ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.68

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 だからといって、咲那が洋平に対してみんなと同じようなリスペクトの気持ちを持てるかと言われても、やっぱり無理だ。

 写真家「猪俣洋平」である前に、咲那にとってはやはり父親としての存在の方が大きいのだから。



 ひなたと滝口は緊張しながらも、さっそく自分たちの作品を広げて、洋平に意見を求めていた。

 咲那はなんとなく自分がその場にいるのは場違いなような気がして、ひとりキッチンでお茶の用意をしていた。

 まりあは仕事でまだ帰っていないから、どちらにしても咲那がやるしかないのだけれど。



 桔平、今頃何してるかな…。

 結局、妊娠の一件は片付いて…、元通りの生活になったはずなのに、咲那の気持ちは晴れない。

 それは、やはり桔平という男がさらに分からなくなってしまったからだ。



 ずっと近くにいたのに…。

 ずっと桔平だけを見てきたのに…。

 今さら諦めるなんてできない。

 それなのに桔平ときたら…あいかわらずちゃらんぽらんで…。

 でも…やっぱり好き。



 自分でもバカだと思う。

 でも、好きな気持ちは消えてくれないのだ。

 初めて抱かれたあの日。

 死ぬほど嬉しかった…。



 でも、それがバレるのが恥ずかしくて、ただセックスに興味があるようなふりをした。

 桔平の息遣い…、手の感触…、熱くて逞しい身体…、熱い舌、そして咲那の中に押し入ってくるあの感覚…、全てが狂おしいほどに愛しい。

 何度でも欲しい…。

 与えられるなら、何度でも…。



 キッチンの隣のリビングでは、洋平を囲んで、みんながワイワイと賑やかに語り合っている。

 その横で自分はこんな不埒なことを考えている。

 だけど、それは仕方ない…。

 彼らが写真に夢中なのと同じ位、いやそれ以上に咲那は桔平に夢中なのだから。



「お茶が入りましたよ~」

 咲那は頃合いを見計らって、リビングにお茶を運んだ。

「咲那~、もう感激だよ~」

 ひなたは頬を紅潮させ、すっかり興奮状態だ。

 一方の滝口も嬉しそうではあるものの、せっかく洋平に出会ったからには何かを得て帰ろうとしているらしかった。



「あの、この本棚の写真集とか、見せてもらってもいいですか」

「ああ、もちろん。構わないよ。どれでも好きなだけ見てくれ」

 滝口は気になるタイトルのものを大事そうに引っ張り出しては、机の上に広げて見ていた。

 菊池先生と洋平は昔話から、最近の様子まで、どれだけ時間があっても話は尽きないようだ。

 その横で、ひなたは二人の話に聞き耳を立てていた。



「ええっ!これって…」

 なぜか、滝口が一冊の本を開いたまま固まっていた。

 話に夢中の洋平と菊池先生は気づいていない様だ。

「どうしたの?」

 ひなたと咲那が近寄ろうとした瞬間、滝口はその本を慌てて閉じると後ろに隠してしまった。

「何してるの?」

「何でもない」

 ひなたに問われ、そう答えたものの、滝口の様子は明らかにおかしい。
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