ケダモノのように愛して

星野しずく

文字の大きさ
78 / 86

ケダモノのように愛して.78

しおりを挟む
「別に…、お前だって俺に会いたくて来てるんだろ」

「うわあ、自惚れてる…。言っとくけど、桔平があんまり悲しそうな声出すから仕方なく来てるんだからね」

「あっそ」



「まったく、いい大人なんでしょ。いい加減自分のことくらい理解しなさいよ」

「してるよ」

「してない。全然分かってない」

「何が分かってないんだよ」

「その失恋したって言うのも、怪しいわね。実はちゃんと告白してないんじゃないの」

 図星をつかれ、桔平はぐうっと唸る。



「本当にうるさいな、もう帰ってくれ」

「わかったわよ~、せっかく来てあげたのに。もう泣きついてきても、来てあげないからね」

 突然寝室から飛び出してきた女性と、盗み聞きをしていた咲那は鉢合わせしてしまう。
 


「あら、桔平、お客さんが来てるわよ」

 女性は寝室の桔平に向かって声を掛けた。

「もしかして、桔平が失恋したっていう彼女?」

「えっ…?」

 咲那にはその女性の言っている意味が全くわからない。



「私のことは気にしないでね、ただのセフレだから」

 そう言うと女性は軽やかな足どりで出て行ってしまった。

 ただのセフレって…、セフレ自体が自慢できることじゃないと思うんだけど…。

 桔平の周辺にいる女性は貞操観念が一般人とはかなりズレているようだ。

 ただ、そんなことより、彼女が言っていた桔平の失恋というのは何のことだろうか。



「桔平!」

 咲那はドスの利いた声でその名を呼んだ。

 今日は気のすむまで言いたいことを言って、聞きたいことを聞くまで帰らないと決めていた。

「さ、咲那…」

 桔平はTシャツに短パンという相変わらずだらしない姿でベッドに横たわっていた体を起こした。



「ちょっと、こっちに来て」

 咲那は有無を言わさぬ強い口調で桔平に指図した。

「なんで俺が命令されないといけないんだよ」

 ブツブツ言いながらも桔平は寝室から出てきた。



「ねえ、失恋って何よ」

「さあ…、俺は何も言ってないけど」

「さっきそこで全部聞いちゃたから、もう言い逃れは出来ないよ」

「お前…、そんな泥棒みたいなことするなよ」



「何だってするよ。桔平が本当のこと話してくれないから」

「俺のせいかよ…」

「そうだよ。全部桔平のせい」

「生意気言うな!」



 桔平は咲那の腕を引き寄せると、その口をふさいだ。

「ん、んんっ!」

 咲那は桔平の胸を思い切り突き飛ばした。



「もう誤魔化されないから。ちゃんと話すまで帰らない」

「何でだよ。お前は俺に抱かれたいだけなんだろう」



 桔平は再び咲那にキスをすると、今度は力強く抱きしめた。

 離れようとして暴れても、桔平の力には敵わない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...