兄と妹のイケナイ関係

星野しずく

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兄と妹のイケナイ関係.36

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 一月半ばのセンター試験を間近に控え、将貴たち高校3年生は最後の仕上げに入っていた。

 ここまで来たら、勉強も大事だが体調管理がより大切になってくる。

 そんな事もあって、いつもの様にみのりは出来るだけ将貴と二人きりにならないよう気をつけていた。

 将貴の性格だと、試験の前日だろうと隙があれば事に及んでしまう可能性があるからだ。

 どんな時でも動じないというのは尊敬できるのだが、時と場合を考えて欲しいと思うこともしばしばだ。

 みのりの気持ちなど知る由もない将貴は、みのりが冷たいとぼやいていたが、もう少しの我慢だと聞こえないふりで過ごしていた。


 そうこうしているうちに、いよいよセンター試験が明日にせまってきた。

 夕食の後、さすがに今日は襲って来ることはないだろうと思ったみのりは、ソファで将貴の横に座ると話し始める。

「将兄は明日の試験、余裕だよね。」

「まあな。何とかなるだろ。実力テストではA判定もらってるし。」

「そっかー。じゃあ、心配ないね。応援してるよ。」

「ああ。ありがとな。」

 そう言うと、将貴はみのりの手を握ってくる。

 一瞬ビクっとしてしまったが、まさかその先に進むことはないだろうとそのままにしておく。

 しかし、その手はいつの間にかみのりの太ももを撫ではじめていた。

「ちょっと、将兄!明日試験なんだよ。何してんの!」

「ん?エネルギーチャージ。」

 嬉しそうな顔で微笑む将貴をみのりは拒むことが出来ず、この位ならいいかと気を許していると、調子にのった将貴は今度はおしりを撫で始める。

 さすがのみのりもこれにはキレて、

「将兄!明日試験なんだから、そんなことしてないで早くお風呂に入って寝なさい!」

 と怒鳴ってしまった。

「おー、怖い怖い。オニババが怒るから退散しよ~っと。」

 将貴は自分の部屋へ逃げていく。

「誰がオニババよ!将兄のこと心配して言ってるんでしょうが!」

 みのりは、本気で心配してるのにいつもマイペースな将貴に振り回されてばかりの自分がちょっぴり悲しくなってきた。

(将兄。明日はいつもの調子で頑張ってね。一緒に東京に行こうね。)



 センター試験当日、将貴はいつもと変わらない様子で家を出た。

 その日、みのり学校に行っても、ほとんど授業に集中できなかった。やっぱり、将貴のことが気になってしまうのだ。

 学校が終わり、塾に向かう。

 いつもは気をつけて、塾へのルートも遠回りにしたりしていたのだが、今日は将兄のことで頭が一杯でうっかり学校から普通のルートのバスに乗ってしまった。

 バスが発車すると誰かが隣の席にストンと座る。

「やあ、久しぶり。」

 顔を上げると、横にいたのは黒木君だった。

「っ!久しぶり…。」

「めずらしいね。いつもこのバスには乗ってないのに。まあ、僕としては嬉しい偶然だけど。」

「…。」

「そんなに、怖がらないでよ。この間はちょっとやりすぎたと思って反省してるんだ。」

「そっ、そう。」

「確かに、君たちの関係はかなりスキャンダラスだけど、僕が君を好きな気持ちには変わりないから。僕が思うに、君達は一緒に暮らしてるせいで湧いてきた愛着を愛情と勘違いしてるんじゃないかと思うんだ。だから、一度僕を一人の男として見てくれないかな。僕は、女性として君が好きだし、自分で言うのも何だけど将来的にも君を幸せにできる自信がある。だから、入試が終わった後、君の答えを聞かせてほしい。じゃないと諦めきれないよ。僕の能力目当てに近づいて来る女の子はたくさんいるけど、そういう子には興味が無いんだ。むしろ君は僕がどんなに能力があっても特別視しないで接してくれた。僕にはそれが新鮮で興味を持ったんだ。それに君は、とても素直で純粋すぎるくらい純粋でほっとけないところがある。そんなところもひっくるめて僕は君が愛おしい…。一方的に話しちゃってごめん…。だけど、僕の気持ちは全部話したから、後はもう君に任せるよ。」

