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兄と妹のイケナイ関係.33
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将貴とみのりの関係など知る由もない高梨はたった今出会ったばかりのみのりが妙に気になっている自分に戸惑っていた。
(まずいな。また病気が始まっちまった。惚れやすいこの性格どうにかならないもんかね。相手は中学生で友達の妹ときてる。しかも、俺受験生だそ。)
出会わなければよかったのにと思ったものの後の祭り。恋は魔物だ。
そんな高梨君の胸の内など知るはずもなく、二人は参拝をして合格祈願をする。
みのりは不謹慎だとは思いつつも、将貴といつまでも一緒にいられますようにというお願いを付け加える。
それは将貴も一緒で、みのりとの幸せな将来を願わずにいられなかった。
絵馬を買って合格祈願のメッセージを書いて、すでにたくさんの絵馬がかかっている場所に掛ける。
「みのり、二人で絶対合格しような。」
「うん。私頑張る。」
決意も新たに、二人は神社を後にした。
冬休みはこれまでこんなに勉強したことないという位、みのりは頑張った。
新学期が始まってすぐの実力テストは、今までで一番良い結果だった。
この調子でいけば合格ラインだと、塾の先生にも太鼓判を押してもらえて、みのりはホッと胸を撫で下ろした。
無謀なチャレンジだったけど、将貴と離れたくない一心で頑張った甲斐があった。
この苦しみを乗り越えれば、二人のラブラブな生活が待っている。
そんな不純な動機で親には申し訳ないのだけれど、それで高校のレベルも上がったのだから、許してもらいたい。
3学期が始まって2週間程たったある日の放課後、いつものように塾に向かおうと歩いていると、向こうからバイクが近づいて来て、みのりのそばで止まる。
ヘルメットを外してバイクから降りてきた男性が、みのりに声をかけてきた。
「みのりちゃん。久しぶり。」
みのりは誰だろうと、必死に記憶をたどるが思い出せない。
「あれー、俺の事忘れちゃった?ショックだなー。君の兄貴の友達の高梨和哉だよ。ほら、お正月に神社で会ったじゃん。」
「あっ、あの時の…。」
チャラい人と言いかけて、みのりはハッと口を押さえる。
「ねえ、今帰り?よかったら、ちょっと後ろ乗ってかない?」
そう言うと、バイクの方を指差す。
「えっと、これから塾なので…。」
「そう、じゃあ、塾まで乗せてってあげるよ。」
そう言うと、みのりの腕を掴み、バイクの置いてある場所へと半ば強引に連れて行く。
あいかわらず押しに弱いみのりは、困った顔をしながらも断ることが出来ない。
「何て塾?」
「あの、駅前のトップゼミナールです。」
「よし、分かった。これ、かぶって後ろに乗って。」
そう言うと、パッとバイクにまたがる。
みのりは、仕方なく言われるままに後ろに乗ると、
「俺にしっかりつかまって。」
などと言われてしまい、今更ながらに、こんなところを将貴に見られたらとんでもなく叱られるだろうと思い、後悔する。
高梨君はみのりがしっかり捕まったことを確認すると、バイクを発進させる。
塾は駅前にありバスで10分程度の場所にある。
しかし、走り出してから少し経って気づいたのだが、高梨君がバイクを走らせている方向は駅前には向かっていないような気がする。
みのりは大声で話しかけてみるのだが、ヘルメットをかぶっているのとバイクで走っているという状態ではどんなに叫んでも高梨君には届かない。
仕方なく、高梨君につかまっていたその手で、彼の上着を力いっぱい引っ張ってみる。
しかし、そんなみのりの行動にはおかまいなく、高梨君はバイクを走らせる。
(どうしよう。どこに連れて行かれるんだろう。助けて将兄~。)
そんな事を考えていると、ふいにバイクが止まった。
「どう、ここ。いい眺めだよ。」
高梨君の声につられて、そちらに目をやると、そこは高台にある公園の展望台で、街全体が見渡せるようになっていた。
「わあ、すごーい。」
みのりは、展望台までかけて行くと、さっきまでの不安など忘れて無邪気にその眺めを楽しんでいる。
「気に入ってくれた?ここ俺のお気に入りの場所なんだ。」
そう言いながら高梨君はみのりの横に立つ。
「へえ、そうなんですか。素敵な眺め…!」
すると突然高梨君の唇が、みのりの唇に重なる。
それは、触れるくらいの軽いキスだったが、みのりはショックで固まってしまった。
「高梨さん、な、なんで?」
「ん?君が可愛いすぎるから。」
「そ、そんな。困ります。」
みのりは泣きそうな顔で訴える。
「泣かないでよ。俺こういうキャラだから、挨拶みたいなもんだって。深い意味は無いから、気にしないでよ。」
高梨君にそう言われ、まじめに受け取った自分が恥かしくなってしまう。
「でも、私、やっぱりそう言うの無理ですから。」
「そっか、ごめんね。俺けっこう自信あったんだけどな…。俺のキスで落ちない子なんて、君が初めてだよ。」
確かに、高梨君はカッコイイ。普通の女の子だったらイチコロなのだろう。
でも、みのりには将兄がいる。そんな事は口が裂けても言えないけれど…。
