ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.46

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 ヤバい、ドキドキしてきた…。

 めっちゃかっこいい。

 ほんとやめて欲しい…。

 本人に自覚がないのが余計にたちが悪い。



「は~い」

 咲那はわざとダルそうに答えると、バイクにまたがり桔平の体にそっと手を回した。

「もっとしっかり捕まらないと落ちるぞ」

 桔平は咲那の腕をギュッと引っ張った。



 体と体がピッタリと密着して、桔平の煙草の香りが鼻をくすぐった。

 好き、桔平…。

 咲那は桔平の広い背中に顔を押しつけた。



 バイクは風を切って銀次さんのお店までの道を走った。

 時間にしておよそ五分の短いツーリングだった。

 それでも咲那にとっては恋人気分を満喫できる幸せな時間だった。



 銀次の店の前に到着すると、すでに水谷くんは店内に連れ込まれているようで、中から声が聞こえてきた。

「お待たせ~」

「別に待ってないぞ」

「冷たいな~、咲那が協力してくれたおかげで水谷くんのこと無事捕まえられたってこと忘れてない?」

「いや、咲那ちゃんのことは待ってたぞ」

「つれないな~、本当は俺にも会いたかっただろう?素直になれよ」

 桔平は銀次の首に腕を回すと頬を摺り寄せた。



「キモイ、キモイ!お前には付き合ってられん。これから水谷くんと真剣な話をするんだから、ちょっとそっちへ行ってろ」

 桔平は店の端に追いやられた。



 いかつい男たちに囲まれた中で水谷くんは刈谷さんの華麗な縄さばきで縛られたまま店の椅子にすわっていた。

 刈谷さんがさるぐつわを取ると、苦しそうな表情から一転、大声で泣きだしてしまった。



 怒り、情けなさ、やり切れない思い、恐怖、様々な感情が一気に押し寄せてきたのだろう。

 周りの大人たちは水谷くんが落ち着くのを辛抱強く待っていた。

 ようやく泣き声が小さくなったが、あまりに大声で泣いたせいでまだヒックヒックとしゃくりあげている。



「水谷くん、管理人の権限を使って勝手に色々と動かせてもらった。まあ、君はうちの店のバイトも無断欠勤してるんだから、それくらいは許してもらえるかな」

 水谷くんは黙ったまま、まだ鼻をすすっていた。



「で、結論から言うと、君は学校を辞めなくてもいいらしい」

「えっ…」

 水谷くんは初めてまともに銀次の方を向いた。



「君のご両親と電話で話したんだ。幸い親父さんの病状は最初思っていたほど悪くなかったらしい。で、もう少ししたら仕事に復帰できるということだ。お袋さんも気が動転してて、つい大学をやめて戻って来い何て言ってしまったことを後悔してたよ。水谷くんがせっかく自分で選んだ道なのにってね」

「そ…、それは本当なんですか?」

「まあ、俺が嘘つく必要なんてないし。何なら今電話してみたら?」

「い、いえ…、今はいいです」

 さすがにこんな面子が揃っている場所で、母親に電話をするのは憚られたようだ。



「これで、水谷くんは大学もやめなくていいし、バイトも今まで通り続けてもらいたいと思ってる。ただし、ひとつ問題が残ってる」

「はい…」

「そうだぞ~、咲那は君に襲われたせいで、心に深い傷を負っていま~す。さてこれをどうやって償ってくれるのかな」
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