36 / 39
兄と妹のイケナイ関係.36
しおりを挟む
一月半ばのセンター試験を間近に控え、将貴たち高校3年生は最後の仕上げに入っていた。
ここまで来たら、勉強も大事だが体調管理がより大切になってくる。
そんな事もあって、いつもの様にみのりは出来るだけ将貴と二人きりにならないよう気をつけていた。
将貴の性格だと、試験の前日だろうと隙があれば事に及んでしまう可能性があるからだ。
どんな時でも動じないというのは尊敬できるのだが、時と場合を考えて欲しいと思うこともしばしばだ。
みのりの気持ちなど知る由もない将貴は、みのりが冷たいとぼやいていたが、もう少しの我慢だと聞こえないふりで過ごしていた。
そうこうしているうちに、いよいよセンター試験が明日にせまってきた。
夕食の後、さすがに今日は襲って来ることはないだろうと思ったみのりは、ソファで将貴の横に座ると話し始める。
「将兄は明日の試験、余裕だよね。」
「まあな。何とかなるだろ。実力テストではA判定もらってるし。」
「そっかー。じゃあ、心配ないね。応援してるよ。」
「ああ。ありがとな。」
そう言うと、将貴はみのりの手を握ってくる。
一瞬ビクっとしてしまったが、まさかその先に進むことはないだろうとそのままにしておく。
しかし、その手はいつの間にかみのりの太ももを撫ではじめていた。
「ちょっと、将兄!明日試験なんだよ。何してんの!」
「ん?エネルギーチャージ。」
嬉しそうな顔で微笑む将貴をみのりは拒むことが出来ず、この位ならいいかと気を許していると、調子にのった将貴は今度はおしりを撫で始める。
さすがのみのりもこれにはキレて、
「将兄!明日試験なんだから、そんなことしてないで早くお風呂に入って寝なさい!」
と怒鳴ってしまった。
「おー、怖い怖い。オニババが怒るから退散しよ~っと。」
将貴は自分の部屋へ逃げていく。
「誰がオニババよ!将兄のこと心配して言ってるんでしょうが!」
みのりは、本気で心配してるのにいつもマイペースな将貴に振り回されてばかりの自分がちょっぴり悲しくなってきた。
(将兄。明日はいつもの調子で頑張ってね。一緒に東京に行こうね。)
センター試験当日、将貴はいつもと変わらない様子で家を出た。
その日、みのり学校に行っても、ほとんど授業に集中できなかった。やっぱり、将貴のことが気になってしまうのだ。
学校が終わり、塾に向かう。
いつもは気をつけて、塾へのルートも遠回りにしたりしていたのだが、今日は将兄のことで頭が一杯でうっかり学校から普通のルートのバスに乗ってしまった。
バスが発車すると誰かが隣の席にストンと座る。
「やあ、久しぶり。」
顔を上げると、横にいたのは黒木君だった。
「っ!久しぶり…。」
「めずらしいね。いつもこのバスには乗ってないのに。まあ、僕としては嬉しい偶然だけど。」
「…。」
「そんなに、怖がらないでよ。この間はちょっとやりすぎたと思って反省してるんだ。」
「そっ、そう。」
「確かに、君たちの関係はかなりスキャンダラスだけど、僕が君を好きな気持ちには変わりないから。僕が思うに、君達は一緒に暮らしてるせいで湧いてきた愛着を愛情と勘違いしてるんじゃないかと思うんだ。だから、一度僕を一人の男として見てくれないかな。僕は、女性として君が好きだし、自分で言うのも何だけど将来的にも君を幸せにできる自信がある。だから、入試が終わった後、君の答えを聞かせてほしい。じゃないと諦めきれないよ。僕の能力目当てに近づいて来る女の子はたくさんいるけど、そういう子には興味が無いんだ。むしろ君は僕がどんなに能力があっても特別視しないで接してくれた。僕にはそれが新鮮で興味を持ったんだ。それに君は、とても素直で純粋すぎるくらい純粋でほっとけないところがある。そんなところもひっくるめて僕は君が愛おしい…。一方的に話しちゃってごめん…。だけど、僕の気持ちは全部話したから、後はもう君に任せるよ。」
