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もう君を絶対に離さない.50
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そう言ったっきり、二人は何を話して言いか分からなくなる。
いつもなら撮影するために来ているから、話はつきないのに。
沈黙に耐えきれず、瑠璃子は明日の話を始めた。
「今日は撮れなかったから、明日だね」
「ああ・・・、それが明日からちょっと実家に帰らないといけなくなったんだ」
どうしたの?なんて個人的なことまで聞いていいのか迷う。
「実は姉貴が出産したんだけど、難産の末、帝王切開になって、赤ちゃんは無事なんだけど、姉貴の体調が思わしくないって。だから、一度見舞いに行ってこようと思って・・・」
「そ、そうだったんだ。それは心配だね」
「それから、僕、来週から映画のインカレサークルに入ってみようと思ってるんだ」
「インカレサークル?」
「ああ、色んな大学の人が集まって作るサークル。そこで自主製作映画を一緒に作りたいと思ってるんだ。かなりマニアックな人達が集まるらしいから、自分一人でやってるより、ずっと学ぶことが多いと思う」
野崎は自分の中に生まれた嫉妬という醜い感情から逃れるために、先手を打った。
より映像の世界に没頭できるところに自分の身を置くことにしたのだ。
これで、もう分不相応な感情に悩まされることもなくなる。
「へ、へえ・・・、すごいね・・・」
野崎のためを思うなら、応援するべきだ。
そう思うのに、言葉が出ない。
「それで、この作品なんだけど、もうほとんど予定の分は撮れたから、今まで撮った分で作ってみようと思う」
「えっ・・・」
「だから、今日でお邪魔するのも最後です。あ、作品が出来たらDVDに焼いて持ってきますね。もちろん新田君の分も」
そう言う野崎の言葉が瑠璃子の耳に入って来ない。
えっ・・・、今日で終わり?
そんな急に・・・。
心の準備が出来てないよ・・・。
「初めての作品だけど、笠原さんと新田君のおかげで何とか完成できそうだから、楽しみにしてて。じゃあ」
そう言うと野崎は立ち上がり部屋を出て行った。
瑠璃子は言葉が見つからず、野崎の後ろをついて歩くことしかできない。
「あら、もうお帰り?」
「お邪魔しました」
「また、いつでも遊びにきてね」
紗栄子の明るい声に「ありがとうございます」と答え、野崎は瑠璃子の家を出て行った。
瑠璃子は、玄関先で「じゃあ、また・・・」とだけ言った。
去っていく野崎の後姿を見ているだけで、心が苦しくて仕方がない。
本当は今すぐ追いかけて行って、その背中を抱きしめたい。
だけど、そんなことできるはずがない・・・。
そして明日から野崎はもう来ない・・・。
それだけじゃない。
もう、野崎とは何の繋がりもなくなってしまった。
「瑠璃子、夕ご飯何がいい?」
紗栄子に問われても何も答えることができない。
「どうしたの、瑠璃子。顔色が悪いわよ」
「なんでもない・・・」
「嘘ついたってダメ。何かあったのね、野崎君と」
「な、何も・・・」
ここにお母さんがいなければよかった。
そしたら思いきり大声で泣けたのに・・・。
いつもなら撮影するために来ているから、話はつきないのに。
沈黙に耐えきれず、瑠璃子は明日の話を始めた。
「今日は撮れなかったから、明日だね」
「ああ・・・、それが明日からちょっと実家に帰らないといけなくなったんだ」
どうしたの?なんて個人的なことまで聞いていいのか迷う。
「実は姉貴が出産したんだけど、難産の末、帝王切開になって、赤ちゃんは無事なんだけど、姉貴の体調が思わしくないって。だから、一度見舞いに行ってこようと思って・・・」
「そ、そうだったんだ。それは心配だね」
「それから、僕、来週から映画のインカレサークルに入ってみようと思ってるんだ」
「インカレサークル?」
「ああ、色んな大学の人が集まって作るサークル。そこで自主製作映画を一緒に作りたいと思ってるんだ。かなりマニアックな人達が集まるらしいから、自分一人でやってるより、ずっと学ぶことが多いと思う」
野崎は自分の中に生まれた嫉妬という醜い感情から逃れるために、先手を打った。
より映像の世界に没頭できるところに自分の身を置くことにしたのだ。
これで、もう分不相応な感情に悩まされることもなくなる。
「へ、へえ・・・、すごいね・・・」
野崎のためを思うなら、応援するべきだ。
そう思うのに、言葉が出ない。
「それで、この作品なんだけど、もうほとんど予定の分は撮れたから、今まで撮った分で作ってみようと思う」
「えっ・・・」
「だから、今日でお邪魔するのも最後です。あ、作品が出来たらDVDに焼いて持ってきますね。もちろん新田君の分も」
そう言う野崎の言葉が瑠璃子の耳に入って来ない。
えっ・・・、今日で終わり?
そんな急に・・・。
心の準備が出来てないよ・・・。
「初めての作品だけど、笠原さんと新田君のおかげで何とか完成できそうだから、楽しみにしてて。じゃあ」
そう言うと野崎は立ち上がり部屋を出て行った。
瑠璃子は言葉が見つからず、野崎の後ろをついて歩くことしかできない。
「あら、もうお帰り?」
「お邪魔しました」
「また、いつでも遊びにきてね」
紗栄子の明るい声に「ありがとうございます」と答え、野崎は瑠璃子の家を出て行った。
瑠璃子は、玄関先で「じゃあ、また・・・」とだけ言った。
去っていく野崎の後姿を見ているだけで、心が苦しくて仕方がない。
本当は今すぐ追いかけて行って、その背中を抱きしめたい。
だけど、そんなことできるはずがない・・・。
そして明日から野崎はもう来ない・・・。
それだけじゃない。
もう、野崎とは何の繋がりもなくなってしまった。
「瑠璃子、夕ご飯何がいい?」
紗栄子に問われても何も答えることができない。
「どうしたの、瑠璃子。顔色が悪いわよ」
「なんでもない・・・」
「嘘ついたってダメ。何かあったのね、野崎君と」
「な、何も・・・」
ここにお母さんがいなければよかった。
そしたら思いきり大声で泣けたのに・・・。
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