ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.13

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 桔平は絵を描いてはいなかった。

 女性に覆いかぶさるような格好でおそらくキスをしているのだろう。

 桔平の手が女性の身体をまさぐっている…。



 咲那は咄嗟に窓から飛びのいた。

 来なければよかった…、覗かなければよかった…。

 想像はしていたし、そんなことは桔平が普段からしていることは分かっているつもりでいた。

 しかしその現場を実際に目にするのは想像などとは比べ物にならないほどの衝撃を咲那に与えた。



 芸術家だもの…、ああゆうのもすべて芸の肥やしになるんだから仕方ないんだ…。

 そして自分もそれを利用した一人だ。



 咲那は音をたてないよう気をつけて自転車を転がした。

 敷地から少し離れたところで自転車に乗り家に向かった。



 寂しさを紛らわすために軽い気持ちで桔平を頼った。

 その結果、あんな現場を見る羽目になってしまった。

 全部自分の責任なんだけど…、やっぱりやり切れない。



 そして家にはあっという間についてしまった。

 駐車場には既にまりあの車が停まっている。

 もう帰って来ちゃったのか…。

 こういう時に限っていつもより母の帰宅は早かった。

 何しろ五時ちょっと過ぎに出かけて十分で桔平の家に到着して、ほぼそのままとんぼ返りしたわけで、今はまだ五時半を少し過ぎたばかりだ。



 はぁ~…、今は誰にも会いたくないのに…。

 いて欲しい時にいなくて、いて欲しくない時にいるって…。

 本当に人生はままならない。



「ただいま…、早かったんだね」

 咲那は観念して家に入った。

「咲那はどっか出かけてたの?」
 
 まりあはエプロンの紐を結びながら尋ねた。

「うん、暇だったからちょっとサイクリング?」

「あら、健康的」

 のん気な返答とは裏腹に、さっきの光景が頭をよぎって咲那は苦笑する。



「今日はなに作るの?手伝おうか」

 何かしていないと桔平のことばかり考えてしまう。

「あら、ほんと?今日はねタコライスにしようと思って」

 まりあは最近南国系のメニューにハマっているのだ。

「やった!私タコライス好き」

「じゃあ、私ミートソース作るから、咲那はトマトとレタスとアボカドを切ってくれる?」

「おっけーい」

 ダコライスの出来は上々で久しぶりにまりあと二人の夕食を楽しんだ。



「ところで写真はうまく撮れた?」

 夫の洋平のこともあり、咲那がどんな写真を撮るかはまりあの関心事のひとつだった。

 まりあに仕事がなかったらもっと詮索されるところだろうけど、なにしろ彼女の毎日は目が回るほど忙しい。

 だから、こうしてたまに顔を突き合わせた時にはうるさくない程度に写真部での活動の様子や顧問の菊池先生のことを聞いてきたりする。



「うん。まだプリントしてないから何とも言えないけど、お祭りだったから、お神輿とか法被姿とか、被写体には困らなかったよ」

「へえ、それは出来上がりが楽しみね」
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