「…。」
まくし立てられるように、黒木君からの告白を聞かされみのりは即座には何と答えたら言いか分からなかった。
「とりあえず、お互い受験頑張ろう。」
「そ、そうだね。」
そんな答えしか今のみのりは出来なかった。
遊園地にまで付いてきた黒木君を一方的に避けていたけれど、彼は彼なりにちゃんと自分のことを真剣に考えていてくれたんだと思うと、自分には将貴しかいないと心は決まっているものの返事だけはきちんとしなければと思ったのだった。
黒木君の正直な気持ちを聞いて、同い年なのに色んなことを真剣かつ客観的に考えていることを知って、自分も将兄のことで一喜一憂していないで、今は一番大事な受験に集中して頑張ろうと思うのだった。
塾から帰ると、試験を終えてすっきりとした表情の将貴がリビングでくつろいでいた。
「将兄、いい顔してるね。試験うまくいったみたいだね。」
「まあまあかな。」
「へぇー。私もそんな台詞言ってみたいよ。」
「何言ってんだ。お前だって、頑張ってるんだからきっとうまくいくさ。」
「うん。そうだといいんだけど。」
「弱気になるなよ。これからは俺も時間がたっぷりあるから、家での勉強は付きっ切りで見てやるよ。」
「えっと、それはいいです。」
「何でだよ。兄の好意を断るとはどうゆう了見だ?」
「だから~、これは私の問題で…。」
「ああ、俺がそばにいるとムラムラしちゃうんだったな。」
「もー!知らない。」
みのりは、図星なだけに言葉が見つからず、ぷんぷん怒って自分の部屋に退散するしかなかった。
入試まであと1ヶ月を切ったある日、その日はかなり冷え込んでいたのだが、塾が終わって外に出ると雪が降り出していた。
「うわ~、寒いと思ったら雪だ~。」
みのりは、滑って転ばないように気をつけながらバス停までの道を歩いていた。
「久しぶりー、みのりちゃん。」
後ろから呼び掛けられて振り返ると、そこには高梨さんが立っていた。
みのりはまずいと思いつつも、こんな雪の中走ったら転んでしまいそうで逃げる訳にもいかず、「どうも。」とだけ答えてバス停へと向かう。
「ちょっと待ってよ。つれないな~。」
そう言うと、高梨さんはみのりのそばまで駆け寄ってきて横に並ぶ。
「ねえ、この間はいきなりあんなことしちゃってゴメンね。俺の周りにいる女の子たちって、ああいうノリが普通で、俺の感覚も麻痺してたっていうか、それ以外どうやってアプローチしたらいいか分かんなかったんだよね。」
「…。」
みのりは、将兄との約束を守るべく、相手のペースに巻き込まれないよう必死で耐えていた。
「そんな、怒らないでよ。俺も反省してるんだからさ。少しは話し聞いてくれないかな?」
「…。」
「困ったな、俺、正直自分でもこんなの初めてで、何て言ったらいいか分かんないんだけど…。その、たぶん、俺、君に一目ぼれしちゃったみたいなんだ…。」
チャライ風貌に似合わない真面目な告白をされると、どういう反応をしていいのか困ってしまう。
「そ、そうですか。」
「一応俺の気持ちは伝えたから。ふざけてたんじゃないってことだけ分かってもらいたい。まあ、今は受験も控えてることだから、君の迷惑になるような事はしないから。でも、受験が終わったら、もう一度ちゃんと告白させて。じゃあ、風邪引かない様にね!」
言いたいことを言って高梨君はすっきりした表情で去っていった。
残されたみのりは、また難題を抱え込んでしまい気が重い。
(黒木くんのこともあるのに…。高梨さんまで…。受験が終わってやっとすっきりできると思ってるのに、何でこんなことに…。)
みのりはバスに乗り込むと気持ちを切り替えるために参考書を開いて今日の復習をしてみようとしたものの、頭の中では彼らの言葉がぐるぐると繰り返されて、何も頭に入ってこなかった。
