はじめての課外授業「女子高生による童貞大学生くんのためのラブレッスン」

星野しずく

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それぞれの事情.01

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啓太はまたいつもの忙しい生活に戻っていった。

 しかし、一つ変わったことがある。

 それは高森さんによって皆に広められてしまった、啓太の彼女がイケイケの今時の女の子だということだ。
 
 さすがに女子高生だということまでは知られていないのが救いだったが、少し前までは堅物で冴えない男だと思われていた啓太が、実はイケメンで可愛い彼女までいるとなれば、周りの啓太に対する印象はかなり変化していた。

 そして、啓太には髪を切ってイメージが変わった時以来の再モテ期がやってきた。

 合コンに頻繁に、そしてかなりしつこく誘われる。突然告白される。挙句の果てにストーカーに近い様なことまで起こるようになり、今まで研究に没頭していれば平和に過ぎていった毎日が、それでは済まなくなって来ていた。

 これが普通の男性なら喜ぶところなのだが、啓太にとっては素直に嬉しいものとは言えなかった。

 さくらと恋愛ごっこをしようと思ったのは、あくまで自分が余りに女性を知らなさすぎるという劣等感があったからで、特別モテたいと思っていた訳ではない。

 そんな啓太だから、このモテ過ぎるという状況には正直困っている。

 特に、彼を困らせているのは例の高森聡子だ。彼女は意外にもかなり執念深い性格だったのだ。

 さくらが協力してくれたおかげで、酔っ払った高森さんを泊めてしまったあの日は何とかやり過ごせたのだが、彼女はそれでもあきらめていなかったのだ。むしろ、高森さんの中ではあんなイケてる彼女がいることで啓太の株が更に上がってしまったようなのだ。

 そして啓太はその高森さんから猛烈なアタックを受けていた。

 と言っても、高森さんもバカではないので、啓太に嫌がられては元も子もないため、その辺の節度はわきまえていた。

 しかし、啓太にしてみれば一度はっきり断ればそれで済むと思っていたのに、こんなにも粘られては正直断った意味が無い。

 もう一度会って、ちゃんと断ったらきっとあきらめてくれるだろうかと経験の浅い頭で想像してみるのだが、こればっかりはいくら頭が良くても未知の分野のため、確信は持てない。

 情けないとは思いつつ、啓太はまたしてもさくらに相談してみることにした。

 手短に今の状況をメールで伝えると、ほどなくさくらから返事が返ってきた。

 その内容というのは、啓太が想像していたものとは随分違うものだった。

『啓太が嫌じゃなかったら、練習だと思って一度つきあってみたら?私と色々試したことが実際に他の女性とだとどうなるのか試してみるの。啓太、実験とか得意でしょ。やっぱり付き合ってみなきゃ相手のことなんて分かんないしね。もし相性がよかったら、そのまま付き合っちゃえばいいんだし、ダメなら高森さんも納得して分かれてくれると思うよ。』

「ええ~、さくらちゃんと付き合ってるのに、高森さんとも付き合うの?どうやって??」

 啓太はさくらとの関係はどうすればいいのかと、返信する。

『それは、一旦お休みにしよ。高森さんとダメだったら、また再開ということで私はオッケーだよ。だから、高森さんには、私とは別れたって言えばいいからね。』

(ええ~!!そ、そんなんでいいのかな~?さくらちゃんって今まで彼氏とどんな付き合い方してきたんだろう?)

 啓太は驚きつつも、試してみるしかないかと心を決め、さくらに返信した。

『さくらちゃんの提案どおりやってみるよ。また、連絡するね。ありがとう。』


 返信を読み終えたさくらは、フゥ~と深いため息をついた。

 啓太とは正式に付き合っている訳ではない。

 啓太にちゃんとした彼女が出来たら終わる関係だ。

 それはさくらが自分から言い出したことでもある。

 そういう付き合いだから啓太もOKしたのだ。

 本当に付き合うとなれば、経験の無い啓太はしり込みしてしまっただろう。

 そんなかりそめの関係なのだから、啓太に言い寄ってくる女性がいるのであれば、さくらにそれを止める権利は無い。

 そもそも、ノリで始まった関係なのだ。

 さくらの周りにはそんな軽い付き合いをしているカップルはめずらしくない。

 だから、自分もそいう付き合いは平気なはずだったし、正直そういう付き合いしかしてこなかった。

 しかし、今回に限っては何だかいつもと勝手が違って、それがさくらを困らせる。

 一人の人にしがみつくなんてみっともないし、気が変わったらすぐに別れられる方がお互い後腐れ無くていいに決ってるのに、なぜだか啓太が他の人とイチャイチャするのを想像するだけで、イライラしてくるのだ。

 こんなことは初めてで、さくらは自分の気持ちを持て余していた。

 しかし、啓太にとってはいい相手なのかもしれない高森さんという存在が現れたのだから、さくらとしては応援するという選択しか思いつかなかった。だって、自分は彼女ではないのだから…。


 一人物思いに耽っていると、友人たちが声を掛けてくる。

「ねえ、これからカラオケ行く?」

「うん、行く行く~!」

 さくらは、いつまでも考えていてもしょうがないと、気持ちを切り替えて友人達とにぎわう街に出掛けて行った。

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