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インタビューとかありえない。
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いよいよ今日か…。
僕は店のバックヤードで準備しながら、ちょっと緊張している。実は珠子さん動画の町紹介シリーズに、喫茶オオタが紹介される事になった。きっかけは単純に僕が働いているからアポを取りやすいだろうと、珠子さんが強引に決めてしまった。店長に話すとかなり乗り気で、是非お願いするよとアッサリ決まってしまった。
今まで僕も撮影に協力して何度かお店や施設に珠子さんと一緒に行った事はあるが、自分のバイト先の紹介となるとたぶん僕もインタビューとかされちゃうのかな?下手な事言って店の印象が悪くなったりしないかな?今から緊張感がハンパない。
僕は鏡の前で、髪型や服装がおかしくないか入念にチェックする。すると優希さんがやってきた
「おはよ、今日でしょ撮影って」
「はい、紹介した手前ちょっと緊張します」
「ふーん、その山城って人は白銀山神社の巫女さんなんでしょ?どんな人なの?」
「そうですね…面倒見が良くて、明るくて誰にでもフレンドリーで、お姉さんって感じですかね」
「あっそう、私の苦手なタイプかも」
「えっ?そうですか…」
「ネクタイ曲がってる」
優希さんはサッと僕のネクタイを直してキッチンに行ってしまった。いつもの事だが、今日は一段とピリピリしている様な気がする。約束の時間は10時でOpen前に撮ってしまう予定だ、なので今日は出勤時間がいつもより早い。朝が苦手な優希さんにとってはありがた迷惑な話なのかも。
「おはよう川上くん!今日はよろしくね」
店長は相変わらず小走りでやってきて、僕に挨拶をする。多少緊張しているのか、落ち着かない様子だ。そろそろ約束の時間、すると窓の外に私服の珠子さんがこちらを覗いていた。巫女さんの着物も似合ってるが外行きの私服を着ると、お姉さん度が更にUPして思わずドキドキしてしまう。僕はすぐに入口のドアを開けて珠子さんを店に招き入れた。
「はじめまして!白銀山神社の巫女をやってます山城珠子です。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ今日はよろしくお願いします、店長の太田喜一です」
挨拶もそこそこに珠子さんは早速店の外観や店内などを撮影、色々感想を言いながら撮って行く。もう何度もこういう撮影をしているので、慣れたものだ。
次に店長へのインタビュー、緊張する店長を珠子さんは気遣ってか、冗談を交えてインタビューを進めて行く。珠子さんは元々話上手なので、緊張もすぐに解れて、気づけば和気藹々とした雰囲気でインタビューを終える。喫茶店なので食レポも欠かさない、定番メニューそして僕が人生で一番美味しいと思ったコーヒーに、珠子さんはとても美味しそうにレポートする。
ここまでとても順調で、僕はホッと胸を撫で下ろした。と思ったらインタビューは予想通り僕にもやってきた。
「喫茶オオタに入ってどれくらい経つんですか?」
「えーと…し…4月からなので、4ヶ月くらい?でふかね」
かむし動揺するしで最悪だ。
「何でも久しぶりの新人さんと言う事で、店長さんがとても期待しているみたいですね」
「は…はい、店のコーヒーの味に惚れて入りました」
「確かに!とても美味しいですよね、私も気に入りました」
しどろもどろになりながらも、何とかインタビューは終了、冷や汗が凄い。撮影が一通り終わり、珠子さんはテーブルで寛いでいる。
「あはは、めっちゃ緊張してたね。ちゃんと編集するから安心してよ!でもかんだ所は採用しちゃおっかな」
「意地悪だなぁ~、まぁ動画が面白くなるなら使って下さい」
「ありがと!ところでさ、店長の娘さんも働いてるんだよね?今日はいないの?」
「あれ?さっきまでいたのに」
「可愛いんでしょ?動画的な映えるから、是非インタビューしたいなぁって」
「ちょっと呼んできます」
僕はバックヤードへ行くと、休憩室で優希さんがスマホをいじっていた。
「あー、優希さんちょっとインタビューをお願いしたいのですが…ダメですか?」
「山城さんってめっちゃ美人だね、ああいうの好きなの?」
いきなり直球の質問が飛んできた。
「いや…だからお姉さんみたいな存在で…好きとか嫌いとかそう言う…」
