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ホストと女医は診察室で.46
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以前と違うと言えば、エステとネイルに通うのが日常に加わったことくらいだ。
こうして定期的に通うようになって初めて気づいたことがある。
エステは外側の美しさだけでなく、精神的な面にも大きく影響するということだ。
慶子自身、気持ちにゆとりができた様に感じるし、仕事でストレスを感じても以前ほどイライラしたりしなくなった。
看護師たちとのコミュニケーションもすこぶる円滑になり、クリニックの仕事は以前より格段に順調になった。
そんな自身の体験から、慶子は最近自分のクリニックにメディカルエステを併設させてはどうだろうと考えるようになった。
医療機関の看板のもとでエステを開業すれば、自分自身が感じているこの心身の充足感をより説得力を持ったものに出来るのではないかと。
しかし、ようやく美容皮膚科が軌道に乗り始めたばかりの今、新規の事業に回す時間も労力も資金も、自分一人では限界があることも感じていた。
アイディアが浮かんでもそれを実行できないもどかしさが慶子の頭を悩ませる。
そして今日は日曜日。
いつの間にか常連になってしまったエステサロンに予約時間ぴったりに到着した。
「いらっしゃいませ。町田様、お待ちしておりました」
慶子がいつも指名する春日さんがにこやかに出迎えてくれた。
施術が始まり、他愛もない世間話が交わされる。
「実はうちのお店、二号店が近々オープンする予定なんです」
「へえ…、それはおめでとうございます」
慶子は何の気なしに言った。
「オーナーが変わるんですけど、若くてすごく恰好いいんですよ。その上やり手で、今色んな業種のお店を次々にオープンさせてるんです」
「そうなんですか、すごいですね」
若くて恰好いいオーナーなんて、世の中にはたくさんいる。
慶子はどんな時でもちょっと気を許すとヒョイっと顔を出してくる「聖夜」という二文字を無理やり心の奥底に押し込んだ。
「この間は雑誌に紹介されたんですよ」
「へえ…」
慶子はわざと興味がないふりをした。
何となく嫌な予感しかしなかったから…。
「すみません…、こんな話興味ないですよね」
春日さんは慌てて話を切り上げた。
九十分の全身コースを終え、慶子は会計を済ませて店を出ていこうとしていた。
すると店のドアが開き、目の前に立っているのは間違いでなければ「聖夜」その人だった。
「せ、先生?え、見違えた…、うちのお客さんだったの?」
「人違いです」
慶子は聖夜の横をすり抜けて足早に店を飛び出した。
「ま、待って!」
すぐに追いつかれ腕を掴まれる。
「ちょっと、久しぶりに会ったのにそれはないんじゃない?」
「…」
慶子は蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れない。
「それにしても、どうしたのっていうくらい、その…綺麗になったね」
会っていなかったこの数カ月で何が彼女をこんなに変えたのだろう…。
やはり和希の存在が…。
そんな風に考えるのは自分らしくない。
だけど慶子のことになると、自分は冷静でいられないようだ…。
そんな聖夜の心情など知るはずがない慶子は聖夜に心を乱されないよう必死で自分を守ろうとした。
相変わらず口がうまいんだから…。
慶子は聖夜の方を出来るだけ見ないようにした。
「離してください、人を呼びますよ」
慶子は声が震えそうになるのを必死でこらえた。
こうして定期的に通うようになって初めて気づいたことがある。
エステは外側の美しさだけでなく、精神的な面にも大きく影響するということだ。
慶子自身、気持ちにゆとりができた様に感じるし、仕事でストレスを感じても以前ほどイライラしたりしなくなった。
看護師たちとのコミュニケーションもすこぶる円滑になり、クリニックの仕事は以前より格段に順調になった。
そんな自身の体験から、慶子は最近自分のクリニックにメディカルエステを併設させてはどうだろうと考えるようになった。
医療機関の看板のもとでエステを開業すれば、自分自身が感じているこの心身の充足感をより説得力を持ったものに出来るのではないかと。
しかし、ようやく美容皮膚科が軌道に乗り始めたばかりの今、新規の事業に回す時間も労力も資金も、自分一人では限界があることも感じていた。
アイディアが浮かんでもそれを実行できないもどかしさが慶子の頭を悩ませる。
そして今日は日曜日。
いつの間にか常連になってしまったエステサロンに予約時間ぴったりに到着した。
「いらっしゃいませ。町田様、お待ちしておりました」
慶子がいつも指名する春日さんがにこやかに出迎えてくれた。
施術が始まり、他愛もない世間話が交わされる。
「実はうちのお店、二号店が近々オープンする予定なんです」
「へえ…、それはおめでとうございます」
慶子は何の気なしに言った。
「オーナーが変わるんですけど、若くてすごく恰好いいんですよ。その上やり手で、今色んな業種のお店を次々にオープンさせてるんです」
「そうなんですか、すごいですね」
若くて恰好いいオーナーなんて、世の中にはたくさんいる。
慶子はどんな時でもちょっと気を許すとヒョイっと顔を出してくる「聖夜」という二文字を無理やり心の奥底に押し込んだ。
「この間は雑誌に紹介されたんですよ」
「へえ…」
慶子はわざと興味がないふりをした。
何となく嫌な予感しかしなかったから…。
「すみません…、こんな話興味ないですよね」
春日さんは慌てて話を切り上げた。
九十分の全身コースを終え、慶子は会計を済ませて店を出ていこうとしていた。
すると店のドアが開き、目の前に立っているのは間違いでなければ「聖夜」その人だった。
「せ、先生?え、見違えた…、うちのお客さんだったの?」
「人違いです」
慶子は聖夜の横をすり抜けて足早に店を飛び出した。
「ま、待って!」
すぐに追いつかれ腕を掴まれる。
「ちょっと、久しぶりに会ったのにそれはないんじゃない?」
「…」
慶子は蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れない。
「それにしても、どうしたのっていうくらい、その…綺麗になったね」
会っていなかったこの数カ月で何が彼女をこんなに変えたのだろう…。
やはり和希の存在が…。
そんな風に考えるのは自分らしくない。
だけど慶子のことになると、自分は冷静でいられないようだ…。
そんな聖夜の心情など知るはずがない慶子は聖夜に心を乱されないよう必死で自分を守ろうとした。
相変わらず口がうまいんだから…。
慶子は聖夜の方を出来るだけ見ないようにした。
「離してください、人を呼びますよ」
慶子は声が震えそうになるのを必死でこらえた。
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