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それぞれの事情.03
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いよいよ高森さんとのデート?の日を迎えた啓太だが、特に普段と変わりなく授業を受け、その後は例のごとく研究室にこもっていた。約束の時間は夜の7時だ。
さくらに教えてもらった食べログとやらで何とか見つけたオーガニック素材をふんだんに使用した創作料理が人気のこじゃれた居酒屋を探し出しさくらにOKをもらったのでそこに決めた。
結局今のところ、全てさくらが頼りだ。
全て自分でやろうとしたら、一歩も進まなかったであろうことは想像に難くない。
しかし、とりあえず全ての準備は整いあとは待ち合わせの時間に間に合うように行けばいいのだ。
大学から啓太の家までは歩いて15分程の近さなので、研究室に寄る時間もある。
家に帰って着替えてから出掛けることを考えると、6時には研究室を出なければならないだろう。
そんな事をぼんやり考えながら今にもなだれが起きそうな資料の山から必要になったもを無理に取り出そうと引っ張った瞬間、まさになだれが起きてしまった。
啓太の研究室の床は紙、紙、紙の山で埋め尽くされ、肝心の必要だった資料は行方不明になってしまった。
その資料は明日、次回の研究発表のプレゼンの打ち合わせに使用する予定で作っておいたもので、かなりの重要事項が書き込まれているものだった。
まだ原案とも呼べない骨組みだけの内容だったため、印刷してから必要な分をコピーして配布するつもりでいたので、バックアップも取ってない。
(まずいことになったな~。)
啓太は、頭を抱える。
待ち合わせの時間まではもうほどんと余裕が無い。
しかし、明日の打ち合わせに資料が無いなどということは許されない。
啓太は高森さんに少し遅れますと連絡を入れる。
覚悟を決めて紙の山の中から、その資料を探し始める。
こんな時ばかりは、きちんと整理しておけばよかったと思うのだが、どうにも整理整頓が苦手なため、こういうアクシデントがしばしば起こってしまう。
紙の山を一枚一枚整理していく。
しかし、肝心な資料はなかなか現れてくれない。
そうこうしている内に1時間が経過していた。
ほんとだったら今頃、待ち合わせ場所で高森さんと合流しているはずだった。
啓太はあせりながらも、地道な作業に徹した。
そしてようやく床が見えて来たところでその資料はやっと見つかった。
「はあ~、随分遅くなっちゃたな。」
今から行きますと連絡を入れる。
あわてて家に戻り、昨日さくらに選んでもらった服に袖を通すと急いで居酒屋に向かった。
約束の時間から1時間も遅れてしまい、啓太は気まずい思いのまま高森さんに近づいていく。
「ご、ごめん。すっかり待たせちゃって。」
「う、ううん。大丈夫。」
そう言った高森さんの表情は言葉とは裏腹に強張ったままだった。
「中に入ろうか。」
「う、うん。」
いらっしゃいませ~という店員さんの元気な声がかえって居心地が悪い。
「あの、予約してました小野木です。」
「お待ちしておりました~、こちらへどうぞ。」
席に案内されようやく少し落ち着いた雰囲気になる。
「ほんとにごめんね。明日の打ち合わせの資料が行方不明になっちゃって、探してたらこんな時間に…。」
「やっぱり、そんなことだろうと思った。普段はしっかりしてるのに、時々おっちょこちょいなんだから。」
1時間も待たされれば、普通の女の子ならご機嫌を治してもらうのが大変なところなのだが、啓太の事をよく知る高森だから、そんなに怒ることなく許してくれた。
「それにしても、今日は何だか雰囲気が違うね。その服すごく似合ってるし、急にオシャレになっちゃったね。」
「あ、ああ、そうかな。ちょっと冒険しちゃったかなと思ったんだけど、おかしくないかな?」
「ぜんぜん。でも、小野木くん最近雰囲気変わったよね。やっぱりあの彼女のおかげかな?」
「い、いや、そういう訳じゃないと思うけど…。それにもう彼女じゃないんだ…。」
「え、それって…。」
「うん。つい最近別れたんだ。」
「ええ~、ほんとに?悪いこと聞いちゃたね。ごめん。」
高森さんは猛烈アプローチしていた手前、啓太と付き合いたいという気持ちはもちろんあるのだが、だからと言って別れたばかりの人に対してどう接したらいいのかと思いあぐねているようだ。
「いや、いいんだ。もう終わったことだし。」
「でも、なんか、ごめん。」
すっかり辛気臭い雰囲気になってしまい、啓太はそんな空気を変えようと話を変える。
「ところでさ、ここのお店オーガニックの創作料理が人気らしいんだ。好きなのたのんで。」
「へえ~、小野木君お店とかにも詳しいんだ。意外~!」
高森さんはうれしそうにメニューとにらめっこしている。そんな様子を見て、啓太はようやくホッと一息ついた。
