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それでも俺が好きだと言ってみろ.84
しおりを挟む結局、伊沢と桜庭の関係はより親密になったということが確実になり、和香はそれを知って、ますます怖気づくという最悪のパターンに陥りそうになっている。
もうダメだ・・・、全てを諦めるしかないのだと、和香はまだシャワーも浴びていないのにベッドに潜り込んだ。
そんな和香の耳に着信音が届いた。
もしかしたら、桜庭からかもしれない!
諦めようと思った矢先に、まだ期待している自分がいることを思い知る。
しかし、画面に映し出されていたのは真の名前だった。
もう、放っておいてよ!
真の几帳面な性格を自分にまで押しつけるのはいい加減やめてほしい!
和香はメッセージを開くことなくテーブルに放り投げると、またベッドに潜り込み、そのまま無理やり目を閉じた。
しかし、やっとウトウトしはじめた頃、チャイムの音が部屋に鳴り響いた。
えっ・・・、誰?
って、まあ君しかないよね・・・。
和香は、重い身体をベッドから引きずり出すと、玄関に向かった。
覗き窓で確認する。
やっぱり真だった。
和香は渋々ドアを開けた。
「返事がないから心配になって・・・」
「・・・どうだか」
もう完全に自暴自棄になっている和香は、つい悪態をついてしまった。
「和香ちゃん、どうしたの?そんな言い方するなんて・・・」
「もういいよ、私のことなんて放っておいて!」
和香はもう真に対して気を遣うことさえ億劫になった。
「そんな訳にはいかないって、この間ちゃんと話したよね?和香ちゃんの事情ばっかり僕に押しつけて、僕の事情は聞く耳持たないって不公平じゃない」
今度は真が反撃に出る。
真とつき合って以来、二人がこんな言い合いをしたことはなかった。
「そ、それはそうだけど・・・、とにかく今はそれどころじゃないの」
「だから、それどころじゃないってどういうこと?」
「それは・・・、言えない」
「あの人が、例の元上司の人に自分から近づいたから?それだけで、もう諦めるって言うの?」
「な、何でまあ君がそんなこと知ってるの?」
「和香ちゃんの会社の早乙女さんにさっき会ってきた」
「会ってきたって・・・、どうやって・・・」
「・・・和香ちゃんが会社から出てくるのをつけてた。それで居酒屋に入って、その人と一緒に出てくるのを確認したから、今度はその人の後をつけて話を聞いた」
「またそんなストーカーみたいなことして」
「たしかに常軌を逸してるよね・・・。通報するならしてもいいよ。だけど、僕は最後までやり遂げたい」
他人のことは言えないが、真の行動もどんどんおかしくなっている気がする。
「早乙女さんも言ってたじゃない。桜庭さんの伊沢さんに対する感情は恋なんかじゃないって。ねえ、和香ちゃん、これから桜庭さんの家に行こう!」
「嫌だ!もう帰ってよ」
「帰らない!和香ちゃんが一緒に行くって言うまで、絶対に帰らない!」
真はすっかり逆上して、和香の言葉など耳に入らない様だ。
怖い・・・、どうしよう。
誰か・・・、誰か・・・助けて。
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