「おっと、あんまりゆっくりしてると、塾に遅れちゃうね。さあ、急ごう。」
そう言って、何事も無かったかのようにバイクに乗り塾のある駅前まで送ってくれた。
(まずいな。また病気が始まっちまった。惚れやすいこの性格どうにかならないもんかね。相手は中学生で友達の妹ときてる。しかも、俺受験生だそ。)
出会わなければよかったのにと思ったものの後の祭り。恋は魔物だ。
そんな高梨君の胸の内など知るはずもなく、二人は参拝をして合格祈願をする。
みのりは不謹慎だとは思いつつも、将貴といつまでも一緒にいられますようにというお願いを付け加える。
それは将貴も一緒で、みのりとの幸せな将来を願わずにいられなかった。
絵馬を買って合格祈願のメッセージを書いて、すでにたくさんの絵馬がかかっている場所に掛ける。
「みのり、二人で絶対合格しような。」
「うん。私頑張る。」
決意も新たに、二人は神社を後にした。
冬休みはこれまでこんなに勉強したことないという位、みのりは頑張った。
新学期が始まってすぐの実力テストは、今までで一番良い結果だった。
この調子でいけば合格ラインだと、塾の先生にも太鼓判を押してもらえて、みのりはホッと胸を撫で下ろした。
無謀なチャレンジだったけど、将貴と離れたくない一心で頑張った甲斐があった。
この苦しみを乗り越えれば、二人のラブラブな生活が待っている。
そんな不純な動機で親には申し訳ないのだけれど、それで高校のレベルも上がったのだから、許してもらいたい。
3学期が始まって2週間程たったある日の放課後、いつものように塾に向かおうと歩いていると、向こうからバイクが近づいて来て、みのりのそばで止まる。
ヘルメットを外してバイクから降りてきた男性が、みのりに声をかけてきた。
「みのりちゃん。久しぶり。」
みのりは誰だろうと、必死に記憶をたどるが思い出せない。
「あれー、俺の事忘れちゃった?ショックだなー。君の兄貴の友達の高梨和哉だよ。ほら、お正月に神社で会ったじゃん。」
「あっ、あの時の…。」
チャラい人と言いかけて、みのりはハッと口を押さえる。
「ねえ、今帰り?よかったら、ちょっと後ろ乗ってかない?」
そう言うと、バイクの方を指差す。
「えっと、これから塾なので…。」
「そう、じゃあ、塾まで乗せてってあげるよ。」
そう言うと、みのりの腕を掴み、バイクの置いてある場所へと半ば強引に連れて行く。
あいかわらず押しに弱いみのりは、困った顔をしながらも断ることが出来ない。
「何て塾?」
「あの、駅前のトップゼミナールです。」
「よし、分かった。これ、かぶって後ろに乗って。」
そう言うと、パッとバイクにまたがる。
みのりは、仕方なく言われるままに後ろに乗ると、
「俺にしっかりつかまって。」
などと言われてしまい、今更ながらに、こんなところを将貴に見られたらとんでもなく叱られるだろうと思い、後悔する。
高梨君はみのりがしっかり捕まったことを確認すると、バイクを発進させる。
塾は駅前にありバスで10分程度の場所にある。
しかし、走り出してから少し経って気づいたのだが、高梨君がバイクを走らせている方向は駅前には向かっていないような気がする。
みのりは大声で話しかけてみるのだが、ヘルメットをかぶっているのとバイクで走っているという状態ではどんなに叫んでも高梨君には届かない。
仕方なく、高梨君につかまっていたその手で、彼の上着を力いっぱい引っ張ってみる。
しかし、そんなみのりの行動にはおかまいなく、高梨君はバイクを走らせる。
(どうしよう。どこに連れて行かれるんだろう。助けて将兄~。)
そんな事を考えていると、ふいにバイクが止まった。
「どう、ここ。いい眺めだよ。」
高梨君の声につられて、そちらに目をやると、そこは高台にある公園の展望台で、街全体が見渡せるようになっていた。
「わあ、すごーい。」
みのりは、展望台までかけて行くと、さっきまでの不安など忘れて無邪気にその眺めを楽しんでいる。
「気に入ってくれた?ここ俺のお気に入りの場所なんだ。」
そう言いながら高梨君はみのりの横に立つ。
「へえ、そうなんですか。素敵な眺め…!」
すると突然高梨君の唇が、みのりの唇に重なる。
それは、触れるくらいの軽いキスだったが、みのりはショックで固まってしまった。
「高梨さん、な、なんで?」
「ん?君が可愛いすぎるから。」
「そ、そんな。困ります。」
みのりは泣きそうな顔で訴える。
「泣かないでよ。俺こういうキャラだから、挨拶みたいなもんだって。深い意味は無いから、気にしないでよ。」
高梨君にそう言われ、まじめに受け取った自分が恥かしくなってしまう。
「でも、私、やっぱりそう言うの無理ですから。」
「そっか、ごめんね。俺けっこう自信あったんだけどな…。俺のキスで落ちない子なんて、君が初めてだよ。」
確かに、高梨君はカッコイイ。普通の女の子だったらイチコロなのだろう。
でも、みのりには将兄がいる。そんな事は口が裂けても言えないけれど…。
「おっと、あんまりゆっくりしてると、塾に遅れちゃうね。さあ、急ごう。」
そう言って、何事も無かったかのようにバイクに乗り塾のある駅前まで送ってくれた。
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