ここまで来たら、勉強も大事だが体調管理がより大切になってくる。
そんな事もあって、いつもの様にみのりは出来るだけ将貴と二人きりにならないよう気をつけていた。
将貴の性格だと、試験の前日だろうと隙があれば事に及んでしまう可能性があるからだ。
どんな時でも動じないというのは尊敬できるのだが、時と場合を考えて欲しいと思うこともしばしばだ。
みのりの気持ちなど知る由もない将貴は、みのりが冷たいとぼやいていたが、もう少しの我慢だと聞こえないふりで過ごしていた。
そうこうしているうちに、いよいよセンター試験が明日にせまってきた。
夕食の後、さすがに今日は襲って来ることはないだろうと思ったみのりは、ソファで将貴の横に座ると話し始める。
「将兄は明日の試験、余裕だよね。」
「まあな。何とかなるだろ。実力テストではA判定もらってるし。」
「そっかー。じゃあ、心配ないね。応援してるよ。」
「ああ。ありがとな。」
そう言うと、将貴はみのりの手を握ってくる。
一瞬ビクっとしてしまったが、まさかその先に進むことはないだろうとそのままにしておく。
しかし、その手はいつの間にかみのりの太ももを撫ではじめていた。
「ちょっと、将兄!明日試験なんだよ。何してんの!」
「ん?エネルギーチャージ。」
嬉しそうな顔で微笑む将貴をみのりは拒むことが出来ず、この位ならいいかと気を許していると、調子にのった将貴は今度はおしりを撫で始める。
さすがのみのりもこれにはキレて、
「将兄!明日試験なんだから、そんなことしてないで早くお風呂に入って寝なさい!」
と怒鳴ってしまった。
「おー、怖い怖い。オニババが怒るから退散しよ~っと。」
将貴は自分の部屋へ逃げていく。
「誰がオニババよ!将兄のこと心配して言ってるんでしょうが!」
みのりは、本気で心配してるのにいつもマイペースな将貴に振り回されてばかりの自分がちょっぴり悲しくなってきた。
(将兄。明日はいつもの調子で頑張ってね。一緒に東京に行こうね。)
センター試験当日、将貴はいつもと変わらない様子で家を出た。
その日、みのり学校に行っても、ほとんど授業に集中できなかった。やっぱり、将貴のことが気になってしまうのだ。
学校が終わり、塾に向かう。
いつもは気をつけて、塾へのルートも遠回りにしたりしていたのだが、今日は将兄のことで頭が一杯でうっかり学校から普通のルートのバスに乗ってしまった。
バスが発車すると誰かが隣の席にストンと座る。
「やあ、久しぶり。」
顔を上げると、横にいたのは黒木君だった。
「っ!久しぶり…。」
「めずらしいね。いつもこのバスには乗ってないのに。まあ、僕としては嬉しい偶然だけど。」
「…。」
「そんなに、怖がらないでよ。この間はちょっとやりすぎたと思って反省してるんだ。」
「そっ、そう。」
「確かに、君たちの関係はかなりスキャンダラスだけど、僕が君を好きな気持ちには変わりないから。僕が思うに、君達は一緒に暮らしてるせいで湧いてきた愛着を愛情と勘違いしてるんじゃないかと思うんだ。だから、一度僕を一人の男として見てくれないかな。僕は、女性として君が好きだし、自分で言うのも何だけど将来的にも君を幸せにできる自信がある。だから、入試が終わった後、君の答えを聞かせてほしい。じゃないと諦めきれないよ。僕の能力目当てに近づいて来る女の子はたくさんいるけど、そういう子には興味が無いんだ。むしろ君は僕がどんなに能力があっても特別視しないで接してくれた。僕にはそれが新鮮で興味を持ったんだ。それに君は、とても素直で純粋すぎるくらい純粋でほっとけないところがある。そんなところもひっくるめて僕は君が愛おしい…。一方的に話しちゃってごめん…。だけど、僕の気持ちは全部話したから、後はもう君に任せるよ。」
「…。」
