ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.61

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 正直、助かったと思った。

 下手に桔平と話したりしたら、今の自分は絶対おかしくなる自信がある。

 桔平のように普段と変わりなく話すことなど不可能だ。

 夕食が終わった後も、洋平と桔平がリビングで話しているのには近寄らず、キッチンでまりあの片づけを手伝った。



「まりあから聞いたんだけど、裸婦はやめたんだって?」

「あ、ああ…。でも描いてるのは人物画だよ」

「何でまた?俺、お前の描く裸婦好きだったけどな」

「う~ん、兄貴も、その…、撮りたい被写体が変わってったりするだろ?」

「そりゃまあそうだけど、俺はそこの土地の人と風景だからな。場所はもちろん変わるけど根本的にはかわってないな」

「そうか…」

「だけど、そういう時って何かきっかけがあるもんだけど、何かその心境の変化みたいなのがあったのか?」



 やだ…、話が変な方向に行っちゃいそうな予感が…。

 キッチンからリビングで話している二人の話を盗み聞きしていた咲那は気が気ではない。



「心境の変化っていうか…、その…」

「何だ、本当に何かあったのか?困ったことがあったら何でも俺に言ってくれよ。どうせ、お前が手詰まりになって最後に駆け込んでくるのはうちなんだから」

「う、うん…」

「ああ?軽い気持ちで聞いてたら、本格的にヤバそうだな。傷は浅いうちのほうがいいぞ、ほら早く言っちまえ」



 ええ~、ここであの話をしちゃうの~。

 今、急にこの部屋から出たら何かわざとらしいし、かといってこのままここで聞いていたら、絶対巻き添えを食うにきまってるし…、どうしよう…、どうしよう…。

 うじうじと迷っているうちに、洋平の追求はどんどん強くなる。



「俺がいなくなってから助けてくれってうちに来ても、まりあしかいない。それじゃあまりあが大変だ。だったら俺がいるうちに何とかした方がいい」

「…う…、そうだけど…、その、まだはっきりしてないっていうか…」



 桔平がこんな煮え切らない態度を取ることは珍しいことだ。

 むしろ普段は洋平よりも行き当たりばったりで、ちゃらんぽらんなのだから。



「何だ、これか?」

 洋平は小指を立てて見せた。

「うん…、まあ…」



「おおっ、お前もついに年貢の納め時が来たか!こりゃあめでたい!!」

「まりあ、聞いたか!桔平にもついに決まった人ができたらしいぞ」

 洋平はまるで自分の手柄のように喜んでいる。



「まあ、本当?桔平君たら何にも言ってくれないなんて水臭いわ」

 まりあまでリビングに行ってしまい、ひとりキッチンに取り残された咲那はどこに行けばいいのか途方に暮れる。



 もうこれ以上聞いていられない…。

 いや聞きたくない…、佳乃さんとの間に子供ができたなんて…。

 だけど、咲那はその場から動くことが出来なかった。

 自分がいないところでその話をされる事の方が耐えられなかったから…。



「で、どんな人なんだ、そのお相手の女性は?」

「お相手っていうか、裸婦のモデルをしてもらってた子なんだよ。だけど、俺、今は裸婦はやめたから最近は会ってなかったんだ。それが最近になって急に連絡があって、その…、子どもができたって」
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