから。なんだったら直接さっきボクが荒野にしたみたいなこと試してくれてもいいんだよ?」
女の子座りした体勢から、スカートを摘まんでヒラヒラさせながらバッチコイ期待している幼馴染から目を逸らし、まさかと伊織に視線を向ける。
「……事実よ。確かに反転者の人格や性格はそのままなのに、価値観や好みが変化したというデータは数多く存在するわ。でも、それはウイルスの影響ではあるけど、新しい性別に対する適応現象にも近いのよ。身体のが先に変化して、頭が後から追いかけてきているだけ。この二つは無意識に惹かれ合うのが当然だから、ある程度は抵抗して遅らせることは出来ても、根本的な部分を解決させなきゃ、反転者はいずれ新しい性別に塗りつぶされるわ」
最後の方で、伊織は心底うんざりとした顔になっていた。
それにしても、そんなに危険極まりないウイルスだったのか?
性別を変える以外に何の害も無いもんだとばかり思っていたけど、無転換者として外から眺めるだけでは分からない問題を含んでいただなんて……。
あのまま、伊織が屋上に来るのが遅れていたらどうなっていたことか……(ブルブル)。
「……言っておくけど木枯くん。今の木枯くんは状況的にとても危うい状態なんだと思うわ」
「俺が?」
「ええ。反転者になったばかりの木枯くんは、大転変の時にみんなでよーいドンといったスタートじゃない。〝周回遅れ〟の木枯くんは他の反転者と比べて経験値に圧倒的な差がある。言うなれば脱皮直後の蟹みたいなものよ。それまでどれだけ強固な守りだったとしても、剥けてしまえば脆いだけ。だからこの反転者にとって理想的な形になりつつある環境に流されやすくなっているでしょうし、〝悪意〟ある反転者の手に掛かれば、さっきみたいに女の子の部分を強引に刺激されただけであっさり堕ちそうになるくらい、今の木枯くんは無防備になっているのよ」
「悪意とか人聞き悪いなー。だいたい、先に荒野の女の子に手を付けたのは、ボクじゃなく伊織ちゃんじゃないの?」
「――――なッ!? あ、あれは暴れる木枯くんを大人しくさせるために仕方なくしたのよ!」
当事者から言わせてもらえば、暴れた覚えないし、ゲームオーバーになりかけていたと思います。
「ようするに、今の女の子になってしまった荒野は、反転者としてはレベル1の初心者さんだってことだってことだよね。それも、廃人ばかりなMMORPGに放り込まれてログアウトできなくなっちゃったような状態でのスタートだよ。あ、それもPvP(対戦機能)有りのね」
「ぜ、絶望しかねえじゃねえか……」
「そうだよ。そういうわけだから、荒野はこれから反転者としてのレベルを上げるためにも、今現在の自分という女の子について勉強する必要がありそうだよね。大丈夫だよ、反転者として先輩であるボクが、手取り足取り、荒野の内側に生まれたばかりな女の子がどんなものか引き出してあげるからね」
「――ヒエッ!?」
紅葉の瞳が『キュピーン☆』と怪しく光る。
その瞬間、一連の行為を身体は覚えているのか、俺の全身は縫いつけられたみたいに自由が利かなくなった。
「待ちなさい! 木枯くんはあたしが男に戻すって宣言したの聞いていなかったの?」
「い、伊織……」
「いいこと木枯くん。分かっていると思うけど、木枯くんが元の男に戻りたいと本気で思っているんなら、そいつの言っていた反転者としてのレベルなんて上げてはいけないからね。それは無転換者のままでありたいなら〝必要ない〟ことなんだから」
俺と紅葉の間に割って入る伊織。その小さな背中がとても頼もしいものに感じられた。
「もう、伊織ちゃんのケチ-。ほんのちょっとした悪戯というか、スキンシップというか、単なる〝通過儀礼〟だよこんなの。それとも伊織ちゃんは荒野にレベル1の低レベル縛りプレイでも強いるつもりなのかな?」
「……そんなのいらないから。木枯くんが無転換者のままでいたいというんなら、あなたたち反転者と同じ土俵に立つ必要も無いわ。それに、どうせあたしが【無転還機】で世界を元に戻したら、そんなのみんなまとめて〝無〟になるだけなんだから。それに――」
伊織はチラリと俺の……主に胸部へ視線を向けて、
「こんな人よりデカイだけの胸揉まれただけで、やらしい顔を晒してしまうムッツリスケベをこれ以上刺激させたらアッサリ堕ちてしまいかねないわ!」
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