「…。」

 まくし立てられるように、黒木君からの告白を聞かされみのりは即座には何と答えたら言いか分からなかった。

「とりあえず、お互い受験頑張ろう。」

「そ、そうだね。」

 そんな答えしか今のみのりは出来なかった。

 遊園地にまで付いてきた黒木君を一方的に避けていたけれど、彼は彼なりにちゃんと自分のことを真剣に考えていてくれたんだと思うと、自分には将貴しかいないと心は決まっているものの返事だけはきちんとしなければと思ったのだった。

 黒木君の正直な気持ちを聞いて、同い年なのに色んなことを真剣かつ客観的に考えていることを知って、自分も将兄のことで一喜一憂していないで、今は一番大事な受験に集中して頑張ろうと思うのだった。

 塾から帰ると、試験を終えてすっきりとした表情の将貴がリビングでくつろいでいた。

「将兄、いい顔してるね。試験うまくいったみたいだね。」

「まあまあかな。」

「へぇー。私もそんな台詞言ってみたいよ。」

「何言ってんだ。お前だって、頑張ってるんだからきっとうまくいくさ。」

「うん。そうだといいんだけど。」

「弱気になるなよ。これからは俺も時間がたっぷりあるから、家での勉強は付きっ切りで見てやるよ。」

「えっと、それはいいです。」

「何でだよ。兄の好意を断るとはどうゆう了見だ?」

「だから~、これは私の問題で…。」

「ああ、俺がそばにいるとムラムラしちゃうんだったな。」

「もー!知らない。」

 みのりは、図星なだけに言葉が見つからず、ぷんぷん怒って自分の部屋に退散するしかなかった。

 
 入試まであと1ヶ月を切ったある日、その日はかなり冷え込んでいたのだが、塾が終わって外に出ると雪が降り出していた。

「うわ~、寒いと思ったら雪だ~。」

 みのりは、滑って転ばないように気をつけながらバス停までの道を歩いていた。

「久しぶりー、みのりちゃん。」

 後ろから呼び掛けられて振り返ると、そこには高梨さんが立っていた。

 みのりはまずいと思いつつも、こんな雪の中走ったら転んでしまいそうで逃げる訳にもいかず、「どうも。」とだけ答えてバス停へと向かう。

「ちょっと待ってよ。つれないな~。」

 そう言うと、高梨さんはみのりのそばまで駆け寄ってきて横に並ぶ。

「ねえ、この間はいきなりあんなことしちゃってゴメンね。俺の周りにいる女の子たちって、ああいうノリが普通で、俺の感覚も麻痺してたっていうか、それ以外どうやってアプローチしたらいいか分かんなかったんだよね。」

「…。」

 みのりは、将兄との約束を守るべく、相手のペースに巻き込まれないよう必死で耐えていた。

「そんな、怒らないでよ。俺も反省してるんだからさ。少しは話し聞いてくれないかな?」

「…。」

「困ったな、俺、正直自分でもこんなの初めてで、何て言ったらいいか分かんないんだけど…。その、たぶん、俺、君に一目ぼれしちゃったみたいなんだ…。」

 チャライ風貌に似合わない真面目な告白をされると、どういう反応をしていいのか困ってしまう。

「そ、そうですか。」

「一応俺の気持ちは伝えたから。ふざけてたんじゃないってことだけ分かってもらいたい。まあ、今は受験も控えてることだから、君の迷惑になるような事はしないから。でも、受験が終わったら、もう一度ちゃんと告白させて。じゃあ、風邪引かない様にね!」

 言いたいことを言って高梨君はすっきりした表情で去っていった。

 残されたみのりは、また難題を抱え込んでしまい気が重い。

(黒木くんのこともあるのに…。高梨さんまで…。受験が終わってやっとすっきりできると思ってるのに、何でこんなことに…。)

 みのりはバスに乗り込むと気持ちを切り替えるために参考書を開いて今日の復習をしてみようとしたものの、頭の中では彼らの言葉がぐるぐると繰り返されて、何も頭に入ってこなかった。
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