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それでも俺が好きだと言ってみろ.33

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 口に出すことは出来ないが、桜庭に聞きたいことがいっぱいある。



 ギシッと音を立ててベッドに乗ると、桜庭は和香の隣に寝っ転がった。

 ゴロリと体を回転させ和香の上に四つん這いになった。



 えっ、な、なに・・・?

 桜庭が和香のことをじっと見つめている。

 どうしよう・・・、どうすればいいの・・・?

 いつもと明らかに様子が違う桜庭に、和香は混乱する。 



 桜庭の指が伸びてきて、和香の唇をなぞった。

「・・・っ!」

 ええっ!!

 指が離れたかと思った瞬間、桜庭の顔が近づき、和香の唇に桜庭の唇が重なった。

 っ!!!!

 どうして?キス?



 セックス依存の人はセックスがしたいだけなんじゃ・・・。

 桜庭はそのまましばらくの間は探るようなキスをしていた。

 それだけでも和香にとっては全く理解不能だった。



 しかし、桜庭のキスはさらに続いた。

 舌を侵入させると、和香の舌を追い始めた。

 これにはさすがにパニックになった。

 その舌に応えればいいのか、逃げ回ればいいのか、正解が分からない。



 しかし、程なくその熱い舌の誘惑に逆らえなくなった。

 ただでさえ色っぽいのに、今日の桜庭ときたら、その物欲しそうな表情のせいなのか、いつもにも増してエロさがダダ漏れなのだ。

 しかも、いつもは即物的に性交だけを求めてくるのに、なぜか今日はキスというイレギュラーなことを仕掛けられ、和香は完全にやられてしまった。



 セックスに対するテクニックも執着も普通以上だが、キスも負けず劣らず情熱的だった。

 いつもはただの性欲のはけ口の様な扱いしか受けていないだけに、こんな恋人にするようなキスをされては、和香はひとたまりもなかった。

 完全にキスに夢中になった。



「んっ・・・、ふっ・・・」

 激しいキスの合間に、熱い吐息が漏れる。



 いつものSッ気たっぷりのセックスにも、最近では不本意ながら和香は感じてしまっていた。

 しかし、今日のキスは体の芯が疼きまくって、和香は自分の体を持て余した。



 自分から桜庭を求めてどうするのだ?



 そうこうしているうちに、形を現してきた桜庭の男性自身が和香の腹を刺激しはじめた。

 そんな状況になってしまうと、もう和香はそれが欲しくて仕方なくなってくる。



 自分はこんなにふしだらな女だったのだろうか・・・?



 いや、こんな風になったのは桜庭が毎日の様に異常な執念で和香にセックスを迫ったからだ。

 そうやって全部桜庭のせいにしてしまいたかった。



 だけど、本当のところは分からない。

 他人とくらべることが出来ないからだ。



 あいかわらず激しいキスを続けながらも、桜庭の手は和香の髪を撫で、指で髪をすいた。

 そんな愛撫のような触れ方をされ、和香の心臓は痛いほどに騒いでいる。



 どうなってるの?

 桜庭さん、どうしちゃったの?

 訳は分からないけど・・・、もう和香は与えられるものを享受するので精一杯だった。
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