「あーはいはい好きなのね、好きなら好きって素直に言えばいいじゃん」
「い…いや…だから」
「インタビューとかありえない、以上」
何か知らないけど優希さんかなりお怒りのご様子、こりゃ無理だ。僕はトボトボと珠子さんのテーブルに戻り、恥ずかしいのでNGと伝えた。
「そっか、悪い事しちゃったね。ごめん」
「いやいや、僕の説得の仕方が悪かったんだと思いますよ、はい…」
まぁ説得も何もしてないけど。するとバックヤードから優希さんが現れた、いつも以上に不機嫌そうな顔をしてこちらにやって来た。珠子さんは立ち上がり
「あ!こんにちは、山城珠子です」
「…こんにちは」
「あの…こちら店長の娘さんで優希さんです」
「わぁ、悠人くんから話は聞いています。ちょっと厳しいけど、とても丁寧に仕事を教えてくれる頼れる先輩だって」
「あ…そうですか…」
「インタビュー出来ないのはとても残念ですが、お会いできて光栄です!今度是非神社に遊びに来て下さいね」
何で優希さんが突然出て来たのかは知らないけど、珠子さんの大人の対応に優希さんは終始押され気味。優希さんは顔を真っ赤にして
「あ…あの…悠人を、よろしくお願いします!」
そう言ってそそくさとバックヤードに戻っていった。僕は何が起こったのか全く把握できず、思考が停止してしまった。
「ちょっとユウちゃん!優希ちゃんめっちゃカワイイじゃん!顔真っ赤にして悠人をよろしくって、私と結婚するとか言ったの?」
「ええ!そんな訳ないじゃないですか!」
「それにしても優希ちゃんいいなぁ~、ツンデレとかキュンっとしちゃうじゃん?ユウちゃんが付き合わないなら、私が付き合っちゃおうかな?」
「えっ…珠子さん…まさか…」
「真面目かっ!冗談に決まってるでしょ!でもカワイイ娘は大好き」
「はぁ…」
その後珠子さんは店長と談笑して帰って行った。この精神的に疲れた状態で開店時間、何とかその日の仕事をこなした。仕事後のバックヤードで優希さんが話しかけてきた
「あのさ、珠子さんだっけ?明るくていい人そうだね」
「はい、たまに冗談が過ぎてヒヤヒヤする時もありますが、良い人ですよ」
「悠人が好きになるのも分かる」
「いや、だから…」
「今度さ、連れてってよ神社に」
「へ?」
「んじゃ、お疲れ様」
遠くでセミが鳴き出した、もうすぐ夏かぁ。
僕は店のバックヤードで準備しながら、ちょっと緊張している。実は珠子さん動画の町紹介シリーズに、喫茶オオタが紹介される事になった。きっかけは単純に僕が働いているからアポを取りやすいだろうと、珠子さんが強引に決めてしまった。店長に話すとかなり乗り気で、是非お願いするよとアッサリ決まってしまった。
今まで僕も撮影に協力して何度かお店や施設に珠子さんと一緒に行った事はあるが、自分のバイト先の紹介となるとたぶん僕もインタビューとかされちゃうのかな?下手な事言って店の印象が悪くなったりしないかな?今から緊張感がハンパない。
僕は鏡の前で、髪型や服装がおかしくないか入念にチェックする。すると優希さんがやってきた
「おはよ、今日でしょ撮影って」
「はい、紹介した手前ちょっと緊張します」
「ふーん、その山城って人は白銀山神社の巫女さんなんでしょ?どんな人なの?」
「そうですね…面倒見が良くて、明るくて誰にでもフレンドリーで、お姉さんって感じですかね」
「あっそう、私の苦手なタイプかも」
「えっ?そうですか…」
「ネクタイ曲がってる」
優希さんはサッと僕のネクタイを直してキッチンに行ってしまった。いつもの事だが、今日は一段とピリピリしている様な気がする。約束の時間は10時でOpen前に撮ってしまう予定だ、なので今日は出勤時間がいつもより早い。朝が苦手な優希さんにとってはありがた迷惑な話なのかも。
「おはよう川上くん!今日はよろしくね」
店長は相変わらず小走りでやってきて、僕に挨拶をする。多少緊張しているのか、落ち着かない様子だ。そろそろ約束の時間、すると窓の外に私服の珠子さんがこちらを覗いていた。巫女さんの着物も似合ってるが外行きの私服を着ると、お姉さん度が更にUPして思わずドキドキしてしまう。僕はすぐに入口のドアを開けて珠子さんを店に招き入れた。
「はじめまして!白銀山神社の巫女をやってます山城珠子です。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ今日はよろしくお願いします、店長の太田喜一です」
挨拶もそこそこに珠子さんは早速店の外観や店内などを撮影、色々感想を言いながら撮って行く。もう何度もこういう撮影をしているので、慣れたものだ。
次に店長へのインタビュー、緊張する店長を珠子さんは気遣ってか、冗談を交えてインタビューを進めて行く。珠子さんは元々話上手なので、緊張もすぐに解れて、気づけば和気藹々とした雰囲気でインタビューを終える。喫茶店なので食レポも欠かさない、定番メニューそして僕が人生で一番美味しいと思ったコーヒーに、珠子さんはとても美味しそうにレポートする。
ここまでとても順調で、僕はホッと胸を撫で下ろした。と思ったらインタビューは予想通り僕にもやってきた。
「喫茶オオタに入ってどれくらい経つんですか?」
「えーと…し…4月からなので、4ヶ月くらい?でふかね」
かむし動揺するしで最悪だ。
「何でも久しぶりの新人さんと言う事で、店長さんがとても期待しているみたいですね」
「は…はい、店のコーヒーの味に惚れて入りました」
「確かに!とても美味しいですよね、私も気に入りました」
しどろもどろになりながらも、何とかインタビューは終了、冷や汗が凄い。撮影が一通り終わり、珠子さんはテーブルで寛いでいる。
「あはは、めっちゃ緊張してたね。ちゃんと編集するから安心してよ!でもかんだ所は採用しちゃおっかな」
「意地悪だなぁ~、まぁ動画が面白くなるなら使って下さい」
「ありがと!ところでさ、店長の娘さんも働いてるんだよね?今日はいないの?」
「あれ?さっきまでいたのに」
「可愛いんでしょ?動画的な映えるから、是非インタビューしたいなぁって」
「ちょっと呼んできます」
僕はバックヤードへ行くと、休憩室で優希さんがスマホをいじっていた。
「あー、優希さんちょっとインタビューをお願いしたいのですが…ダメですか?」
「山城さんってめっちゃ美人だね、ああいうの好きなの?」
いきなり直球の質問が飛んできた。
「いや…だからお姉さんみたいな存在で…好きとか嫌いとかそう言う…」
「あーはいはい好きなのね、好きなら好きって素直に言えばいいじゃん」
「い…いや…だから」
「インタビューとかありえない、以上」
何か知らないけど優希さんかなりお怒りのご様子、こりゃ無理だ。僕はトボトボと珠子さんのテーブルに戻り、恥ずかしいのでNGと伝えた。
「そっか、悪い事しちゃったね。ごめん」
「いやいや、僕の説得の仕方が悪かったんだと思いますよ、はい…」
まぁ説得も何もしてないけど。するとバックヤードから優希さんが現れた、いつも以上に不機嫌そうな顔をしてこちらにやって来た。珠子さんは立ち上がり
「あ!こんにちは、山城珠子です」
「…こんにちは」
「あの…こちら店長の娘さんで優希さんです」
「わぁ、悠人くんから話は聞いています。ちょっと厳しいけど、とても丁寧に仕事を教えてくれる頼れる先輩だって」
「あ…そうですか…」
「インタビュー出来ないのはとても残念ですが、お会いできて光栄です!今度是非神社に遊びに来て下さいね」
何で優希さんが突然出て来たのかは知らないけど、珠子さんの大人の対応に優希さんは終始押され気味。優希さんは顔を真っ赤にして
「あ…あの…悠人を、よろしくお願いします!」
そう言ってそそくさとバックヤードに戻っていった。僕は何が起こったのか全く把握できず、思考が停止してしまった。
「ちょっとユウちゃん!優希ちゃんめっちゃカワイイじゃん!顔真っ赤にして悠人をよろしくって、私と結婚するとか言ったの?」
「ええ!そんな訳ないじゃないですか!」
「それにしても優希ちゃんいいなぁ~、ツンデレとかキュンっとしちゃうじゃん?ユウちゃんが付き合わないなら、私が付き合っちゃおうかな?」
「えっ…珠子さん…まさか…」
「真面目かっ!冗談に決まってるでしょ!でもカワイイ娘は大好き」
「はぁ…」
その後珠子さんは店長と談笑して帰って行った。この精神的に疲れた状態で開店時間、何とかその日の仕事をこなした。仕事後のバックヤードで優希さんが話しかけてきた
「あのさ、珠子さんだっけ?明るくていい人そうだね」
「はい、たまに冗談が過ぎてヒヤヒヤする時もありますが、良い人ですよ」
「悠人が好きになるのも分かる」
「いや、だから…」
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「んじゃ、お疲れ様」
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