ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.82

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 桔平に抱かれているだけで、感じて仕方ないのに、そんな要素が加わって、咲那は気が変になりそうだ。

 ただ声をあげつづけるだけの咲那を、桔平はゆっくりと優しく、そして時に激しくと緩急をつけた挿入で狂わせる。



「ああああっ、もう…、桔平…、あああっ…、お願い…、おかしくなる!」

「お前を狂わせたい…俺しか見えないように」
 
 そう言って桔平は再び咲那の中に欲望を放った。



「咲那…、咲那」

 桔平は咲那に激しくキスをした。

「お前のこと離さないけど…いいか?」

「…うん」



 信じられない様な言葉に、咲那はそれ以上何も言えなくてまた泣いてしまった。

 そんな咲那のことを桔平は優しく抱きめた。

 髪にキスをして、咲那が泣き止むまでずっと抱いていてくれた。



「もう、気がすんだ?」

 咲那はコクンとうなずいた。

 桔平は咲那を抱き上げるとシャワールームに行き体を洗ってくれた。

 色々なことがサッパリして、二人はソファに腰掛けている。

 桔平は咲那の手を取ると指を絡ませてキスをした。



「スペインには行かない」
 
 桔平の言葉は最小限だ。

 何で、とか、いいの、とか、本当、とか質問するほうがバカみたいに思えるくらいに。

 だけど、やっぱり聞きたいことはある。



「どうしてスペインに行こうと思ったの?」

「別にスペインじゃなくてもよかった…、日本、いや…咲那の前から消えたかった」

 消えたいなどという物騒な言葉に、咲那はドキッとして桔平の顔を見た。



「咲那の裸を…画を他人に見られたくないと思ったとき、自分の気持ちに気づいた。だから、だんだんと裸婦が描けなくなった」

「そんな…」

「それを聞けば、お前はきっと苦しむ…。だから、離れるしかないと思った」

「そ、そうだったの…」



「その頃は、お前への気持ちを吹っ切るために、好きでもない女と寝たりした。でも、やっぱり駄目だった。お前が目の前に現れると無性に触れたくて…、だけどそんなことしたらきっと止まらないってわかってたから…」

「えっ…!」



 桔平は一人で苦しんでいたのだ…。

 ほかの女性とそういうことをしていたのは、嫉妬していないかと言えばめちゃくちゃしてる。

 だけど、桔平が自分を本当に好きでいてくれたのだと思うと、そんな嫉妬心も少しだけ和らぐ。



「水谷のこともある。銀次にあとで聞いたんだが、水谷は俺の個展を見に行ってお前の画を見たらしい。知り合いが少ないあいつは、勝手にお前のことを心の拠り所にしていたようだ」

「…そんなことが」

 公の場に出るということは、たとえ画であっても自分の知らない所で人は勝手に自分のことを認知してしまうのだ。



「だけど、そんなことに屈して自分の描きたい絵を描かないなら、俺は何のために画家になったのか分からない。だから、俺はまた裸婦を描く。もちろん咲那のことも。お前はそれでも俺について来てくれるか?」

「私の事見くびらないでくれる?桔平を好きになったときから、そんな覚悟なんてとっくにできてるんだから」
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