社長の奴隷

星野しずく

文字の大きさ
45 / 53

社長の奴隷.45

しおりを挟む
「ば、バカ野郎!何してるんだよ!!」

 美住はなぜだか分からないが真剣に怒っている。



「だって、お前、俺のこと好きなんじゃ・・・」

「だからって、お前が俺のこと好きじゃないのに、こんなの嫌だよ。俺のことバカにするなよ」

 美住は少し涙目になっている。

 そして立ち上がるとそのまま帰ろうとした。



「待てよ!」

 信楽が美住の腕をつかんでも、力いっぱい振り払われた。

「帰る・・・」

「待てって」

 信楽は美住を後ろから思い切り抱きしめた。



「な、何してっ・・・!」

「帰らないでくれ・・・」

「はあ、訳わかんねえ・・・」

「俺だって、訳わかんねえけど、何かお前、可愛い・・・」

「か、可愛くない!やっぱ、帰る!」

「ごめんごめん、今のなし!だけど、もう少しいて欲しい・・・」



 しおらしくなった信楽の声に、美住が逆らえるはずがなかった。

 そのまま引きずられる様にリビングのソファに引き戻される。

 何となく気まずい雰囲気が流れる。

 信楽が美住の手を握った。
 


「な、何するんだよ!」

 美住は目を丸くして大声をあげた。

「な、なんで怒るんだよ!」

 美住は自分のことが好きなはずなのに、なんでいちいち怒るのか信楽には理解できない。



「だから、俺はお前のこと好きだけど、今すぐどうこうとか考えてないから。大体三年も待ったんだぞ、俺の真剣な気持ちを踏みにじるな」

 そう言われても、信楽も何故か分からないが、さっきからゾワゾワとしたおかしな感覚に襲われて、美住に触れたくて仕方がないのだ。



「俺、どうしちゃったのかな・・・。美住に告白されたときは何も感じなかったのに、なんか、お前の真剣な気持ち聞いてたら、だんだんお前が可愛く思えて仕方なくなって、こう、胸がキュンってするんだよ」

「マジで?マジで言ってんのそれ?」

「マジだけど」

「嘘だろ~」

 美住は顔を真っ赤にして両手で覆った。



「お前、俺のこと好きじゃん」

「嘘?」

「だって、胸がキュンってするんだろ?」

「そうだけど・・・」

「うわぁ~、嬉しいけど・・・なんか信じらんね~」

 美住はついに号泣しはじめた。



「お、おい、美住~」
 
 いつものお調子者から、こんな健気な姿を見せられ、信楽の胸はまたしてもキュンキュンしてしまう。

 信楽は思わず美住を抱きしめていた。



「美住・・・可愛い・・・」

「可愛くない!」

「そういうとこが可愛い・・・」

「可愛いって言うな!」

 そう反発されると意地悪をしたくなるのが人の常だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

可愛い女性の作られ方

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
風邪をひいて倒れた日。 起きたらなぜか、七つ年下の部下が家に。 なんだかわからないまま看病され。 「優里。 おやすみなさい」 額に落ちた唇。 いったいどういうコトデスカー!? 篠崎優里  32歳 独身 3人編成の小さな班の班長さん 周囲から中身がおっさん、といわれる人 自分も女を捨てている × 加久田貴尋 25歳 篠崎さんの部下 有能 仕事、できる もしかして、ハンター……? 7つも年下のハンターに狙われ、どうなる!? ****** 2014年に書いた作品を都合により、ほとんど手をつけずにアップしたものになります。 いろいろあれな部分も多いですが、目をつぶっていただけると嬉しいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

甘い失恋

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私は今日、2年間務めた派遣先の会社の契約を終えた。 重い荷物を抱えエレベーターを待っていたら、上司の梅原課長が持ってくれた。 ふたりっきりのエレベター、彼の後ろ姿を見ながらふと思う。 ああ、私は――。

処理中です...