まくし立てられるように、黒木君からの告白を聞かされみのりは即座には何と答えたら言いか分からなかった。
「とりあえず、お互い受験頑張ろう。」
「そ、そうだね。」
そんな答えしか今のみのりは出来なかった。
遊園地にまで付いてきた黒木君を一方的に避けていたけれど、彼は彼なりにちゃんと自分のことを真剣に考えていてくれたんだと思うと、自分には将貴しかいないと心は決まっているものの返事だけはきちんとしなければと思ったのだった。
黒木君の正直な気持ちを聞いて、同い年なのに色んなことを真剣かつ客観的に考えていることを知って、自分も将兄のことで一喜一憂していないで、今は一番大事な受験に集中して頑張ろうと思うのだった。
塾から帰ると、試験を終えてすっきりとした表情の将貴がリビングでくつろいでいた。
「将兄、いい顔してるね。試験うまくいったみたいだね。」
「まあまあかな。」
「へぇー。私もそんな台詞言ってみたいよ。」
「何言ってんだ。お前だって、頑張ってるんだからきっとうまくいくさ。」
「うん。そうだといいんだけど。」
「弱気になるなよ。これからは俺も時間がたっぷりあるから、家での勉強は付きっ切りで見てやるよ。」
「えっと、それはいいです。」
「何でだよ。兄の好意を断るとはどうゆう了見だ?」
「だから~、これは私の問題で…。」
「ああ、俺がそばにいるとムラムラしちゃうんだったな。」
「もー!知らない。」
みのりは、図星なだけに言葉が見つからず、ぷんぷん怒って自分の部屋に退散するしかなかった。
入試まであと1ヶ月を切ったある日、その日はかなり冷え込んでいたのだが、塾が終わって外に出ると雪が降り出していた。
「うわ~、寒いと思ったら雪だ~。」
みのりは、滑って転ばないように気をつけながらバス停までの道を歩いていた。
「久しぶりー、みのりちゃん。」
後ろから呼び掛けられて振り返ると、そこには高梨さんが立っていた。
みのりはまずいと思いつつも、こんな雪の中走ったら転んでしまいそうで逃げる訳にもいかず、「どうも。」とだけ答えてバス停へと向かう。
「ちょっと待ってよ。つれないな~。」
そう言うと、高梨さんはみのりのそばまで駆け寄ってきて横に並ぶ。
「ねえ、この間はいきなりあんなことしちゃってゴメンね。俺の周りにいる女の子たちって、ああいうノリが普通で、俺の感覚も麻痺してたっていうか、それ以外どうやってアプローチしたらいいか分かんなかったんだよね。」
「…。」
みのりは、将兄との約束を守るべく、相手のペースに巻き込まれないよう必死で耐えていた。
「そんな、怒らないでよ。俺も反省してるんだからさ。少しは話し聞いてくれないかな?」
「…。」
「困ったな、俺、正直自分でもこんなの初めてで、何て言ったらいいか分かんないんだけど…。その、たぶん、俺、君に一目ぼれしちゃったみたいなんだ…。」
チャライ風貌に似合わない真面目な告白をされると、どういう反応をしていいのか困ってしまう。
「そ、そうですか。」
「一応俺の気持ちは伝えたから。ふざけてたんじゃないってことだけ分かってもらいたい。まあ、今は受験も控えてることだから、君の迷惑になるような事はしないから。でも、受験が終わったら、もう一度ちゃんと告白させて。じゃあ、風邪引かない様にね!」
言いたいことを言って高梨君はすっきりした表情で去っていった。
残されたみのりは、また難題を抱え込んでしまい気が重い。
(黒木くんのこともあるのに…。高梨さんまで…。受験が終わってやっとすっきりできると思ってるのに、何でこんなことに…。)
みのりはバスに乗り込むと気持ちを切り替えるために参考書を開いて今日の復習をしてみようとしたものの、頭の中では彼らの言葉がぐるぐると繰り返されて、何も頭に入ってこなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる