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空の目。
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私は遥か宇宙から地上を見下ろしている。
まるで神の様に…。
と言うのは冗談で、軍の衛星から送られてくる映像を見て、敵基地を監視するのが仕事だ。東の国が西の国へ侵略を開始してから我が国は西の国への援助をいち早く始め、衛星からの情報も逐一共有している。 このくだらない戦争はいつまで続くのか、戦争が終わらない限り私の多忙な日々に終わりは来なさそうだ。
もう何日も家に帰っていない、そういえば先週の日曜日に息子のリトルリーグの試合があり、息子は先発投手でそこそこ活躍した、と妻から連絡があった。衛星で息子の試合を見てやろうかと思ったが、バレたらクビになるので辞めた。
「ビル、交代の時間だ」
同僚がやってきて任務を交代、私はラウンジで一息ついてから仮眠する。ラウンジは広くも狭くもなく、必要最低限の椅子と机とTVだけの殺風景な空間だが、いつも空いているのがメリットだ。
そういえば今日、不可解な事が起こった。敵基地から一機のMiG-31が飛び立ち、すぐに西の国へ連絡、国境付近で西の国所属のMiG-29に撃墜された。不可解なのはそのMiG-31はミサイル攻撃に対して一切の回避行動をせず、呆気なく森に落ちた。パイロットの安否は不明。
まるで撃墜してくれと言わんばかりの行動、パイロットは自殺志願者だったのか?それともメカトラブルか?真相は機体の残骸が回収されるか、もしくはパイロットが無事で拘束されれば明らかになるだろう。
まぁこんな不可解な事が起こるのが戦争、不条理な世界に不可解は付きものだ。いちいち気にしていたらコチラの身が持たない。戦場ではもっと恐ろしく残酷な不条理が日々起こっているのだから。
「ビル、ちょっと話がある」
突然上官から呼び出され、ラウンジから上官の部屋へ。東の国へ潜伏していたスパイからの情報で、今日の不可解なMiG-31の詳細が明らかになった。MiG-31の積荷は戦術核で目標は西の国の首都、おそらくパイロットは核を落とすくらいなら、自ら機体と共に命を絶った方が良いと判断したのかもしれない。
パイロットは未だ行方不明なので、その答えは分からない。おそらくパイロットはもうこの世にはいないのだろう、真相は闇の中だ。私はこの一件をいち早く発見し、未然に大量虐殺を防いだと言う功績で表彰されるようだ。
上官から労いの言葉をもらい、私は部屋を後にした。なんだがドッと疲れが出てきた、なんならこの一件を知らないまま過ごした方が、むしろ楽だったのかもしれない。
「ビル、聞いたぞ良かったな!」
同僚からも祝福の言葉を受ける、ありがとうと軽く返事をして私は自室へと急ぐ。今はいち早くベッドに入って眠りたい、その前に妻に連絡しよう、もちろん今日の事は話せないので、取り留めのない話で構わない、とにかく声を聞きたい。息子はもう寝ている時間なので無理だろうが。
私は自室に入ってスマホを取り出し妻に連絡をする、すぐに妻は電話に出てくれた。
「ビル、何かあったの?」
おそらく私の声色で妻はすぐ異変に気づいたのだろう、10年も一緒にいればそれくらい造作も無い。私は咄嗟に疲れているんだと誤魔化して取り止めのない話を始めた。10分くらい話して電話を切り、私はベッドに潜り込んだ。しかし今日の一件で中々寝付けない。
核兵器、もし投下されていたら…。
今日はおそらく嫌な夢にうなされるのだろうか、疲れた瞳を閉じて私は浅い眠りにつく。
まるで神の様に…。
と言うのは冗談で、軍の衛星から送られてくる映像を見て、敵基地を監視するのが仕事だ。東の国が西の国へ侵略を開始してから我が国は西の国への援助をいち早く始め、衛星からの情報も逐一共有している。 このくだらない戦争はいつまで続くのか、戦争が終わらない限り私の多忙な日々に終わりは来なさそうだ。
もう何日も家に帰っていない、そういえば先週の日曜日に息子のリトルリーグの試合があり、息子は先発投手でそこそこ活躍した、と妻から連絡があった。衛星で息子の試合を見てやろうかと思ったが、バレたらクビになるので辞めた。
「ビル、交代の時間だ」
同僚がやってきて任務を交代、私はラウンジで一息ついてから仮眠する。ラウンジは広くも狭くもなく、必要最低限の椅子と机とTVだけの殺風景な空間だが、いつも空いているのがメリットだ。
そういえば今日、不可解な事が起こった。敵基地から一機のMiG-31が飛び立ち、すぐに西の国へ連絡、国境付近で西の国所属のMiG-29に撃墜された。不可解なのはそのMiG-31はミサイル攻撃に対して一切の回避行動をせず、呆気なく森に落ちた。パイロットの安否は不明。
まるで撃墜してくれと言わんばかりの行動、パイロットは自殺志願者だったのか?それともメカトラブルか?真相は機体の残骸が回収されるか、もしくはパイロットが無事で拘束されれば明らかになるだろう。
まぁこんな不可解な事が起こるのが戦争、不条理な世界に不可解は付きものだ。いちいち気にしていたらコチラの身が持たない。戦場ではもっと恐ろしく残酷な不条理が日々起こっているのだから。
「ビル、ちょっと話がある」
突然上官から呼び出され、ラウンジから上官の部屋へ。東の国へ潜伏していたスパイからの情報で、今日の不可解なMiG-31の詳細が明らかになった。MiG-31の積荷は戦術核で目標は西の国の首都、おそらくパイロットは核を落とすくらいなら、自ら機体と共に命を絶った方が良いと判断したのかもしれない。
パイロットは未だ行方不明なので、その答えは分からない。おそらくパイロットはもうこの世にはいないのだろう、真相は闇の中だ。私はこの一件をいち早く発見し、未然に大量虐殺を防いだと言う功績で表彰されるようだ。
上官から労いの言葉をもらい、私は部屋を後にした。なんだがドッと疲れが出てきた、なんならこの一件を知らないまま過ごした方が、むしろ楽だったのかもしれない。
「ビル、聞いたぞ良かったな!」
同僚からも祝福の言葉を受ける、ありがとうと軽く返事をして私は自室へと急ぐ。今はいち早くベッドに入って眠りたい、その前に妻に連絡しよう、もちろん今日の事は話せないので、取り留めのない話で構わない、とにかく声を聞きたい。息子はもう寝ている時間なので無理だろうが。
私は自室に入ってスマホを取り出し妻に連絡をする、すぐに妻は電話に出てくれた。
「ビル、何かあったの?」
おそらく私の声色で妻はすぐ異変に気づいたのだろう、10年も一緒にいればそれくらい造作も無い。私は咄嗟に疲れているんだと誤魔化して取り止めのない話を始めた。10分くらい話して電話を切り、私はベッドに潜り込んだ。しかし今日の一件で中々寝付けない。
核兵器、もし投下されていたら…。
今日はおそらく嫌な夢にうなされるのだろうか、疲れた瞳を閉じて私は浅い眠りにつく。
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