もう君を絶対に離さない

星野しずく

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もう君を絶対に離さない.73

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 野崎の方はそうでも、美子の気持ちは変わっていない。

 野崎のことはあくまで恋愛対象として見ている。

 ずっと家政婦でいいわけがない。



「ねえ、耕太・・・、今日泊ってっていい?」

「はあ、何でだよ・・・。布団ないぞ」

 野崎の答えは男性の友人に対するものと変わりがない。

 もはや異性とも思われていないのだろうか・・・。



「こたつで寝るから・・・」

「ふうん・・・、別にいいけど。俺、まだ作業があるから、明かり消せないよ」

「いい・・・、耕太の作業が終わるまで静かにしてる」

「自分ちに帰って早く寝ればいいのに・・・」

 野崎は美子の意図するところが分からず、そんなことを呟いた。



「お風呂借りていい?」

「好きな様に使えよ・・・」

 野崎はPCに向かったまま振り向きもせずに答えた。

 美子はグッと唇を噛みしめる。

 すでに野崎の部屋には着替え用の美子の何着も置いてある。

 バスタオルと着替えを持って美子は風呂場に向かった。



 美子の養成所の生徒たちは、やはりプロを目指しているだけあって、野崎の持っている熱量に近いものをもっている。

 だから、気兼ねすることなく自分の表現したいものを伝えることが出来た。

 そんなわけで、作品の編集作業には一層熱が入る。

 美子が風呂に入っている間も、野崎はPCにかじりついて、もはや美子の存在など忘れかけていた。



「耕太・・・」

「うわぁ!びっくりした!急に声掛けるなよ」

 野崎が振り返ると、美子はまだ髪を濡らしたまま、バスタオルを巻いてそこに立っていた。



 ん・・・、この状況・・・。

 笹原さんの時と何だか似てないか・・・?

 野崎も少しは学んだようだ。



「耕太・・・、私、やっぱり我慢できない・・・。耕太のそばにいられるだけで十分幸せだって自分に言い聞かせてきた。でも、作品を作ってる耕太はほんとに格好よくて・・・、そばにいればいるほど、耕太のことどんどん好きになっちゃって・・・」

 美子はそこで一旦言葉を切った。

「耕太・・・私のこと抱いてくれない・・・?」

 美子は巻いていたバスタオルをはらりと床に落とした。



「バカ野郎っ!!」

 野崎はすぐにバスタオルを拾い上げると美子の体に巻き付けた。

「もう来なくていい!」

「えっ・・・」



「服を着て、お前の荷物も全部持って帰れ。それから、もう家には来なくていい・・・」

「耕太・・・、そんなに私のこと嫌い?」

「嫌いじゃないよ。お前には色々助けてもらったし、ありがたいと思ってる。だけど、俺はお前のことは抱けない」

「それは・・・、やっぱり好きな人がいるから?」

「そんなことはお前に答える必要はないだろう。さあ、出てってくれ。俺はやらなきゃいけないことが山ほどあるんだ。その邪魔をしないでくれ」

 野崎はそう言うと再びPCに向かい、美子のことを振り返ることはなかった。
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