ホストと女医は診察室で

星野しずく

文字の大きさ
22 / 67

ホストと女医は診察室で.22

しおりを挟む
「お母さん分かってる?私まだ開業したばっかりなんだよ。結婚なんて当分考えられないから」

「そう言わないで。会うだけでいいのよ。お父さんが仕事でお付き合いのあるコンサルティング会社の社長さんなんだけど、慶子のことを話したら一度会えないかって。年頃の息子さんがいらっしゃるんだって」

「も~う、なんで勝手に私のこと話すのよ」

「話すくらいいいじゃない。どちらにしても、お父さんの顔を立てるためにも会ってもらわないと困るわ。あなたのクリニックの開業資金、お父さんが出してくれたってこと忘れてないわよね」

「ちょっと、それとこれとは話が別でしょ。お金は仕事が軌道に乗ったらちゃんと返すんだし」

「い~え、別じゃありません。お父さんはお父さんでお仕事の繋がりでどうしても断れないことがあるのよ。そういう繋がりがあって、お仕事って回ってくるものでしょ」

「それはそうだけど。お見合いって結婚するためにするんでしょ?仕事と関係ないじゃない」

「だから、それは会うだけでいいのよ。別に会ったからって絶対結婚しなくちゃなんてお母さんだって思ってないわよ。会うだけで何か減るもんじゃないでしょ」

「それはそうだけど…」



 大学に大学院、そして開業の資金、全て両親、いや父が出してくれたのだ。

 全く納得していないけど、父の顔をつぶすわけにはいかない…らしい。

「分かったわよ。ホントに会うだけだからね」

「はいはい。じゃあ、日取りはまた連絡するわね」

 澄江は上機嫌で電話を切った。



 あ~あ、お見合いか~。

 慶子の父である町田敬三は三宮市民病院の院長をしている。

 町田家は代々医師の家系だ。

 慶子は一人っ子で、当然の様に医師の道を選んだ。

 尊敬する父と同じ職業に就くことを特に疑問に思ったことはなかった。

 そんな父には世話になるばかりで、恩返しになるようなことは何も出来ていない。

 もちろん、まだまだ現役の父はそんなことを望んではいないだろうし、必要ともしていないだろう。

 だからこそ、父からの頼みとなると慶子としては断ることが難しいのだった。



 父のことだから、無理に結婚させようなどとは思っていないことは分かっている。

 だから、自分が大人しく見合いをすればそれで丸くおさまるのだ。

 聖夜さんとのことがひと段落したと思ったらお見合いか…。

 もう、今は仕事だけで精一杯なのにな。



「あ~あ、今日一日何しようかな」

 ホストクラブという世界を体験した慶子は、自分が今まで生きてきた世界以外に楽しいことが無限にあるような気がしていた。

 そうだ、エステに行ってみようかな。

 慶子のクリニックは一応美容皮膚科の看板を掲げているわけで、その院長が綺麗であるにこしたことはない。

 慶子も最低限の肌ケアは行っているけれど、自分のことより患者さんの方を優先しているのが現状だ。

 自分のことはつい後回しにしていた。

 慶子はスマホを手にすると、早速評判の良いエステサロンに予約を入れた。



 ホストクラブに行かなくなった慶子は、また仕事漬けの毎日に戻っていった。

 変わったことといえば、あれから定期的にエステに行くようになったことくらいだ。

 おかげで、看護師たちから「先生、最近綺麗になりましたね」などと言われるようになった。

 医師の外見が美しくなることは、患者さんにも少なからず影響を与えているようで、以前よりも紹介や口コミで来てくれる患者さんが増えた。

 嬉しい誤算だったが、結果的により充実した日々を送ることができるようになったわけだ。

 そう、本来だったらそれが素直に嬉しいはずだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...