熱心にアプローチしていた高森さんだったが、さすがに別れたという話を聞いたそばから付き合いたいと切り出すことははばかられたようで、その日は楽しく食事をしただけで別れた。
さくらに教えてもらった食べログとやらで何とか見つけたオーガニック素材をふんだんに使用した創作料理が人気のこじゃれた居酒屋を探し出しさくらにOKをもらったのでそこに決めた。
結局今のところ、全てさくらが頼りだ。
全て自分でやろうとしたら、一歩も進まなかったであろうことは想像に難くない。
しかし、とりあえず全ての準備は整いあとは待ち合わせの時間に間に合うように行けばいいのだ。
大学から啓太の家までは歩いて15分程の近さなので、研究室に寄る時間もある。
家に帰って着替えてから出掛けることを考えると、6時には研究室を出なければならないだろう。
そんな事をぼんやり考えながら今にもなだれが起きそうな資料の山から必要になったもを無理に取り出そうと引っ張った瞬間、まさになだれが起きてしまった。
啓太の研究室の床は紙、紙、紙の山で埋め尽くされ、肝心の必要だった資料は行方不明になってしまった。
その資料は明日、次回の研究発表のプレゼンの打ち合わせに使用する予定で作っておいたもので、かなりの重要事項が書き込まれているものだった。
まだ原案とも呼べない骨組みだけの内容だったため、印刷してから必要な分をコピーして配布するつもりでいたので、バックアップも取ってない。
(まずいことになったな~。)
啓太は、頭を抱える。
待ち合わせの時間まではもうほどんと余裕が無い。
しかし、明日の打ち合わせに資料が無いなどということは許されない。
啓太は高森さんに少し遅れますと連絡を入れる。
覚悟を決めて紙の山の中から、その資料を探し始める。
こんな時ばかりは、きちんと整理しておけばよかったと思うのだが、どうにも整理整頓が苦手なため、こういうアクシデントがしばしば起こってしまう。
紙の山を一枚一枚整理していく。
しかし、肝心な資料はなかなか現れてくれない。
そうこうしている内に1時間が経過していた。
ほんとだったら今頃、待ち合わせ場所で高森さんと合流しているはずだった。
啓太はあせりながらも、地道な作業に徹した。
そしてようやく床が見えて来たところでその資料はやっと見つかった。
「はあ~、随分遅くなっちゃたな。」
今から行きますと連絡を入れる。
あわてて家に戻り、昨日さくらに選んでもらった服に袖を通すと急いで居酒屋に向かった。
約束の時間から1時間も遅れてしまい、啓太は気まずい思いのまま高森さんに近づいていく。
「ご、ごめん。すっかり待たせちゃって。」
「う、ううん。大丈夫。」
そう言った高森さんの表情は言葉とは裏腹に強張ったままだった。
「中に入ろうか。」
「う、うん。」
いらっしゃいませ~という店員さんの元気な声がかえって居心地が悪い。
「あの、予約してました小野木です。」
「お待ちしておりました~、こちらへどうぞ。」
席に案内されようやく少し落ち着いた雰囲気になる。
「ほんとにごめんね。明日の打ち合わせの資料が行方不明になっちゃって、探してたらこんな時間に…。」
「やっぱり、そんなことだろうと思った。普段はしっかりしてるのに、時々おっちょこちょいなんだから。」
1時間も待たされれば、普通の女の子ならご機嫌を治してもらうのが大変なところなのだが、啓太の事をよく知る高森だから、そんなに怒ることなく許してくれた。
「それにしても、今日は何だか雰囲気が違うね。その服すごく似合ってるし、急にオシャレになっちゃったね。」
「あ、ああ、そうかな。ちょっと冒険しちゃったかなと思ったんだけど、おかしくないかな?」
「ぜんぜん。でも、小野木くん最近雰囲気変わったよね。やっぱりあの彼女のおかげかな?」
「い、いや、そういう訳じゃないと思うけど…。それにもう彼女じゃないんだ…。」
「え、それって…。」
「うん。つい最近別れたんだ。」
「ええ~、ほんとに?悪いこと聞いちゃたね。ごめん。」
高森さんは猛烈アプローチしていた手前、啓太と付き合いたいという気持ちはもちろんあるのだが、だからと言って別れたばかりの人に対してどう接したらいいのかと思いあぐねているようだ。
「いや、いいんだ。もう終わったことだし。」
「でも、なんか、ごめん。」
すっかり辛気臭い雰囲気になってしまい、啓太はそんな空気を変えようと話を変える。
「ところでさ、ここのお店オーガニックの創作料理が人気らしいんだ。好きなのたのんで。」
「へえ~、小野木君お店とかにも詳しいんだ。意外~!」
高森さんはうれしそうにメニューとにらめっこしている。そんな様子を見て、啓太はようやくホッと一息ついた。
熱心にアプローチしていた高森さんだったが、さすがに別れたという話を聞いたそばから付き合いたいと切り出すことははばかられたようで、その日は楽しく食事をしただけで別れた。
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