ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.41

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 ううん、本当はもっと言って欲しい…。

 私で感じてるって聞かせてほしい。



「照れるなよ」

 桔平は咲那を抱き寄せると、チュッ、チュッ、とキスをしてきた。



「や、やだ…、もう、ふざけないで」

「ふざけてない」

 また耳元で囁く。



 ああ、もう!

 咲那は完全にお手上げだった。

 最初から太刀打ちなどできるはずなどなかったけれど。

 戯れるように与えられるキスでさえ、咲那にとっては一々感じてしまう行為なのだから。

 こんなに幸せでいいのかな?



「咲那…」

 愛しむようにくちづけられて咲那はもう脳みそまで蕩けてしまいそうだ。

 しかしいい加減帰らないと母が帰ってくる。



「桔平、もう帰らないと…」

「ええ~、まだいいだろ?」

 桔平はなぜだか咲那のことを中々離してくれない。



「あまり遅いとお母さん来ちゃうかもしれないよ」

 それは本当にあり得ることで、桔平はようやく咲那のことを解放してくれた。



「今日は送っていくよ。あんなことがあったし。水谷のことまりあさんに話しておきたいから」

「…うん」



 そうだった。

 水谷さんのことがあったんだ…。

 あまりに濃厚な交わりのせいで、水谷さんのことなどすっかり頭の中から消えていた。

 すっかりぐしょぐしょになってしまった体をシャワーで流し、二人は急いで身支度を整えると咲那の家へと向かった。



「ちわ~っす」

「ただいま、お母さん」

「桔平さん、いつも咲那がお邪魔してばっかりで、本当にお世話になってます」

「いえいえ、咲那も大きくなったから、最近ではこっちのほうが色々と世話になってますよ」

 桔平は咲那の方にニヤけた視線を向ける。



 ちょ、ちょっと、何言い出してんの。

 さっきまで抱き合ってたのに、よく平気でそういうことが言えるわね。

 咲那は自分自身がうっかり変なことを言ってしまわないか気が気でないというのに…。



「ご飯うちで食べてくでしょ」

「いいんすか?俺めっちゃ腹減ってんすよ、な、咲那もだよな」

「う、うん…」

 もう、また私を巻き込まないでよ…。



 まりあに促され、すでに料理が並んでいる食卓に移動した。

「うまそう!いただきます」

 桔平は言葉通り、凄い勢いで料理を平らげた。



「桔平さんが来るって分かってたらもっとたくさん用意しておいたのに。ごめんなさいね、いつも二人だから余り量は作らないの」

「うまいから、全然問題ないっす」

 桔平はご飯だけは大盛にしてもらって、お腹の方は満たされた様だ。
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