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旦那様、私をそんな目で見ないでください!12
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「ねえ、雛、お話し分かんなくてつまんない」
そうだ、雛のことをすっかりほったらかしにしていた。
「ごめんごめん。凛太朗、ほら、雛の相手してやってくれよ」
「ほいほ~い。雛ちゃん、今日は、何する?」
「えっとね~、最初はオセロ!」
二人は楽しそうに話しながら子供部屋へと消えていった。
「美里、また私から連絡するから」
「うん、分かった」
二人もようやく落ち着いたようだ。
「響介さん、姉のことをよろしくお願いします」
美里が深々と頭を下げる。
「いやいや、お世話してもらうのは僕たちの方ですから」
響介はすっかり恐縮する。
「じゃあ、失礼します」
美里はそう言うと、静音に見送られて帰っていった。
「すみませんでした、お騒がせして」
「いや、それはいいんだけど。妹さんにも伝えてなかったんだね」
「はい、変な心配をさせたくなかったので」
静音はそう言うと、少し涙ぐんでいるようだった。
「大丈夫ですか?」
響介が静音の肩に触れようとした瞬間、静音が響介の胸にふわりと身体をあずけてきた。
えっ、えっ?響介は何が起こったのか理解できない。
そして、そのまま静音の唇が響介の唇に重なった。響介の身体は固まったまま動くことが出来ない。その間に、静音の腕は響介の背中にまわされた。何年振りか分からない女性とのキス。
柔らかい体の感触と、ほのかに立ち昇る甘い香りは、否が応でも響介の男の部分を刺激する。
しかし、響介はそのキスに自分から応じることはしなかった。
響介は、しばらくその甘美な世界に身をゆだねていたが、持ち前の強い理性で何とか我に返った。響介はそっと静音の両肩ををつかんで体を離した。
「ご、ごめんなさい」
静音は伏し目がちにつぶやいた。
このキスの意味が分からない。
「こ、こういうことは困ります」
響介は決して怒っているわけではないが(男性としては、綺麗な女性にキスされて正直、嫌な気はしていない)、こういうことから男女の関係になってしまうことを恐れていた。つまり、雛のことを第一に考えての結論だ。だから、極力優しい口調で言ったつもりだ。
しかし、静音はかなりショックを受けた様子で響介のことを見つめ返した。
「すみません、妹が急に来て、またご迷惑ばかりかけていると思ったら気が動転してしまって。私、ここを出ていかなくてはならないかもしれないと思って、すごく不安になってしまって…」
不安になったからって、男性に抱きついてキスをしたらとても危険ですよ、と響介は言いたかった。しかし、今は彼女を安心させることが第一だ。
「いえいえ、なにも迷惑じゃありませんよ。静音さんがうちにいてくれるだけで、それだけでいいんです。うちには静音さんが必要なんです。」
何だか熱烈な告白をしているような状況になってしまい、響介は思わず顔を赤らめる。
「そ、そうですか。それを聞いて安心しました」
静音は少し落ち着いた様子でそう言った。
ガタンという音が聞こえて、後ろを振り返ると、そこには二階にいるはずの凛太朗が立っていた。
「なんだか盗み聞きみたいになっちゃったけど、まずかった?」
「…!な、なんでお前がここにいるんだ」
「いや、雛ちゃんが今度はパズルがしたいっていうから、取りに来たんだよ。そしたら、お二人がよろしくやってるのが目に入ったから、静かにしてたって訳」
「バ、バカっ!そういう時は、ひとこと声をかけろ!」
響介はとっさに唇を拭った。
「あ、そう?キスしてる最中に、もしもしって?」
「…っ!あ、あれは、たまたまそうなっただけで、そういうんじゃない」
「そういうんじゃないキスってあるのかな?ねえ、静音さん」
凛太朗は話の矛先を静音に向ける。
「こらっ、静音さんを困らせるんじゃない。お前には関係ないことだ。口出しするな!」
「まあ、確かに。二人の問題ですから、俺には関係ないけど…。響介がキスねえ…」
「うるさい!違うって言ってるだろう」
「はいはい、分かりました」
「早くパズルを持って二階に行け!雛が待ってるだろう」
響介はこの場をどう取り繕えばいいのか分からず、ヤケクソになる。
「うわ、なに、その言い方。俺がわざわざ雛ちゃんの遊び相手しにきてやってるってこと忘れてない?」
「お前が好きで来てるんだろう」
「そんな言い方ある?まあ、好きで来てるんだけどさ。ただ、俺が好きなのは響介だけどね」
「気持ち悪いこと言ってないで、早く行かねえと、本当に怒るぞ」
「おーこわ。はいはい、行きますよ」
これ以上からかうと、響介が本当にキレそうだと見極めた凛太朗はパズルを持って二階に退散した。
そうだ、雛のことをすっかりほったらかしにしていた。
「ごめんごめん。凛太朗、ほら、雛の相手してやってくれよ」
「ほいほ~い。雛ちゃん、今日は、何する?」
「えっとね~、最初はオセロ!」
二人は楽しそうに話しながら子供部屋へと消えていった。
「美里、また私から連絡するから」
「うん、分かった」
二人もようやく落ち着いたようだ。
「響介さん、姉のことをよろしくお願いします」
美里が深々と頭を下げる。
「いやいや、お世話してもらうのは僕たちの方ですから」
響介はすっかり恐縮する。
「じゃあ、失礼します」
美里はそう言うと、静音に見送られて帰っていった。
「すみませんでした、お騒がせして」
「いや、それはいいんだけど。妹さんにも伝えてなかったんだね」
「はい、変な心配をさせたくなかったので」
静音はそう言うと、少し涙ぐんでいるようだった。
「大丈夫ですか?」
響介が静音の肩に触れようとした瞬間、静音が響介の胸にふわりと身体をあずけてきた。
えっ、えっ?響介は何が起こったのか理解できない。
そして、そのまま静音の唇が響介の唇に重なった。響介の身体は固まったまま動くことが出来ない。その間に、静音の腕は響介の背中にまわされた。何年振りか分からない女性とのキス。
柔らかい体の感触と、ほのかに立ち昇る甘い香りは、否が応でも響介の男の部分を刺激する。
しかし、響介はそのキスに自分から応じることはしなかった。
響介は、しばらくその甘美な世界に身をゆだねていたが、持ち前の強い理性で何とか我に返った。響介はそっと静音の両肩ををつかんで体を離した。
「ご、ごめんなさい」
静音は伏し目がちにつぶやいた。
このキスの意味が分からない。
「こ、こういうことは困ります」
響介は決して怒っているわけではないが(男性としては、綺麗な女性にキスされて正直、嫌な気はしていない)、こういうことから男女の関係になってしまうことを恐れていた。つまり、雛のことを第一に考えての結論だ。だから、極力優しい口調で言ったつもりだ。
しかし、静音はかなりショックを受けた様子で響介のことを見つめ返した。
「すみません、妹が急に来て、またご迷惑ばかりかけていると思ったら気が動転してしまって。私、ここを出ていかなくてはならないかもしれないと思って、すごく不安になってしまって…」
不安になったからって、男性に抱きついてキスをしたらとても危険ですよ、と響介は言いたかった。しかし、今は彼女を安心させることが第一だ。
「いえいえ、なにも迷惑じゃありませんよ。静音さんがうちにいてくれるだけで、それだけでいいんです。うちには静音さんが必要なんです。」
何だか熱烈な告白をしているような状況になってしまい、響介は思わず顔を赤らめる。
「そ、そうですか。それを聞いて安心しました」
静音は少し落ち着いた様子でそう言った。
ガタンという音が聞こえて、後ろを振り返ると、そこには二階にいるはずの凛太朗が立っていた。
「なんだか盗み聞きみたいになっちゃったけど、まずかった?」
「…!な、なんでお前がここにいるんだ」
「いや、雛ちゃんが今度はパズルがしたいっていうから、取りに来たんだよ。そしたら、お二人がよろしくやってるのが目に入ったから、静かにしてたって訳」
「バ、バカっ!そういう時は、ひとこと声をかけろ!」
響介はとっさに唇を拭った。
「あ、そう?キスしてる最中に、もしもしって?」
「…っ!あ、あれは、たまたまそうなっただけで、そういうんじゃない」
「そういうんじゃないキスってあるのかな?ねえ、静音さん」
凛太朗は話の矛先を静音に向ける。
「こらっ、静音さんを困らせるんじゃない。お前には関係ないことだ。口出しするな!」
「まあ、確かに。二人の問題ですから、俺には関係ないけど…。響介がキスねえ…」
「うるさい!違うって言ってるだろう」
「はいはい、分かりました」
「早くパズルを持って二階に行け!雛が待ってるだろう」
響介はこの場をどう取り繕えばいいのか分からず、ヤケクソになる。
「うわ、なに、その言い方。俺がわざわざ雛ちゃんの遊び相手しにきてやってるってこと忘れてない?」
「お前が好きで来てるんだろう」
「そんな言い方ある?まあ、好きで来てるんだけどさ。ただ、俺が好きなのは響介だけどね」
「気持ち悪いこと言ってないで、早く行かねえと、本当に怒るぞ」
「おーこわ。はいはい、行きますよ」
これ以上からかうと、響介が本当にキレそうだと見極めた凛太朗はパズルを持って二階に退散した。
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