ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.10

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 桔平とキスした時の心の震え…。

 桔平に触れられた場所が彼の手を鮮明に覚えている。

 もっと触れられたい、もっと触れたい…。

 やっぱ、好き…。



 許されない恋ということは分かってる。

 でも誰かのものになるのを指をくわえて見ているのなんて嫌だ…。

 桔平は画家になるくらいだから常識からは外れている部分が多い。



 女性関係もだらしない。

 だから誰か一人のものになるとは限らない。

 でも絶対にないとは言い切れない。



「寝よっかな~」

 十一時過ぎ…、母はまだ帰ってこない。

 咲那は着替えてベッドに横になった。

 目を閉じると桔平の息遣いが蘇る。

 それが余りにも鮮明で、体の芯が疼いて熱くなる。



「ああ、もう!」

 大人っていいな…。

 こういう時、お酒とか飲んで寝ちゃえるんだもん…。

 悶々とした気持ちのを持て余し、何度も寝返りを打って、咲那は眠りについた。



 アラームの音で目が覚めた。

 日曜の朝十時。

 今日は昼から写真部で出かけることになっている。

 咲那自身はそんなつもりはないのだが、こうして写真部を選んでしまうのは、やっぱり父洋平の影響なのだろうか。



 ベッドから起き上がると少し痛みを感じた。

 それが桔平とつながったしるしであることに、いまさらながら喜びをかみしめる。



「おはよ~」

「おはよ、あ、咲那はトーストでいい?あと、お弁当はいる?」

 昨晩遅かったはずのまりあは、今日もこれから仕事に出かけるのだろう…。

 忙しそうに家事をこなしている。



「うん、トースト。お弁当はいらない」

 咲那は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。



「お母さん今日も仕事?」

「うん、秋物の方がね…、もうあとちょっとで終わりそうなんだけど」

「ふ~ん」



 ファッションが好きで、デザインもショップもどちらも出来ている今の状態がまりあにとっては最高に幸せなのだろう。 

 仕事と言えば仕事だが、まりあにしてみれば好きなことをやっているだけなのだ。

 休みなどなくても本人はまったく気にならないのだが、咲那は口には出さないけれど、やっぱり寂しい時がある。

 今はそんな風に思うこともかなり減ったけれど…。



「咲那たちは今度の写真甲子園の撮りに行くんでしょ?」

「うん」

「がんばってね」

「ありがと…」



 咲那の通う高校の写真部は毎年何らかの大会で入賞者を出している。

 それには筋金入りの写真好き顧問菊池祥聖の存在が少なからず影響している。

 そして、偶然にも菊池先生は父洋平の大学時代の後輩だったりする。
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