29 / 86
ケダモノのように愛して.29
しおりを挟む
これかだらお父さんが帰ってくるのは疲れるのだ。
ずっと日本にいれば一々騒がれることもないのに、海外にいるせいで帰って来るたびに騒がれるのだ。
「ね、ね、猪俣からお願いしてさ、俺と閏間の写真見てもらえないかな?今度の大会に出すやつ、俺まだ決められないんだ」
「そ、そんなの分かんないよ。まだ帰って来てないんだし…。帰ってくる時は何か用事があるから帰ってくるんだから」
「そ、そっか。そりゃそうだよな。でも、もしも、もしもほんの一時間でもいいから会えるなら会いたい」
参ったな~、もう本当に面倒くさい。
滝口やひなたにしてみれば、こんなチャンスは逃したくないに決まってる。
だけど、帰って来たって家族でゆっくりすることすら無いのに、とてもそんな時間がとれるとは思えない。
変に期待されても、叶わなかったときが気の毒だ。
「それは大丈夫だ」
「き、菊池先生?何が大丈夫なんですか」
「いやあ、僕ね、あれから結構頻繁にツイッターのダイレクトメッセージで話してるんだ。それでね、今度はどんな予定なんですかって聞いたらさ、特に仕事は入れてないらしいんだ」
「ええっ、まさか!お父さんが仕事以外の理由で日本に帰ってくるなんて信じられない」
娘のくせになんてことを言うのだと思いながらも、そう言わずにはいられなかった。
「なんでも、向こうで虫歯が悪化したらしくて。だけど、向こうは保険がきかないから日本で治療するために帰国するんだって」
「え、ちょっと、そんな理由…」
咲那は呆れるやら恥ずかしいやらで、みんなの方を見れない。
「い、いや、保険を舐めちゃいかんぞ。下手をすると歯の治療にウン百万かかる場合だってあるんだからな」
「そ、そうなんですか…」
咲那はまだ複雑な気持ちのままだった。
お母さんは知ってるのかな?いや、知らないはずだ。
だって、仕事の調整がどうのって言ってたくらいだから。
もう、本当に人騒がせなんだから!
「すまなかった…、私がつい出過ぎたまねをしてしまったせいで、ご家族の調和を乱してしまった…」
「いえ、いいんです。非常識なのはうちの父ですから…」
「それでだ…、実はその歯の治療の合間に洋平先輩は私と会ってくださることになってる」
「ええっ!」
なぜ咲那が驚かなければならないのか分からないけれど、滝口とひなたと一緒に声をあげていた。
「すまん、猪俣。勝手に約束してしまった。ご自宅にお邪魔することになってるんだ」
「はぁ…、そうですか」
「で、その時に滝口と閏間も一緒にお邪魔することになってる」
「えええっ!!」
滝口とひなたは手を取り合って喜んでいる。
「他の部員には内緒だぞ。全員連れて行ってやりたいところだが、そう大勢でお邪魔するわけにはいかない。だから、お前たちはみんなの代表だ」
「はい!」
咲那はひとり、目の前で繰り広げられる光景をぼんやりと眺めていた。
もうやけくそだ…。
好きなようにしてください。
可哀そうなお母さん…。
今頃スタッフやお店の店員さんと調整の真っ最中だろう。
ずっと日本にいれば一々騒がれることもないのに、海外にいるせいで帰って来るたびに騒がれるのだ。
「ね、ね、猪俣からお願いしてさ、俺と閏間の写真見てもらえないかな?今度の大会に出すやつ、俺まだ決められないんだ」
「そ、そんなの分かんないよ。まだ帰って来てないんだし…。帰ってくる時は何か用事があるから帰ってくるんだから」
「そ、そっか。そりゃそうだよな。でも、もしも、もしもほんの一時間でもいいから会えるなら会いたい」
参ったな~、もう本当に面倒くさい。
滝口やひなたにしてみれば、こんなチャンスは逃したくないに決まってる。
だけど、帰って来たって家族でゆっくりすることすら無いのに、とてもそんな時間がとれるとは思えない。
変に期待されても、叶わなかったときが気の毒だ。
「それは大丈夫だ」
「き、菊池先生?何が大丈夫なんですか」
「いやあ、僕ね、あれから結構頻繁にツイッターのダイレクトメッセージで話してるんだ。それでね、今度はどんな予定なんですかって聞いたらさ、特に仕事は入れてないらしいんだ」
「ええっ、まさか!お父さんが仕事以外の理由で日本に帰ってくるなんて信じられない」
娘のくせになんてことを言うのだと思いながらも、そう言わずにはいられなかった。
「なんでも、向こうで虫歯が悪化したらしくて。だけど、向こうは保険がきかないから日本で治療するために帰国するんだって」
「え、ちょっと、そんな理由…」
咲那は呆れるやら恥ずかしいやらで、みんなの方を見れない。
「い、いや、保険を舐めちゃいかんぞ。下手をすると歯の治療にウン百万かかる場合だってあるんだからな」
「そ、そうなんですか…」
咲那はまだ複雑な気持ちのままだった。
お母さんは知ってるのかな?いや、知らないはずだ。
だって、仕事の調整がどうのって言ってたくらいだから。
もう、本当に人騒がせなんだから!
「すまなかった…、私がつい出過ぎたまねをしてしまったせいで、ご家族の調和を乱してしまった…」
「いえ、いいんです。非常識なのはうちの父ですから…」
「それでだ…、実はその歯の治療の合間に洋平先輩は私と会ってくださることになってる」
「ええっ!」
なぜ咲那が驚かなければならないのか分からないけれど、滝口とひなたと一緒に声をあげていた。
「すまん、猪俣。勝手に約束してしまった。ご自宅にお邪魔することになってるんだ」
「はぁ…、そうですか」
「で、その時に滝口と閏間も一緒にお邪魔することになってる」
「えええっ!!」
滝口とひなたは手を取り合って喜んでいる。
「他の部員には内緒だぞ。全員連れて行ってやりたいところだが、そう大勢でお邪魔するわけにはいかない。だから、お前たちはみんなの代表だ」
「はい!」
咲那はひとり、目の前で繰り広げられる光景をぼんやりと眺めていた。
もうやけくそだ…。
好きなようにしてください。
可哀そうなお母さん…。
今頃スタッフやお店の店員さんと調整の真っ最中だろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる